ひとりひとりの2020に出会う。

2020年という、日本にとって特別な1年に向けて
スポーツを通じた絆を、
競技を支える人たちのドラマを、
世界に誇る日本の文化や芸術を、
誰もが参加できる社会貢献のあり方を、
さまざまな視点で切り取り、伝えていく。
ここでの出会いと発見を、
ひとりひとりが日本の未来を考えるきっかけに。
それが、“みんなの2020”です。

東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2019.03.06

テコンドーの女神・山田美諭の得意技は瞬足キックの連続技!

テコンドーは、超ハイスピードの蹴り技が魅力の競技です。選手は防具をつけて試合にのぞみますが、強烈なキックがまともに当たればひとたまりもありません。そんな激しい蹴りの格闘技・テコンドーの日本女子をけん引するのは、穏やかで優しい笑顔が印象的な女性です。全日本テコンドー選手権大会を7回制し、東京オリンピックでの活躍が期待されている女子49キロ級のエース、山田美諭選手。その強さの秘密に迫ります。

相手を前にするとボコボコにしてやろうって思っちゃうんです

3歳で空手を始めた山田選手がテコンドーに転身したのは中学1年生の時、きっかけは空手道場を開いていた父親の勧めでした。テコンドーは空手より階級が細かく分かれていて、体格のハンデが少ない競技だからだそうです。テコンドーの女子選手の中には、蹴りやパンチによる痛みを嫌がったり、蹴り合いを避けようと後退してしまう選手も少なくありませんが、空手で培った山田選手の闘争心は半端ありません。17歳の時に全日本テコンドー選手権で初優勝すると、身長167センチの細身の体をフルに使った切れのある蹴り技を武器に全日本選手権大会を7回制し、2018年インドネシアで開催されたアジア大会では銅メダルに輝きました。

「どうしてなんですかね?自分でも理由はわからないのですが、相手を前にすると、絶対に負けたくないという闘争心がどこからともなく湧いて来て、ボコボコにしてやろうって思っちゃうんです」

わかっていても避けられない蹴りの連続技!

山田選手の得意技は、蹴りの連続技です。テコンドーでは試合が膠着し、選手がクリンチのようにもみ合う状態になることがあります。このとき山田選手は腕で相手を押し込み、程よい距離をとってから、一撃目の中段蹴りを胴体めがけて繰り出します。そのまま足を下ろすことなく続けて二撃目、今度は上段蹴りを頭部に繰り出すのです。超高難度の連続技で、両方の蹴りが決まれば、中段蹴りの2ポイント、上段蹴りの3ポイントで5ポイントが入ります。対戦相手からは、「わかっていても避けられない驚異の蹴り技」と恐れられています。

「二撃目の上段蹴りのことを意識しすぎると最初の中段蹴りが弱くなって連続技であることがバレてしまいます。だから中段蹴りから本気で蹴りにいくことが重要なんです。相手との距離が近い状態で上段に蹴りを入れるため、足を高く上げる柔軟性や股関節の使い方にコツがあり、中段蹴りからそのまま上段に蹴りを出せる女子選手はあまりいません。でも最近は、私がこの技を得意にしていることが知られてきたので、相手に警戒されることが多くなりました。そこで、その警戒心を逆手にとって、先に上段から蹴ってから次に中段を蹴るなど、相手の裏をかくこともあります。連続技のバリエーションを増やしているというわけですね」

道着を脱ぐと大変身!テコンドーファイターの素顔は?!

道着を脱ぐと大変身、山田選手は物腰の柔らかさと優しい笑顔が印象的な女性に変わります。東京都内にある金融機関の職員で、普段は報告書の作成や経費処理などを担当しています。昼休みになると先輩職員と一緒にランチに出かけ、時間が過ぎるのも忘れておしゃべりに花を咲かせる正真正銘の乙女です。

「ときどき職員の方が、試合会場に応援に来てくださるのですが、見たことがない私の姿にびっくりしちゃうみたいですよ」と照れ笑いを浮かべる山田選手、道着を着る前と着た後では、身近にいる人でもわからないほど、変わってしまうようです。

仕事が終わった後の楽しみは映画鑑賞。映画館で大好きな作品を見る時間が至福のときだとか。好きな映画のジャンルは恋愛モノと?と尋ねると、蹴り技のような瞬速で答えが返ってきました。「大好きなのは、アクション映画」だそうです。

北島康介さんのように最後まで戦い抜きます

東京オリンピックで勝つために厳しい練習を続けている山田選手を駆り立てているのは、競泳界のレジェンド・北島康介さんだといいます。山田選手は、大けがをして2016年のリオオリンピック出場を逃し、一時は引退も考えました。そんな時、体力の限界を超えて一心不乱に頑張っていた北島さんの姿に勇気づけられたのです。

「結果的に北島選手も出場を逃したのですが、最後まで諦めずに勝ちに行く姿勢にとても感動しました。それ以来、調子が上がらない時は、北島さんの映像を見て、気持ちを奮い立たせています。私も最後まで戦い抜きたいと思います」

山田選手は、防御と攻撃の両面からさらなる戦力アップに挑んでいます。防御力アップのポイントは、蹴る瞬間に腕が上がってガードが甘くなる癖の克服です。連続蹴りでポイントをとっても、同時に相手の蹴りを受けてポイントを与えてしまえば、試合を落としかねないからです。真骨頂の攻撃力アップのポイントは、緩急自在の蹴り。太ももの裏の筋肉、ハムストリングの強化で得意の連続蹴りのスピードをさらに上げるとともに、その蹴りをより速く見せるために緩い蹴りを身に着けようとしているのです。

長年、テコンドーのトップ選手として輝き続ける姿は、山田選手が憧れる北島康介さんとも重なります。優しい笑顔が表彰台で見られるのか、期待が膨らみます。


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NHK 東京2020オリンピック・パラリンピックサイト

メダルを目指して厳しい練習を重ねるアスリート、選手を支える大勢の人々。 東京2020は、様々な人たちがたくさんのドラマを繰り広げる、世界スポーツの祭典です。 「⇒2020」は、一人ひとりの未来への挑戦を応援します。