ひとりひとりの2020に出会う。

2020年という、日本にとって特別な1年に向けて
スポーツを通じた絆を、
競技を支える人たちのドラマを、
世界に誇る日本の文化や芸術を、
誰もが参加できる社会貢献のあり方を、
さまざまな視点で切り取り、伝えていく。
ここでの出会いと発見を、
ひとりひとりが日本の未来を考えるきっかけに。
それが、“みんなの2020”です。

東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2019.03.11

宮崎で生まれた情熱を2年後の波へつなぐ。新たな道を歩む兄妹サーファーの今

2016年、ビューティフルジャパンは宮崎県でサーフィンに打ち込む加藤優典さんと、里菜さん兄妹に出会いました。その後もサーフィンへの変わらぬ想いを胸に秘め、トレーニングを重ねてきた2人。2017年に続き、2018年もサーフィン日本代表育成のための強化指定選手81名に、兄妹ともに選出されました。
チームジャパンの一員として、さらなる飛躍を期待された今年。兄は新天地へと挑戦の場所を移し、妹は来春から宮崎県内の大学への進学を決意して、お互いの世界を広げようとしています。「宮崎でサーファーとしての人生がはじまりました」と話す2人に、宮崎市の木崎浜海岸で、それぞれの今、そして東京2020オリンピックへの想いを聞きました。

兄妹の転機が重なった2018年

小学生の頃から、真剣にサーフィンと向き合ってきた加藤兄妹。2018年は、兄・優典さんが5月から千葉県一宮町に拠点を移動。年間60万人ものサーファーが来訪する国内屈指のサーフスポットであり、東京2020オリンピックのサーフィン競技会場の釣ヶ崎海岸がある町でもある。家族と離れて、はじめての一人暮らしに挑戦している優典さんは、自らの課題と対峙してきた。

宮崎を離れ、5月から千葉で暮らす優典さん

「2018年は、試合の結果を意識し過ぎてしまって、サーフィンでやりたいこと、目指したいことを見失ってしまった時期があったんです。ただ、迷いながらも、トレーニング方法やスキル向上の勉強は続けてきました。その結果、モヤモヤを払しょく。地に足をつけて、確実に、着実に高みへ登っていこうと思えるようになりました」(優典さん)

たとえば、身体のコンディションを整えるべく、独学で栄養学を習得した。これまではお腹が空いたら、何も考えずに食べていたが、今は試合前の何分前に何を食べるかまで計算するという。糖分やたんぱく質のバランスを考えながら、自炊を続けているそうだ。

兄と離れて不安はないか、里菜さんに聞くと「特にないです(笑)」ときっぱり。とはいえ、「試合の時に兄に会うとしっかり集中している様子なので安心しています。あとは元気でいてくれれば」と語る姿から、やはり兄妹の強い絆を感じる。その里菜さんも、11月にサーフィン部がある宮崎県内の大学の入試を控え、新天地へ踏み出そうとしている。

来春は大学進学を予定している里菜さん

じつは、インタビュー当日は、2018年度のアマチュアサーファー日本一を決める大会の1日目。競技が行われる宮崎市の木崎浜海岸は、里菜さんが毎日のように練習を積むホーム中のホームだ。

「サーフィンの神様に愛されるように全力で戦うことを誓います」と力強く宣誓

1年の集大成を示す重要な大会とあって、全国の並み居る強豪が出場する。女子優勝候補の筆頭に挙げられる里菜さんは、開会式で選手宣誓を務め注目を浴びた。「選手宣誓に選ばれたことで、皆さんがきっと期待してくださっているんだなと感じました」(里菜さん)

その実力は折り紙つきだが、「最近まで作戦を考えずに試合に挑んでいました」とのこと。ライディング・センスが抜きんでていると、周囲から評価される里菜さんだが、同時に「ネガティブなところがあるんです」といたって冷静に自己分析する。

予選ラウンド直前、緊張の表情。愛犬・じゅげむと
大きな波を果敢に乗りこなすのが里菜さんの真骨頂

「これまであまり深く考えずに、楽しくライディングできればいいやと思ってきました。ただ、技術はまだまだだなと感じることがあったのは事実。うまく行かずに、自分に自信が持てなくなるときもあります。そんな時、兄の存在はとても助けになります。『さっきのライディングはここがよかった』『次はこの部分を直した方が良い』とか、的確なアドバイスをしてくれるので、自分では気がつかなかったところを意識できるようになるんです」(里菜さん)

兄は頭脳派、妹は感覚派。真逆の競技スタイルが刺激に

ともにサーフィンを愛し、寄り添いながら歩んできた

切磋琢磨しながらも、協力し合う間柄。2017年は、2人でクラウドファンディングにもトライ。集まった資金で、バリ島で開催された試合への出場を叶えた。

妹を頼もしく感じながらも、兄はアスリートとしての違いをこう表現する。
「試合を観察していると分かるんですが、サーフィンの選手は、大きくわけて"頭で考える人"と"感覚に頼る人"の2タイプいると思うんです。僕は完全に考えるタイプですが、妹は感覚でいくタイプ。妹はセンスでライディングするので、そこはいいところなので伸ばすべき長所です。ただ、サーフィンは戦術がものを言うスポーツでもあるので、さらに上を目指すなら、頭脳プレイも必要になると思います」(優典さん)

