ひとりひとりの2020に出会う。

2020年という、日本にとって特別な1年に向けて
スポーツを通じた絆を、
競技を支える人たちのドラマを、
世界に誇る日本の文化や芸術を、
誰もが参加できる社会貢献のあり方を、
さまざまな視点で切り取り、伝えていく。
ここでの出会いと発見を、
ひとりひとりが日本の未来を考えるきっかけに。
それが、“みんなの2020”です。

東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2017.02.13

日本女子卓球"黄金時代 "の舞台裏

平野美宇(みう)選手、伊藤美誠(みま)選手、早田ひな選手、東京五輪で日本卓球の屋台骨を支えると期待される10代女子のトリオです。卓球女子"みう・みま・ひな"の驚異的な成長の舞台裏には、信じられざる育成戦略がありました。日本卓球協会・強化本部長の宮﨑義仁さんに話を聞きました。

卓球女子"みう・みま・ひな"の活躍、ワクワクしますね

(左から)張本智和選手、早田ひな選手、平野美宇選手、伊藤美誠選手

【宮﨑】2001年から取り組んできた若手強化策が、ようやく実を結び始めたと思っています。卓球は優れた運動神経や動体視力が必要な競技なので、幼いうちから強化するほど有利です。残念ながらシニアの選手を1~2年面倒みたところで大して変わりません。
そこで2001年、私が日本代表の男子監督に就任した直後に、「ホープスナショナルチーム」という小学生のナショナルチームを作りました。ホープスの選手は男女各10名です。男子は毎月1回、1年に12回、2泊3日程度の合宿を行いました。女子も年に4回ほど合宿を行いました。翌年の2002年には、中学生からドイツに卓球留学できる「ドイツシステム」を作りました。ジュニアの選手に世界屈指の卓球コーチ、マリオ・アミズィッチさんの指導を受けさせるためです。岸川聖也は1期生で、水谷隼は2期生です。さらに2003年には、春の小学校選抜大会を新設しました。当時は小学生が全国で競い合えるような大会は夏に一度しかなかったので、もう少し頻繁に全国大会がないとモチベーションが保てないと思ったんです。

日本卓球協会が組織を挙げて取り組んできた?

【宮﨑】当初、卓球協会はあまり乗り気ではなかったんです。費用がかかりますからね。そこで例えば全国大会の開催にあたっては、体育館や審判員は、私が確保しました。会場の設営をするスタッフは雇いました。全国からやってくる参加チーム全てに交通費を半額補助しました。体育館使用料なども合わせると400万円ちょっとになったと思います。そのお金は、色々な業者やメーカーを回って寄付金を集めて、それでまかないました。
私はずっと「今のシステムではダメなんだ。放っておいても強い選手が自然に育っていく新しいシステムを作るんだ」と言い続けてきたので「監督なのに大人を教えないで子どもばっかり教えて、馬鹿じゃないのか」という批判もありました。でも2006年、2007年あたりから若い選手の成績が上がりだした。水谷隼が日本チャンピオンになって世界で通用しだした、そこに岸川聖也が、坂本が、高木和が、松平健太が...と続いて、次々とメダルを取り出した。「世界でメダルを取った!」となると周りも何も言わなくなって、逆に支援の声が大きくなっていったんです。

「放っておいても強い選手が自然に育つシステム」、詳しくは?

【宮﨑】そうですね。監督が代われば強くなると思っている人、結構多いと思うんですが、スポーツの世界では、たった2~3年で結果を出すなんて無理なんです。サッカーの日本代表も監督が頻繁に変わりますが、監督を変えるだけでワールドカップで優勝するなら100億払ったっていいと思いますよ。一番大事なのは、競技の基盤を整えること。優れた資質の選手がたくさん育つ土壌を作ることなんです。そのためには、競技人口が増えなきゃいけない。卓球で言えば、競技人口が3億と言われる中国に勝つには、とにかく全国で競技人口を増やすことが不可欠です。そこで、全国の小学校の廃校に卓球台を入れて欲しいと文科省にお願いしているんです。日本の卓球人口は現在、中国の100分の1の300万ですが、これが成功すれば1000万になると見込んでいます。
「選手が育つ環境づくり」が大切なのは、先ほどのサッカーも同じではないでしょうか。日本全国にフットサルのコートやサッカー場を整備して、小さいボールも用意して、2~3歳くらいの子達にサッカーをやらせる・・・。そういう環境を作れば、20年後には日本はサッカー大国になれる可能性が出てくると思います。

東京オリンピックに向けて期待が膨らみますね

【宮﨑】2020年に向けては、とにかく今のトップ選手のクオリティを上げることが大事だと思っています。そのためには、ライバルになる中国選手の分析を徹底してやることが必要です。日本卓球協会では、この4月から新たな情報分析の"凄腕"山田耕司さんに来てもらいます。20年ほど我々のデータ分析に協力してくれている卓球交流会というNPOの代表を務めている方です。
成績という意味では、2020年の東京オリンピック、女子団体は、チャンスがあると思っています。2024年は男女ともにチャンスがあります。2028年には、男女ともに中国を破って金メダルに輝く、そんな未来を思い描いています。

ホープスナショナルチームの練習

【宮﨑】ええ。もっとロングスパンの強化策を考えています。私たちは、2016年7月から「アスリートパスウェイ」という事業を始めました。具体的に申しますと、まず、将来、卓球選手として可能性があると思われる小学4年生以下の子ども達188名を全国から選び出し、地域ごとに8つのブロックに分けてトレーニングを行います。そして年に1度 各ブロックで最も有望な選手2人、計16人をこのトレーニングセンターに集めて試合をします。その試合を勝ち抜いた上位4人が、小学生のナショナルチームである「ホープスナショナルチーム」に挑戦するという事業です。この強化事業の対象選手がオリンピックに出るのが、2028年頃になるというわけです。ここまで若年層を計画的に強化している協会は、世界中見渡してもちょっとないんじゃないかなと自負していますよ。

宮﨑強化本部長

宮﨑義仁さん(日本卓球協会・強化本部長)
1959年長崎県出身。中学時代に卓球を始める。大学卒業後は和歌山銀行の卓球部で活躍。88年ソウル五輪に出場。89年日本代表チーム男子コーチ、90年同女子監督に就任。
2001年日本代表チーム男子監督に就任。2004年アテネ五輪、2008年北京五輪、2012年ロンドン五輪で監督を務める。
ロンドン五輪後に男子監督を退き、JOCエリートアカデミー総監督に就任。2016年9月から現職。

この記事はNHKG「アスリートの魂」に関連して制作したものです。
http://www.nhk.or.jp/tokyo2020/enjoy/eye/tamashii.html


NHK
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