ひとりひとりの2020に出会う。

2020年という、日本にとって特別な1年に向けて
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誰もが参加できる社会貢献のあり方を、
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ここでの出会いと発見を、
ひとりひとりが日本の未来を考えるきっかけに。
それが、“みんなの2020”です。

東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2018.07.24

見るだけじゃもったいない 経験者に聞くオリパラ・ボランティアの魅力

7月24日にいよいよ東京2020大会開幕2年前を迎えた。9月から応募開始となるボランティアの募集人数は大会ボランティア8万人、都市ボランティア3万人。ボランティアに興味があっても「どんな仕事があるかわからない」「会社を休めるかわからない」「体力的に不安だ」という人向けに、リオ大会ボランティア経験者の新条正恵が同じくリオ大会で活躍した堀池桃代さんと、平昌大会で活躍した玉置志帆さんにボランティアの魅力を聞いた。

多彩なボランティアの仕事 申し込むきっかけは

──お二人がボランティアに申し込んだきっかけはなんだったのでしょうか?

堀池 2016年にちょうど1年間サンパウロに交換留学をしていたんですが、自分の留学中に世界中が注目するオリンピックがブラジルにやってくるということと、2020年東京の直前の大会ということでリオ大会が東京につながる大会になるのではと思い、見るだけでなく内側から関わりたいと思ったんです。

玉置 私の場合、自分が大学でスキー部に入っていたので、どちらかと言えばオリンピックは夏季大会より冬季大会が好きだったんです(笑)。特に平昌大会では後輩の1人が金メダル候補だったので、絶対行きたいと思っていました。そしてせっかく行くならお客さんとしてだけでなく、裏側も見たいと思っていたところにSNS広告でボランティア募集の告知が表示されたのでポチッと(応募)しました。

──ポチッとですね(笑)。玉置さんはご家族もおられますし、会社でも中堅どころですが、周囲の協力はどのようにして得られたのでしょうか?

玉置 家族には平昌大会の開催が決まった時点で「私は行くからね」と宣言していました。ですので、ボランティアに応募したという話をしても「本当に行くんだね」というコメントくらいで反対はありませんでした。会社には応募した時点ですぐに直属の上司と部門長に「選考に通るかわかりませんが、ボランティア参加を考えています」と伝えました。もともとスポーツ用品メーカー勤務で、制度として有給のボランティア休暇が12日間あるので利用しました。昨年その制度を使ったのは私だけだったようですが(笑)。

上司だけでなく、チームの方も割と快く送り出してくれました。というのも、私のチームは海外ブランドも担当していて、近年売れ行きが最も伸びているのが韓国なんです。そのため大会中、業務で平昌の支店に出張で行っている人も同じチームにいて、結果的に私もボランティアが休みの日は現地でヘルプ対応ができたのでかえって喜んでもらいました。というのも、私のチームは海外とのコミュニケーションを担当していて、主に私の担当が韓国なのです。さらにスポーツ用品メーカーなのでオリンピックでの契約選手の対応なども兼ねて、業務として平昌へ出張に行っている方もいて、結果的に現地に私もいることで少し安心する、と喜んでもらいました。会社のパソコンは持ち出しが可能なので、メールチェックなどは随時していました。

平昌オリンピックボランティアの様子(玉置さん・一番左)

──オリンピック・パラリンピックのボランティアは仕事内容を細かく分類すると、数千種類にもおよぶと言われています。参加する前に仕事の希望はあったのでしょうか?

堀池 特になかったです。日本語とポルトガル語を使って何かしたいとは思っていましたが、なんでもいいからやりたいと思っていたし、面接の時もそう伝えました。結果的には大きく2つの仕事をしました。私の場合、オリンピック開幕1週間前に現地入りしたので開幕まではメディアセンターという各国のメディア関係者が働く場所で、メディアの方を迎え入れる仕事をしていました。具体的には(数が限られている)プレスパスが取得できなかった方のための開会式チケットの手配や、センター内オリエンテーションなどです。開幕後はミックスゾーンと言われる競技場の中のスペースで、女子バスケットボール、7人制ラグビー、ゴールボール試合終了後の選手インタビューの通訳をしました。

リオオリンピックボランティアの様子(堀池さん・右から3番目)

──仕事内容を知ったのはいつでしたか?

堀池 スカイプ面接の時に「外国人スタッフだからたぶん通訳をしてもらうことになる」と言われていました。

面接では「なぜオリンピックでボランティアをしたいのか」「どこに住んでいるのか」「どんなスポーツをやっていたのか」を聞かれました。特に得意な競技があれば優先的に担当させてもらえるとのことでしたが、私はダンスをやっていたので「なんでもいいからやりたい」と伝えました。

玉置 私は通訳で申し込みをしていたのですが、結果的に会場案内業務を担いました。勤務場所はフィギュアスケートとショートトラックのアイスアリーナでした。本当は応援している選手がいるスキージャンプで働きたかったのですが、室内で暖かかったですし、知らない競技を知るいいきっかけになるなと思いました。仕事内容はいくつかありますが、チケットチェック、アクセスコントロール、観客同士のトラブル対応、案内業務などです。本来、トラブル対応については有償で働くリーダーが対応するのですが、私のチームは全部で250人中日本人が2人しかいない上に、韓国語と日本語を両方話せるのが私しかいなかったので自然にリーダー業務を任されるようになりました。

英語力はどれくらい必要?

