ひとりひとりの2020に出会う。

2020年という、日本にとって特別な1年に向けて
スポーツを通じた絆を、
競技を支える人たちのドラマを、
世界に誇る日本の文化や芸術を、
誰もが参加できる社会貢献のあり方を、
さまざまな視点で切り取り、伝えていく。
ここでの出会いと発見を、
ひとりひとりが日本の未来を考えるきっかけに。
それが、“みんなの2020”です。

東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2019.05.16

"サーフィンの町"で五輪成功を目指して 初の住民説明会で運営責任者が感じたこと

 東京オリンピック・パラリンピックを成功に導く重責を担う「スポーツマネジャー」。大会組織委員会内で各競技の運営責任者として、国内および国際競技連盟等との調整役を務めている。

 東京オリンピックのサーフィン会場となる千葉・一宮町でこの春、初の住民説明会が開催された。サーフィン競技スポーツマネジャーの井本公文さんは、大会組織委員会として競技内容について説明した。「サーフィン競技の成功は地元の皆さまのご協力にかかっている」と井本さんが力説する理由や、今年7月に開催されるテストイベントについて教えてもらった。

サーフィンではなぜ住民説明会が重要か

千葉県一宮町で初の住民説明会が開催。井本さんが地元の理解・協力がオリンピック成功の鍵と考える理由とは【Photo by Tokyo 2020】

 3月31日にサーフィン会場となる千葉県一宮町で、初の住民説明会を開催しました。参加者は地元の方約60人で、サーファーが1〜2割、あとの8〜9割は町民の皆さまでした。

 他の競技でも住民説明会は行われますが、特にサーフィンは重要だと考えています。その理由は、自然の中で競技を行うサーフィンの「競技性」と「地元愛」です。

 サーフィンには世界的に「ローカリズム」と呼ばれる文化があり、地元のサーファーたちがサーフィンを行うホームポイントである海をきれいにしたり、海での有事の際にはお互いに助け合ったりします。地元の海を愛し守ろうとする気持ちが強く、また自然に対する意識も高く、"自分たちの海"を汚すようなビジター(または訪問者)には厳しくなる傾向もあります。この世界中にあるローカリズム文化こそ、サーフィンの良さであり、厳しいルールにより安全に行われ、自然と共存できる素晴らしいスポーツとしてあり続けられる理由です。

 大会期間中は、普段は穏やかな一宮町に世界各国から観客が訪れます。地元の方から見れば、日本屈指のサーフィンスポットが一定期間とはいえ使えなくなる。会場となる釣ヶ崎海岸は世界でも有数の波が立つところで、地元サーファーの思い入れも強い場所ですから、きちんと運営方針や状況を説明して、地元からの理解やサポートを得ることは、まさにオリンピック成功の鍵になるのです。

 説明会では2時間ほど時間をいただき、組織委員会の各部門の担当者から多岐にわたる内容をご説明しました。私は競技担当として、世界大会の写真をお見せしながら大会の内容や競技特性などを話しました。例えば、サーフィンは天候や風に大きく影響を受けるため、7月26日からの8日間のうち条件が整う4日間で試合を行うことや、競技と一緒に会場で8日間開催され、サーフィンの競技特性でもある"オリンピックサーフィンフェスティバル(仮称)"のことなどです。

 参加した住民の方からは、「何をいつやるのかを教えてほしい」という意見をいただきました。ゴミ問題といった"ビーチクリーン活動"を含め、オリンピックを迎えるための会場作りに関する質問もありました。なるべく少しでも多くの情報をお伝えし、地元の方々と協働できるようなことがないか、私自身もアンテナを張っていきたいと思います。また、サーフィン競技は、今回のオリンピックで初めて採用される競技で、大会開催の前例がなく、さまざまなことをこれから決めていかなければいけない状況にあります。だからこそ、住民の方の不安や疑問を少しでも解消すべく、しっかりコミュニケーションを取り、今後もきちんと進捗(しんちょく)を説明していく必要性を感じました。

 同時に、住民の皆さまが地元でのオリンピック開催を楽しみにしてくださっていることも、あらためて実感することができました。チケットの購入方法や、「開催を盛り上げるためにオリンピックシンボルを使えるようにして欲しい」といった要望、「サーフィンフェスティバルに神輿(みこし)など地元の伝統芸能も取り入れて欲しい」などの前向きな意見もありました。たくさんの貴重な意見を聞くことができ、地元の方も一緒にオリンピックを作っていきたいという意識を持っていることが分かり、われわれも大変心強く感じました。

7月のテストイベントで確認したいこと

7月には釣ヶ崎海岸でテストイベントが開催。本番を想定したさまざまな確認が行われる。写真は2016年のもの【写真は共同】

 7月18〜21日には一宮町の釣ヶ崎海岸で、テストイベント「READY STEADY TOKYO」が開催されます。オリンピック本番に向けての予行練習となる機会です。

 テストイベントはオリンピックの全競技、基本的には本番と同じ会場で実施することが国際オリンピック委員会(IOC)の規定で義務付けられています。テストイベントは大きく2つに分類されます。1つは、国際・国内競技団体が主催する既存の世界大会や日本選手権などにわれわれ大会組織委員会がお邪魔し、機器の動作確認といった必要なテストを実施させていただく方法。もう1つは、既存の適切な大会がない場合などに、組織委員会主催でテストイベントを開催する方法です。

 サーフィンはオリンピック初開催ということもあり、後者にあたります。本番会場での波を試してみたいという海外選手からの問い合わせもありましたが、テストイベントは日本選手のみで行い、参加する選手は国内競技連盟である日本サーフィン連盟に選抜してもらう予定です。

 テストイベントでは、本番と同じようなスケジュールで実施し、デジタル機器の動作確認や運営スタッフの役割確認などを行います。また、競技エリアにおける進行スケジュールのチェックも大事です。オリンピックでは細かく競技予定時間が決められていますが、天候や波に左右されるサーフィンは時間通りにいかないことが多く、台風などの影響により全くサーフィンできない日もあり、順延は珍しいことではありません。組織委員会の各担当者には、大会運営を実際に体感してもらうことで、サーフィンならではの競技の進め方を知ってもらういい機会になればと思っています。そして私自身も、オリンピックに近い時期の波の状態を知ることで、進行スケジュールや時間調整の予測、準備につなげていきたいと考えています。

 テストイベントでの結果を本大会へとつなげて、出場する各国代表選手がベストなパフォーマンスができるよう、そして世界中の観客にサーフィン競技の魅力をしっかりと伝えること、それが私に課せられた使命だと思っています。テストイベントの結果は、次回お伝えしたいと思います。

プロフィール

井本 公文(いもと きみふみ)

1971年生まれ、静岡県在住。サーフィンとスノーボードの選手として全日本選手権に出場し、専門店も起業。サーフィンの審判員を経て、一般財団法人日本サーフィン連盟の理事に就任。チームジャパン代表監督として、世界選手権や世界ジュニア選手権に参加。日本サーフィン連盟副理事長、強化委員長を務めながら、17年7月より、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のサーフィン競技スポーツマネジャーに就任。


Sportsnavi
東京2020特集

東京2020オリンピック・パラリンピックに関連する最新ニュースやコラム、イベント情報などをお届けするスポーツナビの報道サイトです。