ひとりひとりの2020に出会う。

2020年という、日本にとって特別な1年に向けて
スポーツを通じた絆を、
競技を支える人たちのドラマを、
世界に誇る日本の文化や芸術を、
誰もが参加できる社会貢献のあり方を、
さまざまな視点で切り取り、伝えていく。
ここでの出会いと発見を、
ひとりひとりが日本の未来を考えるきっかけに。
それが、“みんなの2020”です。

東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2019.12.06

東京2020大会、前哨戦開幕! 車いすバスケ男子日本代表・及川JAPANの進化

8月29日~10月1日、武蔵野の森総合スポーツプラザでは、車いすバスケットボールの国際強化試合「三菱電機 WORLD CHALLENGE CUP 2019」(MWCC)が開催された。日本、オーストラリア、イラン、韓国の4カ国が参加した今大会、日本は3位という結果となり、昨年に続く連覇を達成することはできなかった。しかし、世界の4強であるオーストラリア、イランと繰り広げた"三つ巴"の戦いには、東京2020パラリンピックへ力強く前進する及川JAPANの姿が映し出されていた。

©Sachie Torikai


MWCCで示し続けてきた成長

©Sachie Torikai

今年で3回目を迎えたMWCC。東京2020パラリンピックに向けて、日本代表の強化が一つのテーマとされてきた同大会で、及川JAPANはこの3年間、着実に強さを示してきた。

第1回大会の2017年、日本は東京でのメダル獲得に向けて、最大の武器とする「トランジションバスケ」を披露した。特に初戦で対戦したオーストラリアは、攻守の切り替えの速い日本に翻弄された。前半、オーストラリアのターンオーバーは12を数え、11点のビハインドを負う展開に。しかし後半、日本は"ベリー・ハードワーク"を必要とする40分間フルでのプレスディフェンスに必要なスタミナ不足が露呈し、1点差で敗れた。翌年の世界選手権で優勝する強豪イギリスにも惜しくも敗れ、結果は3位。だが、それは日本バスケが世界を震撼させる"幕開け"でもあった。

©Sachie Torikai

翌2018年に行われた第2回大会で、ついに日本が世界に牙をむく。オーストラリア、カナダ、ドイツが参加するなか、予選リーグ、決勝の全4試合で勝利をおさめ、完全優勝を果たしたのだ。同大会で示されたのは、チームの層の厚さだった。若手が台頭したこともあり、指揮官の手には強力で豊富な"カード"が揃っていた。そのため、ラインナップのバリエーションは世界随一となり、真の意味でメンバー12人で戦う"全員バスケ"に舵を切ることが可能なチームへと成長していた。

2年前にはなかった"40分間"の力

©Sachie Torikai

連覇を狙って臨んだ今回のMWCCは、同じ対戦相手がライバルとなる今年唯一の公式戦「アジアオセアニアチャンピオンシップス」(AOC)を控え、その前哨戦ともいわれる位置づけとなっていた。そのため、AOCに向けてチームを成長させながら勝ちにいく、そんなテーマが課されていた大会でもあった。

初戦の韓国戦、65-42で快勝した日本は翌日、オーストラリアと対戦した。昨年の世界選手権で銅メダルを獲得した強豪相手の試合は、エース香西宏昭選手の3Pシュートで幕を開けた。その後、日本は追加点を奪えずに苦しい時間帯も好守備で凌ぎ、相手に主導権を握らせはしなかった。逆転する可能性は十分にあった。

©Sachie Torikai

しかし、最後に自分たちのミスで勝機を逃してしまう。8点ビハインドで迎えた最終クォーター、残り5分で指揮官は香西選手、藤本怜央選手の主力を揃えたカードで勝負に出た。ところが、その直後に日本は連続でターンオーバーを犯してしまったのだ。流れを引き寄せることができなかった日本は、最後まで戦う姿勢を崩すことなく粘りを見せたものの、60-77で敗れた。

それでも、決勝進出の可能性は残されていた。オーストラリアが初戦でイランに敗れていたため、日本、イラン、オーストラリアの3カ国が1勝1敗で並んだのだ。予選最終戦でオーストラリアが韓国に勝ち、日本がイランに勝った場合は3カ国が2勝1敗で並び、その場合は得失点差で決勝に進出する上位2チームが決まることになっていた。日本は、イランに15点以上の差をつけて勝つことが決勝進出の条件となった。

©Sachie Torikai

そこで、指揮官が切ったカードは、試合時間の40分間フルでのオールコートのプレスディフェンスだった。結果は、63-57で日本の勝利。"15点差以上"という決勝進出の条件を満たすことはできなかったが、それでもチームが進化していることを印象付けた試合となった。

2年前のMWCCでのオーストラリア戦では、プレスディフェンスを40分間続けるだけの力はまだなかった。だが、今年は違った。まさに高さとパワーを兼ね備えた強豪イラン相手に、日本は見事40分間フルでやり遂げ、勝利につなげたのだ。

プレスディフェンスが成功した要因の一つには、大会前から及川HCが挙げていた "チームの和"があった。瞬時に攻守を切り替え、相手にプレッシャーを与えることでパスやドリブルのコースを防ぐ。さらにマークする相手をスイッチしたり、お互いにカバーリングし合う。こうした過酷な作業をコート上の5人全員が継続するだけの強い気持ちと、信頼関係があったからにほかならない。

その一方で、課題も浮上した。「ディフェンスリバウンド」だ。分析の結果、MWCCではディフェンスリバウンドを取られて相手に得点を奪われ、流れを持っていかれた場面が少なくなかったという。これまで一人一人が強く意識できていなかった部分でもあると言い、その課題を克服し、AOCではステップアップしたチームの姿を見せるつもりだ。

アジアオセアニアの王座奪還を狙うAOC

©Sachie Torikai


リオ後、それまでのバスケを壊し、ゼロからスタートを切った及川JAPAN。1年1年、大会ごとに、試合ごとに、成長と進化の道を歩み続けてきたことは間違いない。現在の日本は実力で言えば、世界のトップクラスにしっかりと入っている。

だが、その一方で、結果を残していないこともまた事実だ。世界選手権、アジアパラ、そして今回のMWCCと、実力があるがゆえに、結果は不甲斐なさを否めない。今後、求められるのは、勝利に結びつけられる強さであることは、選手たちが一番感じているはずだ。

だからこそ、重要なのが、11月29日に開幕したAOCだ。2019年ラストを飾る同大会は、2020年東京パラリンピックに向けての唯一の公式戦となる。すでに出場枠を得ている日本以外の参加国にとっては東京2020パラリンピックの切符がかかった大一番。日本にとっても、本気モードで臨んでくる海外勢と対戦することのできるラストチャンスだ。

2020年への"最後のリハーサル"でもあるAOCで、オーストラリア、イランを破って優勝し、アジア・オセアニア王者として、世界最高峰の舞台に挑むことが最大の使命とされる。そして、今の及川JAPANには、それを実現させるだけの実力が十分にある。そのことを証明する"時"はもうすぐだ。

©Sachie Torikai

取材・撮影:鳥飼祥恵  取材・文:斎藤 寿子 


SPORTRAIT

SPORTRAITとは、SPORTとPORTRAITを掛け合わせた造語。アスリートの肖像という意味を込めています。パラスポーツの魅力を伝えるために、アスリートを中心に競技、そしてそれらを支えてきた人・技術など様々なストーリーを発信するWEBメディアです。