ひとりひとりの2020に出会う。

2020年という、日本にとって特別な1年に向けて
スポーツを通じた絆を、
競技を支える人たちのドラマを、
世界に誇る日本の文化や芸術を、
誰もが参加できる社会貢献のあり方を、
さまざまな視点で切り取り、伝えていく。
ここでの出会いと発見を、
ひとりひとりが日本の未来を考えるきっかけに。
それが、“みんなの2020”です。

東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2021.08.27

ラケットを口に、サーブは足で。異彩放つエジプト卓球選手に会場が注目

「不可能を可能にしたい」。そう言って、コートに立つ選手がいる。25日、東京体育館で開幕した卓球シングルス予選。男子シングルスのクラス6に出場した48歳の彼は、ラケットを口で操る「名プレーヤー」だ。

卓球、イブラヒーム エルフセイニ・ハマドトゥ(EGY) 写真・PARAPHOTO 丸山裕理

幅広い障がいの選手が参加し、パラリンピック競技の中でもバラエティに富んだプレーが見られるのが「卓球」。パラリンピックにおいては、車いす、立位、知的障がいと大きく3つのカテゴリーに分かれ、細かなクラスは全部で11に上る。義足や杖、プレースタイルのさまざまな創意工夫でコートに立てるのが魅力で、パラリンピックならではの人間の可能性を感じさせる競技のひとつだ。その中でも、ラケットを口にくわえたプレーで異彩を放ったのは、エジプトからやって来た、イブラヒーム エルフセイニ・ハマドトゥ(クラス6)。初戦のパク・ホン ギュ(韓国)に0-3のストレート負けを喫したものの、見る者の目を奪うプレーは随一だった。

10歳の時に列車事故で腕を失ったハマドトゥは、腕の代わりに足を高く上げてサーブする。勢いよく放り上げた球を捉えるのは、口にしっかりとくわえたラケット。卓球を始めた当初は、脇の下にラケットを挟んでプレーするスタイルだったが、上手くいかず、最終的に、現在のスタイルに。慣れた様子で操る正確で力強いショットには、感動すら覚える。激しいプレーでも口から落とさないよう、「ドクターと相談して、首と歯の力を強化するトレーニングをしています」と、プレーのポイントを明かした。

彼のモットーは「Never give up in life!」。「日本は不可能と言われたオリンピック・パラリンピックを可能にしました。私もそんなプレーができれば」と、東京大会の意気込みを話す。試合中は自分のミスが続くと、声を上げて悔しがり、試合後は、床に頭をつけ、静かに祈りを捧げた。「今日試合ができたこと、ここに集った選手たちが皆プレーできていることへの感謝です」と笑顔を浮かべ、謙虚な人柄を滲ませた。

ハマドトゥは27日のシングルス第3試合のほか、31日からの団体戦にも出場予定。「不可能を可能」にするプレーに、多くの人が惹き込まれるに違いない。

(校正・佐々木延江、望月芳子)


パラフォト
パラフォト

2000年シドニーパラリンピック写真配信をきっかけに国際障害者スポーツ写真連絡協議会のNPOメディアプロジェクトとして発足。パラリンピック・ムーブメントの発展を願う有志の記者、写真家による取材発信活動。