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2020年という、日本にとって特別な1年に向けて
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ここでの出会いと発見を、
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それが、“みんなの2020”です。

東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2018.09.26

東京2020組織委員会に聞く大会ボランティア「大会を一緒に創り上げたい」

9月26日にはいよいよ東京2020大会のボランティア募集が始まる。「(処遇などが)ブラックなのではないか」「合計11万人以上ものボランティアが集まるのか」そんな声も上がる中、リオ大会ボランティア経験者の新条正恵が、東京大会組織委員会・ボランティア推進部の傳夏樹さんと古瀬浩一さんにオリパラ大会ボランティア募集にまつわる疑問をぶつけてみた。

「大会に直接参加してもらう」機会

──そもそも、オリパラ大会でボランティアを募集することになったのはなぜですか?

傳 初めてオリンピックの大会でボランティアが活躍したのは1912年ヘルシンキ大会で、もともとは「大会に直接関わりたい」という人たちに活動の場を設けたのが始まりと言われています。最近ではリオの約5万人、ロンドンの約7万人といった例がありますが、それだけ多くのボランティアを活用する理由は、4年に1回という世界の人が注目するビッグイベントを、関係者だけでなく、大会を楽しみにしているできるだけ多くの人に直接参加してもらいたいという思いがあります。そのため、大会を一緒に創り上げたい、成功させたいという方にぜひご参加いただきたいと思います。

──そうは言っても、募集要項の活動期間に「10日以上の活動を基本とする」とあり、会社を休めるかどうかわからないという方も多いようです。

傳 大会ボランティアの活動内容は大きく9種類に分かれています。どのチームに配属されるかにもよりますが、例えばユニフォームの配布を行う施設や選手村での活動などは通常のチームより早くスタートするので、土日祝や平日夜を優先してシフトを組むなど長い期間中に、ご自分のスケジュールに合わせて活動することも可能だと思います。

「東京2020大会ボランティア リーフレット」より

応募者の希望はどの程度通るのか?

──募集要項に「オリンピック・パラリンピック競技に関する基本的な知識がある方」に積極的に応募してほしいとあります。例えば特定の競技について知識がある場合、希望すればその競技や選手をサポートする活動に就けるのでしょうか?

古瀬 ボランティアの活動内容は競技会場の中においても、競技に直接関わる内容だけでなく、会場案内などの活動もあります。そのため、競技についての知識を持っていても必ずしもその競技に関わる活動ができるという訳ではないかもしれません。しかし、応募フォームの中で過去のスポーツ経験などを記入する欄は設けているので、これまでの経験や実績についてはそちらに記入していただければと思います。

──希望といった意味では、活動エリアなどの希望も考慮するのでしょうか?

傳 活動エリアは「東京」「静岡」などといった大枠となりますが希望は選択していただけます。また、希望する活動分野、活動日数、オリンピック・パラリンピックいずれの大会で活動したいかといった内容についても登録していただけます。

──ロンドン大会では7万人の募集に対して24万人、先日の2019ラグビーW杯でも1万人の募集に対して3万8000人と多くの方が応募しました。募集人数より大幅に応募があった場合、どのように選考しますか?

傳 基本的には募集している場所や活動内容等のニーズと、応募者のニーズを「マッチング」していきますので、「選考」とは少しニュアンスが違うかなと考えています。

──どんな経験やスキルを持っていれば選ばれやすいでしょうか?

傳 9つの活動分野の中には非常にたくさんの役割があるので、特段これといったものはありませんが、スポーツボランティアの経験を持っていることは大切だと思います。例えば、スポーツ大会などでボランティアをしてみると、朝6時の集合時間に現場に行っても8時までは現場で指示がなかったり、待ち時間が数時間あったり、ということもあります。そんな時に経験者が一人でもチームにいると、指示がなくても他のボランティアと何かすることを一緒に考えたり、翌日以降は集合時間を変えるよう提案したりすることができます。そして私自身はそれが楽しみでもありました。

──リオ大会時、私のチームでもロンドン大会経験者2名がムードメーカーとなって、意見をまとめたりチームをまとめていました。他にスキルとして語学についてはいかがでしょう?

傳 語学はできないよりはできた方がいいですが、あと2年ですし、英語学習をすごくがんばるよりは「こんにちは」を10ヶ国語で言えた方がいいと思います。「この方はフランス人かな」と思ったら「ボンジュール」と話しかけてみるとか、そういうことが大事かなと。

──社会人ボランティアに期待することはありますか?

傳 実際に活動を始めていただくと、いろんな世代のボランティアがいらっしゃると思います。学生世代からすると30~40代の社会人は目指すべき存在になると思うので、話していくうちに「あ、人生こういう進み方も良いな」と思える場になるかもしれないですよね。逆にシニア世代が若者世代にとっつきづらいというような場面があったら、間に入って「色々な経験を共有しあおう」と橋渡し的な役割を担うこともできる。そんな存在になっていただけたらと思います。

「ダイバーシティ」を大切にしたい

──体力にあまり自信がない方や障害がある方もボランティアに参加することはできますか?また、参加する場合はどんな活動内容になりますか?

