ひとりひとりの2020に出会う。

2020年という、日本にとって特別な1年に向けて
スポーツを通じた絆を、
競技を支える人たちのドラマを、
世界に誇る日本の文化や芸術を、
誰もが参加できる社会貢献のあり方を、
さまざまな視点で切り取り、伝えていく。
ここでの出会いと発見を、
ひとりひとりが日本の未来を考えるきっかけに。
それが、“みんなの2020”です。

東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2017.11.22

記録映画『東京オリンピック』にかけた超望遠レンズ職人 神奈川 横浜市

東京五輪での撮影風景

スポーツ撮影に欠かせない超望遠レンズ。
このようなレンズが登場したのが、53年前の東京オリンピックでした。選手の表情をアップで捉えるため、レンズ職人が手作業で作り上げました。
「躍動する選手の姿を記録したい...。」その精神は今も受け継がれています。

■超望遠レンズ職人

超望遠レンズ

■きっかけは記録映画『東京オリンピック』

1965年、オリンピックの翌年に公開された記録映画『東京オリンピック』。市川崑監督と3人の脚本家が練った映画では、独特な構成と映像表現で選手の緊張感や観客の熱狂ぶりなど単なるオリンピックの競技映像に終わらない人間らしさが随所に描かれています。
例えば男子の100m走は、通常であればレース全体を描く映像とそれぞれの選手のアップ映像などを交えて表現するのですが、映画の中では一人の選手のスタートからゴール後の表情を映し出し、レース展開については見せずに終わっています。それでも魅せられるのは、躍動する選手の表情や筋肉の生々しさが分かるサイズで表現されているから。今でこそアップの映像は当たり前かもしれませんが、焦点距離100ミリのレンズが主だった時代だと考えると、映画の見方もまた違って見えてくるかもしれません。

■超望遠レンズ職人のこだわり

今回は、そのレンズを製作した技術者、いわば東京オリンピックを裏の裏から支えた人々にスポットをあてました。

間瀬さん平岡さん萩谷さんと超望遠カメラ

レンズ設計を担当した萩谷登志雄さん、レンズ研磨を担当した間瀬修さん、レンズ整備を担当した平岡憲義さん。選手の表情や筋肉の動きを撮るために必要だと監督からの要請で作られた1,000ミリや2,000ミリの焦点距離を持つ映画用の望遠レンズ。そもそも映画用のレンズには横長スクリーンに変換するための特殊レンズが組み込まれており、普通に設計すると大砲並みの大きさのレンズになってしまうそうです。

(当時30歳)
(当時30歳)
(当時21歳)

そこを当時コンピューターの無かった時代に、光の入る角度を一つ一つ手回し計算機で数字をはじき出し、根元に特殊レンズを組み込むというそれまでに無い形で作り上げた事で小型化に成功させました。まだレンズ磨きも経験と勘を頼りに職人が手作業で慎重に磨き上げ、そして部品はまた別の職人が手作業で組み立てていく。まさに職人たちの技術と誇りのバトンリレーで誕生したレンズでした。

主人公らと超望遠カメラ

実は職人の皆さん、レンズの注文が来た時には何のために使うレンズか分からなかったそうです。世間の東京オリンピック熱が高まった頃でも、製作に追われてそれどころでは無く、工場にこもりっきり。唯一、完成したレンズの機材整備を担当した平岡さんが工場と現場を行き来するわけですが、その時に出会ったカメラマンのプロ意識に圧倒されたそうです。
「それまでレンズを機械的に組み立てるのに精一杯だったが、使う人の姿を思い浮かべてどうやったら使いやすくなるか考えるようになった。東京オリンピックは私の仕事に向かう姿勢を変えてくれた。」と話してくれました。

現代の高精細カメラ

ピントを合わせるために回すリングには、ここちよい粘りがあるようにオイルが使われています。カメラマンが一番しっくりくる粘りはどれか、様々なオイルの調合にもこだわりました。今も大切に保管されていたレンズは、そのシルエットの美しさだけでなく、触った時の感触も今の最新レンズの遜色なく、まさに『色あせない』レンズでした。そんな製品に心を込めて作り上げ、東京オリンピックを陰で支えた技術者の魂は、2020東京五輪にも引き継がれています。


(撮影・文)報道局映像取材部カメラマン 小幡 倫之

この記事は、サンデースポーツのコーナー「夢、ここで」に関連して制作したものです。
https://www.nhk.or.jp/tokyo2020/experience/legacy/volumes/11.html


NHK
NHK 東京2020オリンピック・パラリンピックサイト

メダルを目指して厳しい練習を重ねるアスリート、選手を支える大勢の人々。 東京2020は、様々な人たちがたくさんのドラマを繰り広げる、世界スポーツの祭典です。 「⇒2020」は、一人ひとりの未来への挑戦を応援します。