──実際に参加してどのくらい英語力が必要と感じられましたか?

玉置 ほとんど必要ありませんでした。アイスアリーナは観客のほとんどが日本人、韓国人、中国人、ロシア人でしたので英語より日本語を話せる人が必要でした。外国人ボランティアが配属されるチームの場合、リーダーは英語が話せた方がいいですが韓国ではリーダーも英語が話せずチーム内の意思疎通があまり取れていなかった問題はあったみたいです。全体的に平昌の場合は「意外と話せる人が少なかった」という印象で、絶対英語が話せないといけない、というよりは「英語を話せた方が仕事がやりやすかった」というイメージです。

堀池 通訳チームは全員英語が話せましたが、それ以外のチームはブラジル人が多くほとんどは英語が話せなかったみたいでした。

平昌オリンピックボランティアの様子(玉置さん・右から2番目)

待遇やスケジュールなど、気になること

──ボランティアは無償ということですが、本当に全て無償なのでしょうか?

堀池 お給料はもらえませんが、ボランティアにはICカードが配られて、市内交通は無料でした。勤務日には1日1食の食事がついていました。また、ボランティア特典として毎日のようにグッズをもらったり、観戦チケットをもらったりしたこともありました。

玉置 冬季大会の場合は、アクセスしにくい場所での開催ということもあり宿泊場所や3食全てつきますが、お給料はもらわず無償でした。他には会場までの送迎もありましたし、勤務中の保険は加入してくれていたようです。

リオオリンピックボランティアの様子(堀池さん・真ん中)

──ボランティアの中にもチケットを買って試合を見たりしたいという方もいると思いますが、スケジュールはどのように決まるのですか?

堀池 スケジュールは1日前など直前に決まっていました(笑)。私の場合はボランティア優先だったので、どうしても試合を見たいとは思っていませんでしたが、シフトによっては午前だけだったり午後だけだったりと割と自由だったので、ボランティアに配られた無料のチケットを使ってマラソンなどを見に行ったり、ビーチに遊びに行ったりもできました。後半になって慣れてきたら、チームリーダーに交渉して日本人の試合がない日はお休みにしてもらったりしました。

──最低10日間の勤務が必要ということですが、1日の流れを教えていただけますか。毎日8時間以上、立って働いたりしないといけないのでしょうか?

玉置 仕事中はずっと立ちっぱなしでしたが、私は屋内勤務でしたので1時間働いて20分休憩でした。外の寒い中働いていた友人は20分働いて20分休憩のローテーションで、最大3時間というシフトだったそうです。

堀池 私の場合はミックスゾーンでの通訳中は立ちっぱなしでしたが、リーダーからしつこいくらい休憩を取るように言われたこともあり、仕事以外の時はこまめにブレイクルームで座って休憩できました。1日の流れはまず電車で1、2時間かけて通勤し、出勤のチェックインをしたら1試合を見てから通訳に従事。交代で食事に行った後にもう1、2試合を見て通訳をしたら業務終了でした。

──試合を見ることができたのですか?

堀池 客席で座って見ることはもちろんできませんが、私が担当していた会場はメディアエリアの後ろの方に立って見学できるスペースがありました。慣れない頃は、そこでリーダーや他のボランティアから試合を見ながらルールを教えてもらったりもしました。バスケットボールについては基本的なルールは知っていましたが、7人制ラグビーについては全く知りませんでしたし、選手の名前などもわからなかったので1日のボランティア業務が終わってから調べたり、ボランティア同士で情報交換などをしたりしていました。

ボランティアの魅力は

──パラリンピックのボランティアについて教えてください。オリンピックのボランティアと大きく異なる点はどんなことですか?

堀池 選手とも観客とも距離が近いと感じました。オリンピックの選手はテレビの中の人といった印象で近寄りがたい感じでしたが、パラリンピックの選手は日本のアニメの話が知りたいと相手から気さくに話しかけてくれたりしました。観客も外国人が減ってブラジル人が増えたということもあり、お客さんのノリが良くいろんな人と話す機会がありました。自分の中で大きく変わったことは、障害者との距離感です。サンパウロに戻ってからも杖をついた人を見かけたら「危ないから一緒に行きましょうか」と気軽に声をかけられるようになりました。

──意識が変わるって素晴らしいですね。堀池さんはパラリンピックでは希望の競技を担当したんですよね。その経緯を教えてください。

堀池 私が通っている立教大学からパラリンピアンとしてゴールボールに若杉(遥)選手が出場すると知って「どうしても担当させて欲しい」とマネージャーに交渉しました。若杉選手にも自分が立教大生であることを伝えたら、後で別のインタビューの際に私が通訳を担当したことが嬉しかったと言ってくださっていたようです。

