ひとりひとりの2020に出会う。

2020年という、日本にとって特別な1年に向けて
スポーツを通じた絆を、
競技を支える人たちのドラマを、
世界に誇る日本の文化や芸術を、
誰もが参加できる社会貢献のあり方を、
さまざまな視点で切り取り、伝えていく。
ここでの出会いと発見を、
ひとりひとりが日本の未来を考えるきっかけに。
それが、“みんなの2020”です。

東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2017.04.09

3世代でめざす"飛び込み"メダリスト

「飛び込み」は、最大10mの高さから時速50kmのスピードで入水する競技で、空中の演技や着水フォームの美しさなどを競います。祖父母、両親も飛び込みの五輪選手だったという「飛び込み」ファミリーで育った、金戸華、快、凜の3きょうだい。3世代に渡って受け継がれてきた才能と技術の秘密とは?親として、コーチとして3選手を支える、金戸夫妻に聞きました。

両親が元オリンピック選手って、どんな気持ち?

金戸恵太さん

【恵太さん】
私が小学校5年生の時に、全国ジュニアオリンピックという18歳以下の大会が始まって、その第1回に出場したんです。私は13位でビリでしたが、他の選手4〜5人と一緒に水泳専門誌の取材を受けました。怖がりで、体育の成績も3だった当時の私には、オリンピックという言葉がとても不釣り合いだったのに、周囲からはことあるごとに「君もオリンピックを目指すんだろ?」と問われました。普通は成績が良くなければ取り上げられませんよね。でも、自分には実力もないのに取材の人が来るんです。親の影響ですね。こうしたことに反発していたので、小学校の作文に「オリンピックが大嫌い」と書いたこともありました。世界選手権やワールドカップなど、ハイレベルな大会は毎年あるのに、なんでオリンピックじゃなきゃダメなんだと。

お子さんたちは、かつての恵太さんと同じ境遇ですね

金戸親子

【恵太さん】

自分が両親にされて嫌だったことは、子どもたちにしないようにしています。例えば、家では子どもたちと絶対に競技の話をしません。私の時は、家の中で父とよく大げんかをしたからです。プールではコーチと選手なので父の話を素直に聞きますが、家では親子ですから子どもも言いたいことをいう、そうすると意見がぶつかってしまうんですね。ですから私は、更衣室を出たらなるべく親子に戻るよう心がけて、競技の話はしないんです。

金戸幸さん

【幸さん】
3人とも最初は私が教え始めました。幼いうちは楽しく教えて、とにかく辞めさせないようにと(笑)。でも、やはり母と子だとだんだん甘えが出てきちゃうんです。高学年になると、怖いだの嫌だのと甘えるようになる。そこで、「あーもうそろそろだな」というタイミングで一人ずつ、厳しいパパコーチの方へ渡しちゃう。これを上から順番に3人全員にやりました。今は、そういう難しい時期を乗り越えて、また夫婦2人で3人のコーチをしていますけど、役割は微妙に違います。子どもたちはお父さんには厳しいこと言われても我慢します。一方で私には泣きついてきたり、弱音を吐いたりしますね。主人が厳しく言っているときは、私は絶対に口を出しません。私は、子どもたちが安心できる場所、聞いてあげられる場所を常に用意してあげたいと思っています。

金戸ファミリー

【幸さん】
私は夫の金戸家を見て、一家で同じ競技ができるって素晴らしいな、とずっと思っていたんです。ですから結婚する時は、神様が下さった幸運なチャンスを最大限生かすのが私の務めだと思いました。子どもができたら飛び込みをやらせる、と当然のように言っていました。そして、子どもが生まれると赤ちゃんの頃から、飛び込みが好きになるよう色々と工夫しました。良く褒めるとかね。

【恵太さん】
そうですね、多少失敗しても「いいよ、いいよ、よくできたね」って褒めて、成功体験を多くしてあげました。失敗って一回でもすごく頭に残るものなので、特に日本人はね。成功を目指すことが楽しくて、失敗しても責められないっていう土台を作ってあげようと思ったんです。繰り返し褒めたことで3人とも自然に飛び込みが好きになりました。好きになると厳しい練習でも頑張れるようになります。そしていつの間にか、オリンピック選手を目指すようになったんです。

プールでも家庭でも一緒、すごく濃密な親子関係ですね

【恵太さん】
自分の子どもを含めてコーチとして見ている子どもたちによく言うんですけど、飛び込みって人生の縮図みたいな競技なんです。とにかくうまくいくことがほとんどない。つらいし、怖いですしね。だけど、こんな競技くらいで悩んでいたら、将来お母ちゃんになれないよって言います。
子ども産んで育てて家を支えて、そっちの方がよっぽど大変だよ、って。男の子たちには、好きでやっている飛び込みでしんどいなんて言っているけど、将来好きじゃない仕事に就くかも知れないよ、どうするの?と。飛び込み競技には、回転方向が4つあって、ひねる演技があって、倒立する演技があって、それらを全部できるようにしなきゃいけない。苦手なことを避けて長所だけを伸ばして、という取り組み方ではだめなんです。苦手でも逃げずに向き合う姿勢は、人生においてとても大切なものだと思うので、ぜひ学んでほしいと思っています。

金戸家の東京2020の目標は?

金戸夫婦

【恵太さん】
両親も私も妻も、オリンピックでメダルは取れませんでした。その悔しさを最も強く味わったのが妻、1996年のアトランタでメダルに手がかかるところまで行ったのに結果は6位だった。たぶん、その時の悔しい思いが私たちを突き動かしているんです。あの時妻がメダルを取っていたら、いまほど懸命にはなっていなかったかもしれません。私は引退してからも選手に恵まれて、選手達のおかげで世界選手権、ワールドカップ、ユニバーシアード、アジア大会と、日本選手のメダルに関わらせてもらうことができました。でもオリンピックのメダルだけが未だにないんです。オリンピックはすごくハードルが高い、特別な大会です。それを百も承知の上で、私は最近、自分の子どもたちを含めた選手たちに、「どうせやるならオリンピックに出るだけじゃなく、メダルを目指そう」「どうせメダルを目指すなら、金メダルを目指さなきゃ損じゃないか」と言っています。日本は謙譲の美徳文化のせいか、「目標は金メダル」と言うのをためらう人が多いですが、チャンピオンシップスポーツ、競技ですから、勝負には貪欲であるべきなんです。

この記事はBS1「世界はTokyoをめざす」に関連して制作したものです。
https://www.nhk.or.jp/tokyo2020/enjoy/eye/sekaimezasu.html


NHK
Tokyo2020 NHK情報サイト

メダルを目指して厳しい練習を重ねるアスリート、選手を支える大勢の人々。東京2020は、様々な人たちがたくさんのドラマを繰り広げる、世界スポーツの祭典です。と同時に、日本にとっては、新しい時代へのスタートラインでもあります。どんな自分になりたいですか?どんな社会でありたいですか?「⇒2020」は、一人ひとりの未来への挑戦を応援します。