ひとりひとりの2020に出会う。

2020年という、日本にとって特別な1年に向けて
スポーツを通じた絆を、
競技を支える人たちのドラマを、
世界に誇る日本の文化や芸術を、
誰もが参加できる社会貢献のあり方を、
さまざまな視点で切り取り、伝えていく。
ここでの出会いと発見を、
ひとりひとりが日本の未来を考えるきっかけに。
それが、“みんなの2020”です。

東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2019.01.11

運動会で起こすパラリンピック・ムーブメント~東北編~

2018年12月、前夜からの雪が積もる中、宮城県仙台市の東北福祉大学福聚殿は多くの人の熱気に包まれた。この日、日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)が開催する「全国横断パラスポーツ運動会」の東北ブロック大会が行なわれたのだ。
平成30年度スポーツ庁委託事業として、全国7ブロックで開催されるイベントで、今回が第1回目となる東北ブロック大会。会場には10チーム(地方自治体、企業、団体、大学)、146名の参加者が集い、5種目のパラスポーツで優勝を争った。
優勝チームは2019年3月に東京で行われる日本一決定戦に招待されるとあって、どのチームもモチベーションは高く、各競技で熱い闘いが繰り広げられた。

地方自治体、企業、団体、大学による10チームが集まった

<全国横断パラスポーツ運動会 東北ブロック参加チーム>
仙台市、仙台大学、東北福祉大学、西尾レントオール株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、株式会社ブリヂストン、株式会社みずほ銀行、宮城県、社会福祉法人宮城県社会福祉協議会、チーム宮城(宮城パラ陸上競技クラブ)

参加者同士の心を溶かすアイスブレイク

競技に先立ち、参加者たちは"ブッキー"ことパラサポの推進戦略部 伊吹祐輔プロジェクトリーダーの呼びかけのもと、「アイスブレイク」と呼ばれる参加者同士のコミュニケーションを促すプログラムを体験。これは、参加者全員(今回は半数ずつ2回に分けて行われた)がアイマスクを装着し、目が見えない状態でチームの垣根を越えて行うもので、"血液型"や"生まれた季節"などのテーマに合わせて、自分たちでコミュニケーションを取りながらグループに分かれるというもの。初回は血液型に合わせてA型、B型、O型、AB型、不明の5つのグループに分かれることとなった。視覚を奪われた状態で、名前も声も知らない参加者同士で、うまくグループに分かれることができるのだろうか?

同じ血液型の人同士で出会ったら、しっかりと手をつないでいないと離れてしまうため、否が応でも参加者の絆は深まる

このアイスブレイクは、参加者全員が参加するプログラム。
「ほかのチームの人はもちろん、同じチームでもこの大会で初めて顔をあわせることも珍しくない。そういう人たちにコミュニケーションを深めてもらう目的で導入しています」(伊吹)
実際、アイスブレイクの後は会場の雰囲気が一気に和らぎ、参加者の間にもチームを超えた一体感が生まれていることが見ているだけでも感じられた。

目隠しで全身を使ってプレーするゴールボール

1種目目は同じく目隠しをした状態で行うゴールボール(ソフトボール使用)だ。3人ずつのチームで攻撃側はボールを転がし、相手のゴールラインを割れば得点が入る。ディフェンス側はボールの中に入っている鈴の音に耳を澄ませ、全身を使ってボールを止める。

目が見えない状態でボールの音だけが頼りのため、ディフェンスは全身を投げ出してコースを塞ぐ

ここで好成績を収め、首位に立ったのが「みずほ銀行チーム」。仙台支店の普段はボランティア活動などに参加しているメンバーで構成されたチームは、ゴールボールの経験者は1人もいないとのことだが、負けなしで競技を終えた。

「オフェンスは真ん中ではないところに投げようとするのが精一杯でした。それも、どの方向に飛んだのか自分ではわからないままなので、それが正しかったのかもよくわからない。ディフェンスの際も鈴の音で方向がわかるのは近くに来てからだし、誰かが止めたかどうかもわからないことが多かったので、チーム内では『止めた』とか声を出してコミュニケーションを取ることが大切だと思いました」と同チームの井上さん。視覚が遮られている中でコミュニケーションすることの大切さを感じていた様子だ。

応援も盛り上がるシッティングバレーボール

続いての競技はコート内に座ったまま行うシッティングバレーボール(ソフトボール使用)。1チーム6人で、ポジションをローテーションしながらプレーするのは通常のバレーボールと同じだが、異なるのはネットが低いことと、全員がコートにお尻を付けていなければならないこと。ただ、ボールの動きなどは同じなので、応援するほうも展開がわかりやすく、力が入っていた。

健常のバレーボールのネット(女子用)を使用。お尻をコートに付けた状態でプレーするので、チーム内で連携しボールをうまく繋げるかがポイント

「座ったまま移動するには手で床を押す必要があるので、ボールを手で上げようとすると間に合わなかったりして大変だった。この辺りは体験してみないとわかりませんね」と語るのは「ブリヂストンチーム」の森さん。この日は同社のオリンピック・パラリンピック室の社員を中心としたメンバーで、参加したという。「普段からパラスポーツを行うイベントに協賛などしていますが、実際にやってみると難しさや面白さが改めて感じられます」とプレーする楽しさを感じているようだった。