傳 もちろんご参加いただけます。どんな活動をしていただけるか、ではなく、どんな活動に参加したいか、という参加者の気持ちを聞き取った上で、もし活動の妨げになるものがあれば一つひとつ取り除いていきたいと考えています。

リオの事例で参考にしたいことがあるのですが、何かするときには、まずサポートが必要な人に手を挙げてもらい、その後「サポートしたい人は?」と手を挙げてもらっていたんですね。例えば研修の際、ポルトガル語ができないからサポートが必要な方がいらっしゃって、その後ポルトガル語も英語も話せるよという方が席を移動して、横で英語でサポートしてあげたりするというような。このように、ボランティア同士で助け合うという場面があったんですけど、ぜひ東京2020大会でも取り入れたいなと考えています。

古瀬 体力にあまり自信がないという方も、デスクでの受付など座って活動できるものもあります。ただし、必ずしも希望どおりの活動になるわけではないことは、あらかじめご了承ください。大会ボランティアの魅力の一つとして、いろんな方に出会えることだと思います。東京2020大会では障害の有無や国籍、世代などを問わずいろんな方にご参加いただきたいというコンセプトもあります。それがオリンピック・パラリンピックのダイバーシティですし、ボランティア活動を行う上で、ダイバーシティに対する理解は非常に大切な要素だと考えています。

──オリンピックとパラリンピックのボランティア活動の違いはありますか?

傳 特にないと思います。競技が変わることによる違いはあるかもしれませんが、役割として特別異なるといったことはないですね。

──ボランティアの待遇面についてお聞かせいただけますか?

傳 活動に当たりお渡しする物品等として、オリジナルデザインのユニフォーム(キャップ、ジャケット、シャツ、パンツ、シューズ、バッグ等)、活動中の飲食、ボランティア活動向けの保険や、滞在先から活動場所までの交通費相当として1日当たり1,000円分をプリペイドカード等で支給します。カードは、東京2020大会オリジナルデザインにし、参加いただいた方の思い出に残るようなものにしたいと考えています。シャツやパンツは一人につき複数枚を用意する予定です。ユニフォームを来たボランティアが大会当日に東京を始めとした会場に繰り出す瞬間は「いよいよオリンピックが始まる!」と街中にワクワクが伝わる瞬間です。リオでも大会開催数日前に街中が一気にイエローとグリーンに彩られ、いよいよ始まるんだなと思いました。ボランティアの方にユニフォームをお渡しする理由は、一緒に東京大会を創るだけでなく、街を盛り上げていく意味合いもあり、私たちもとても楽しみにしています。もちろん、ユニフォームは活動後、記念にお持ち帰りいただけます。

ネガティブな反応もあるが、地道に活動していく

──2020大会に向けて今がちょうど2年前になりますが、ボランティア募集に関してネガティブな反応もあるようです。

傳 ネガティブな反応も拝見しています。ただ、実際に応募促進活動をして企業、大学、自治体のイベント等で直接お話をすると、とてもポジティブな反応で「ぜひボランティア参加したい」という方が多い印象です。私たちとしては多くの方々に真摯にアプローチしていきたいのと、正しい情報を伝え理解していただけるよう、地道に行動していきたいと考えています。ボランティアを強制するようなことは絶対にありません。楽しいことだけではなく、大変なことも勿論あると思います。みなさまに正しい理解を持っていただけるように、そして大会ボランティアとして活動したい方に応募いただけるように丁寧に活動を続けていくことに尽きると思います。

──ボランティアが担う2020大会のその後についてはどうお考えでしょうか?

古瀬 その後も地元の大会などでボランティアに参加し、ライフワークの一つとして続けてもらえるよう東京2020大会のボランティアを経験していただければと思います。将来的にボランティア文化がレガシーとして残っていければいいですよね。

傳 ボランティアで経験したことは、他のボランティア活動だけでなく、家庭や職場、お子さんの学校、自治体で活かされることも多いと思いますので、ぜひいろんなことを経験していただければと思います。

──最後にボランティアに興味をお持ちの方に一言お願いできますか?

 冒頭にもお伝えしましたが「一緒に大会を成功させてみませんか?」

(2018年8月 取材・文:新条正恵)


▼ライタープロフィール

新条正恵 
8ヶ国語を話すマルチリンガル、リオ大会通訳ボランティア。
外資系銀行ヴァイスプレジデント職を経て2014年に独立。独自ノウハウで開催する講座からは多くのバイリンガルを輩出。プライベートでは小学生の頃よりさまざまなボランティアに参加。仕事を休み参加したリオ大会にて通訳ボランティアとして活動した自身の経験と、3000種類もあると言われるボランティアについて現地で見聞きした内容を、講演や執筆活動を通し広く発信している。


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