ひとりひとりの2020に出会う。

2020年という、日本にとって特別な1年に向けて
スポーツを通じた絆を、
競技を支える人たちのドラマを、
世界に誇る日本の文化や芸術を、
誰もが参加できる社会貢献のあり方を、
さまざまな視点で切り取り、伝えていく。
ここでの出会いと発見を、
ひとりひとりが日本の未来を考えるきっかけに。
それが、“みんなの2020”です。

東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2017.09.28

リオ後も、緊張の糸が切れていない成田真由美

Tokyo2020 NHK情報サイト「パラスポーツ情報」に連載している写真家・越智貴雄さんのコラムです。(2017/9/28掲載)

パラスイマー 成田真由美の撮影では、驚くほど時間が速く進む気がする。今回も「20分くらい撮影したかな?」と思い、時計を見ると1時間経過していた。成田の気迫に圧倒されているのだろうか?ワクワクと緊張が交錯しながらの撮影が続く。
そんな成田にとって身体の一部である道具を練習後に撮らせてもらった。多くの時間を選手と共にする道具。それは物理的ではなく、選手と繋がっている気がする。

国内最高峰である「2017ジャパンパラ水泳競技大会(9月2日~3日)」の会場内に「おめでとうございます、成田真由美選手、大会新記録です!」とアナウンスが流れる。100m自由形・50m背泳ぎの2種目で予選と決勝それぞれで大会新記録を叩き出した成田真由美(S5クラス)。さすがの、成田だ。去年(2016年)のリオデジャネイロパラリンピックから、さらにパワーアップし、鍛えぬいた筋肉をダイナミックに動かし、見事に水を切るかのように力強くグングン進む。パラリンピック翌年の記録としても上々だ。
しかしゴール後、タイムを見る成田は、喜ぶというよりも無表情な感じだった。その理由が知りたくて、神奈川県横浜市にある、横浜サクラスイミングの練習場所を訪ねた。

100m自由形決勝の成田の泳ぎ=2017ジャパンパラ水泳
背泳ぎ決勝で大会新記録を出した直後の成田の表情=2017ジャパンパラ水泳

成田の練習場所は「サクラスイミング」。プール内でキッズや水泳仲間たちと談笑するのがいつもの風景。

車いすでプール脇まで向かい、いざ練習スタート。

下半身が沈まず安定感を保っていられるのは、成田の体幹の良さであろう。

マネージャーの棟石理実さんに聞くと「クロールの息継ぎの際は、体が大きく横に向くため本来ならばキックでその揺れを抑えるが、成田にはそれができない。しかし、成田は水中をかく腕の位置、角度が絶妙なバランスを取って動かしているために大きくブレない。これは成田の運動神経の良さと練習の成果」と教えてくれた。

練習メニューはコーチが作るが、練習中ずっとコーチがそばにいるわけではない。成田は一人で時計を見ながら淡々と練習メニューをこなしていく。自分で自分を鼓舞し、きつい練習をこなしていくのはそう簡単なことではない。この日のメニューは、100m10本(2分サークル)、50m10本(1分サークル)25m10本(30秒サークル)。その他に、おもりをつけて負荷をかけるトレーニングやアップとダウンを入れて3000mを泳ぎこんだ。リオパラリンピック前よりも泳ぎこんでいるという。

練習で泳ぎこむ中で、終盤でもタイムが落ちることがないのには驚く。

僕は、ジャパンパラの競技後の表情について聞いてみた。「自己新が出せなくて悔しかった」と一言。

成田の練習風景を見ていると、つくづく感じることがある。常に張り詰めたアスリート独特の空気感だ。緊張の糸が全く切れない。成田にとっては今が全てであり、その積み重ねの先に大会があり、結果的に記録につながるのであろう。競技者として、リオパラリンピックも通過点の中の1つの大会だったのだと。練習の帰り際に成田が笑顔でこう言った。「次のマスターズの試合、絶対にビリにはなりたくない」

成田の次戦は、10月15日に横浜国際プールで開催される「サクラマスターズスイミング選手権」。健常者の大会だ。

この記事は、Tokyo2020 NHK情報サイト「パラスポーツ情報」内の「写真家・越智貴雄『感じるパラリンピックGallery』」に連載されたものです。
http://www.nhk.or.jp/parasports-blog/200/


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