目はじっと海を見つめ、頭はフル回転で作戦を練る
バランスの良さが際立つライディングと機敏なターンで魅せる

時折、慎重さが裏目にでると反省する優典さんだが、兄の戦術眼を里菜さんは信頼している。

波の状態をつぶさに分析、妹に共有する

「試合前に、海をずっと見ながら『こうした方がいい』と教えてくれるのですが、作戦を緻密に考えているんだなって驚きます。友達が兄の戦略を知りたいと、話しかけてくることもしばしば。皆から一目置かれていてすごいなと思います」(里菜さん)

兄妹が絶大なる信頼を寄せる偉大な母

「僕は考え過ぎて動けなくなることがあるので、母には、『2人を足して2で割れたらいいのにね』と言われます(笑)」と優典さん。兄妹であり同志、近いようで遠い2人を語るうえで欠かせないのは、他でもない、成長を一番側で見守ってきた母・一美さんだ。

試合前、母・一美さん(左)と談笑してリラックス

先にサーフィンをはじめた優典さんにより良い環境を与えたいと、2013年に大阪から宮崎への移住を決断したのも、一美さんだった。ときにチームを束ねるコーチのように、ときにマネージャーのように2人を支えてきた母への信頼と感謝を、兄妹ともに隠さない。

「母は僕にいつも、『もっと感覚的にサーフィンを楽しみなさい』って言ってくれるんです。楽しさもですが、うれしい、きつい、つらいといった感情をあまり表に出さないので、もっと出すようにいつもアドバイスをもらっています。僕から相談したときも、核心をついた答えをくれるので、ありがたいですし、頼りにしています」(優典さん)

家族が揃えば、自然と心に強さが宿る

「試合で負けたときに、自信がなくなって、何もできずにずっと泣いていると、母から『笑え』の一言だけメールが届いたんです。そういうところに励まされています」(里菜さん)

責めないが褒めもしないという一美さんのスタンス、そして存在そのものが兄妹の精神的支柱となってきた。精神的にも大きく成長したいま、2人は母を人としても尊敬するようになったと語る。
「僕のプロサーファーになりたいという夢を叶えるために移住を決断した母ですが、自分が親になったときに同じことができるかと言ったら、相当難しいことだなと思います。でも、もし将来、僕に子どもができて、同じ状況になったら母のような心構えでいたいです。そのためにも、母の強さは今後も学んでいきたいです」(優典さん)

兄妹サーファーを育てた、雄大なる宮崎の海

「母は私たちのためにいつも仕事で忙しいのですが、家事も手抜きすることなく家庭を支えてくれていて、自分には絶対無理だなって思います。私も、毎日学校に通い、サーフィンのトレーニングをしながら、お好み焼き屋さんとラーメン屋さんのアルバイトを2つ掛け持ちしていますが、すごくしんどいんですよね。だからこそ母のすごさが分かるんです。本当に尊敬できる人だなって」(里菜さん)

"普通の青春"では得られなかった経験と出会いが宝物


そんな"チーム加藤家"がいま目指すのは、兄妹揃っての東京2020オリンピック出場。サーフィンが正式競技として採用される初めてのオリンピックに向けて、それぞれに"いま"を見据えながら、心は2年先に向かっている。

2018年、アマチュアの頂点に輝いた里菜さんに駆け寄る優典さん

「(千葉県)一宮町に集まるサーファーは、試合を前提に練習しているので、いい意味でストイックです。全員ライバルみたいな緊張感があるからこそ、モチベーションも上がりますし、もっと自分のスキルを上磨く必要性を感じます」(優典さん)

「来年から大学生になるので、これまで以上に学業とサーフィンの両立を考えたいです。環境が変わり、自分の考え方もきっと変わっていくはずなので、得たものをしっかりと活かしながら、試合に挑みたいと思っています」(里菜さん)

最後、「もしサーフィンに出会えてなかったら?」と投げかけた質問に、笑みを浮かべながら、こう答えてくれた。
「サーフィンをしていなかったら、普通の女子高生だったかもしれません。それはそれで楽しそうだなって思うこともあるんですよ(笑)。でも、サーフィンがあったからこそ、普通では知り合えない人と知り合えたり、いろいろな場所に行けたりと、滅多にできない経験ができました。だから、サーフィンに出会えなかったら、もったいなかっただろうなって思います」(里菜さん)

「あまり偉そうなことはいえませんが、たった1度の人生、打ち込めるものに出会えたことだけで幸せです」(優典さん)

兄妹が見つめるのは、2020年の海

インタビュー映像
宮崎・サーフィン篇 サーフィンの魅力と新たな目標を語る

ビューティフルジャパン公開日:2018年11月20日


Panasonic
Beautiful JAPAN towards 2020

「ビューティフルジャパン」は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向かって、この美しい国をひとつにするプロジェクト。日本全国のアスリートたちのチャレンジを応援していきます。