──ボランティアをやって一番良かったことはどんなことですか? 逆に最もつらかったことを教えてください。

堀池 良かったことがたくさんありすぎたので選べないのですが(笑)、一番はやっぱり、先ほどの同じ立教大生でパラリンピアンでもある若杉選手の試合を近くで見られて、通訳をさせてもらったことです。あとは、男子7人制ラグビーキャプテンの桑水流(裕策)選手のインタビュー質問を考えさせてもらったことです。もともとは記者の質問を通訳するのが私の仕事ですが、仲良くなった記者の方に大学でメディア社会学を専攻していると伝えたら「桃代がインタビュー質問を考えてもいいよ」と言ってくれました。まるで自分が記者になったような気分で励みになりました。他にも男子7人制ラグビー3位決定戦終了後に、競技場の裏で日本人選手がキャプテンを囲み「上を向いて歩こう」を歌っているのに遭遇したりして、私もウルウルしちゃいました。

つらかったことは、治安が不安で外出があまりできなかったということと、宿を見つけることに苦労したことです。サンパウロからリオへはバスで6時間ほど、飛行機でも1時間ほどかかりますし、リオは土地勘もなく知り合いもほとんどいませんでした。結局旅行先で一度だけお会いしたブラジル人の家にホームステイさせてもらいましたが、家の前がスラム街で毎日途中から走って帰宅していました。

リオオリンピックボランティアの様子(堀池さん・右から3番目)

玉置 今まで自分にとって馴染みのなかったフィギュアスケートに触れられたことと、テレビだと選手の活躍しか見ることができないのが、実際にその場にいると観客も含め多くの人が関わり大会を支えていることに気づかされたのが良かったことです。つらかったことは、私自身がボランティアの中で年齢が高かったということもあり、観客同士のトラブル対応業務を任されてしまったことでしょうか。

2020に向けて

──2020年、お二人はどうされたいか決まっていますか?

堀池・玉置 もちろんボランティアしたいと思っています!

──2020年までに意識していることや挑戦しようとしていることはありますか?

堀池 やっぱりポルトガル語を使って何かしたいと思っているのですが、ブラジルから帰国して1年近く経った今、ポルトガル語を忘れつつあるので講義を履修したり、秋に検定も受けたりする予定です。パラリンピックや障害者についても知識を深めたくて、大学で授業を受けたり2017年は他の学生と企画してシンポジウムを開催したりしました。

玉置 個人としては2019年ラグビーW杯やオリンピックのテスト大会などで多くのボランティア経験を積みたいと思います。平昌では大学生と高校生のボランティアが多く、社会人ボランティアが少なかったのが印象的でした。私たち世代をもっと盛り上げたいので、これからも知人やいろんな機会を通してオリンピックボランティアの魅力を伝えていきたいと思います。

堀池 玉置さんに質問したいのですが、私も2019年ラグビーW杯や2020年大会でボランティアをしたいと考えています。ただ、就職1、2年目ということもあり休めないのではと懸念しています。玉置さんからアドバイスをいただけないでしょうか?

玉置 就職される予定の会社にはリオ大会の経験を伝えられているんですよね? 社会貢献という側面もあり、会社はボランティアをしたいという社員の気持ちを基本的には応援してくれると思いますが、堀池さんもただ「やりたい」というだけでなく「私がボランティアとして参加することで、会社やチームにこのような貢献をもたらします」とアピールするといいと思います。周りの人には、とにかくあらゆる機会にボランティア参加やオリンピックそのものに興味があることをマメに話しておくのがいいと思いますよ。社会人ボランティアとして一緒に東京2020を盛り上げましょう!

(2018年7月 取材・文:新条正恵)

堀池桃代さん
立教大学4年生。サンパウロ大学に交換留学中、リオオリンピック・パラリンピックにボランティアとして参加。ブラジルは幼少期を過ごした第二の故郷。大会期間中はポルトガル語と日本語の通訳として業務に従事。

玉置志帆さん
株式会社デサント勤務。11年勤務する会社から1ヶ月休暇を取得して、平昌オリンピックにボランティアとして参加。韓国駐在経験があり、韓国語・英語を話す。大会期間中はフィギュアスケート会場にて観客案内業務に従事。

▼ライタープロフィール
新条正恵 
8ヶ国語を話すマルチリンガル、リオ大会通訳ボランティア。
外資系銀行ヴァイスプレジデント職を経て2014年に独立。独自ノウハウで開催する講座からは多くのバイリンガルを輩出。プライベートでは小学生の頃よりさまざまなボランティアに参加。仕事を休み参加したリオ大会にて通訳ボランティアとして活動した自身の経験と、3000種類もあると言われるボランティアについて現地で見聞きした内容を、講演や執筆活動を通し広く発信している。


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