誰もがヒーローになれるボッチャ

3種目目に行われたのはボッチャ。はじめに投げるジャックボールに向けて、両チームでボールを投げたり転がしたりし、近くに寄せられたほうが勝ちという一見すると単純なルールだ。しかし、ジャックボールを投げる位置をどうするかや、相手のボールやジャックボールをはじき出すこともできるなど戦略的な要素も多く、見ている側も楽しめる奥深さを持った競技だ。

戦略とコントロールが問われる競技のため、年齢や体力に関係なく楽しめる。車いすユーザーも同じ土俵で真剣に勝負できるのも魅力

ここで躍進したのが「西尾レントオールチーム」。同社の常務を務める芝本さんは、パラスポーツ運動会の常連で、同社所属のボッチャ日本代表の廣瀬降喜選手に手ほどきも受けているとあって、ひときわ戦略的な投球を見せていた。

「体力やスポーツの得意・不得意に関係なく誰でもプレーできて、普段目立たない人が光るものを見せたりするのが面白いところ」とボッチャの魅力を語る。芝本さん以外は全員ボッチャ初体験とのことだったが、全勝でジャンプアップを果たしていた。

車いすポートボールで会場がヒートアップ

この日、最も参加者たちが熱くなっていたのが4種目目の車いすポートボール。パラリンピックの種目となっているのは車いすバスケットボールだが、車いすに座った状態でNBAなどと同じ高さのバスケットゴールにシュートを入れるのは初心者にはハードルが高いということで、台の上に乗ったゴールマンがボールを受け取るポートボールに変更して行われた。多くの人が学校の体育の授業などで経験したり見たりしたことがある競技だけに、参加者も応援する側も大いに盛り上がった。

車いすをいかに自由に操れるかが勝敗を分けるポイント
ボールを膝に乗せて敵陣を突破!

華麗な車いすのコントロールテクニックを見せて全勝で競技を終えたのが、今回の会場でもある「東北福祉大学チーム」。普段からパラスポーツ大会のボランティアなどをしているサークルのメンバーが中心とあって、全員が車いすの操作に慣れており、きれいにターンを決めていた。


「車いすハンドボールの競技にも取り組んでいて、全国大会にも出ているので車いす競技では負けられません!」と語るのは同サークルの代表を務めていたという小林さん。パラスポーツの魅力については「道具やルールをアレンジすることで、障がいの有無に関わらず誰もが同じ土俵に立てること」と語ってくれた。

車いすリレーで優勝チームが決定!

最後の種目となったのは車いすをバトン代わりに乗り替えていく車いすリレー。予選を勝ち抜いた4チームで争われたが、奇しくもこの時点での1位〜3位までのチームが顔を揃え、この競技で勝ったチームが優勝という展開に。レースは車いすユーザーが複数いるチーム宮城と、ホームの東北福祉大学がトップを争う流れとなった。

予選は5チームずつコートを往復するかたちで競われる
トップでゴールし、総合優勝も決めたのは東北福祉大学チーム!

車いすユーザーはタッチでバトンを渡したことになるため、乗り替える時間のロスがないことが有利に働くかと思われたが、終わってみれば体力で勝る東北福祉大学の勝利に。

「普段からパラスポーツに関わっているので、自分たちがやる側に回っても勝てたことは素直にうれしい」と小林さんはコメント。来たる日本一決定戦については「それまでに車いす以外の競技も強化しておきたい」と意気込みを語ってくれた。

優勝し、2019年3月の日本一決定戦の切符を手にした「東北福祉大学チーム」
「仙台大学チーム」の面々

今大会には、障がいのある人との混成チームも何チームか参加していた。仙台大学のチームには聴覚障がい者の世界大会「デフリンピック」陸上競技の4×100mリレーで金メダルを獲っている佐々木琢磨選手も参加。このイベントの魅力について「普段の競技は1人で集中していることが多いが、チームのみんなと一致団結して競技を楽しめること。障がいの有無に関係なく、初めての人とでもすぐに仲良くなれるのもいいところだと思います。いい部分をぜひデフリンピック競技にも持ち帰りたい」と語ってくれた。

今大会唯一の車いすユーザーとの混成チームだった「チーム宮城(宮城パラ陸上競技クラブ)」が3位に

「チーム宮城」のメンバーとして参加した車いすユーザーの佐藤さんと大坂さんは「車いすを使わない競技は初めてのものも多かったですが、予想以上に面白かったです」と振り返る。一番楽しかったのは? という質問には「断然、車いすポートボール」と声を揃えるが、「それ以外の競技も楽しめたようで良かった」と2人を誘った佐藤圭さんも笑顔を浮かべていた。

「チーム宮城」は、今回のホスト的な役割も務めた東北福祉大学の小玉一彦教授が呼びかけ、ゼミの学生との混成チームだったが「お互いに一緒に同じ競技に取り組む機会はほかにない。1日一緒に過ごした後は互いにリスペクトし合う気持ちが強まっていて、予想以上に成果が大きかった」と振り返る。今後、全国で開催される中で、どんなドラマや成果が生まれるのか、今から楽しみだ。

text by TEAM A
photo by Tomoyuki Okano

〈この記事は、日本財団パラリンピックサポートセンター公式WEBサイト「ニュース&トピックス」に掲載されたものです。(2018/12/14公開)〉


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