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東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2017.10.28

「キャプテン翼」高橋陽一さんに聞くブラインドサッカーの魅力

(C)高橋陽一/集英社

デビュー作の『キャプテン翼』でサッカー界に大きな影響を与えた漫画家・高橋陽一さん。「もっと多くの人に見てもらいたい」と考え次に取り組むのは、ブラインドサッカーです。
この競技の魅力や、東京2020オリンピック・パラリンピックへの思いをお聞きしました。

──高橋先生は、いま青年漫画雑誌『グランドジャンプ』で連載中の『キャプテン翼 ライジングサン』で、オリンピックの金メダルを目指すU-23日本代表を描かれています。サッカー界ではFIFAワールドカップが最高峰の大会ですが、やはりオリンピックにも強い思い入れがありますか?

高橋 やはり、スポーツ界では最大の祭典ですからね。どんな競技のアスリートも、子供の頃から誰もが一度は憧れる舞台ではないでしょうか。だから、それを目指す翼たちの姿を描きたいと思いました。もちろん、ひとりのスポーツ・ファンとしても、オリンピックは大好きですね。とくに柔道、レスリング、体操、水泳など、日本がメダルを取れそうな競技は注目しています。

──ご自身の最初のオリンピックの記憶はどの大会ですか?

高橋 1964年の東京オリンピックは、親から「マラソンを一緒に見に行った」と聞かされてはいるんですが、まだ4歳だったので覚えていないんです。少年時代にテレビで見たオリンピックで強く印象に残っているのは、松平康隆監督の率いる男子バレーボールチームが金メダルを取った1972年のミュンヘン大会。とくに準決勝でブルガリアに大逆転勝ちしたときは興奮しましたね。あのときは大会前に『ミュンヘンへの道』というアニメドキュメント番組が放送されていて、それを見て予習していました。

──2020年の東京大会には、どんなことを期待されますか?

高橋 自国開催なので、日本選手たちがメダルを取るシーンをたくさん見たいですね。でもそれだけではなく、世界中から日本に来られる方々に良い印象を持って帰っていただきたいです。僕もあちこちの国際大会に行くたびに楽しませてもらっているので、東京での大会を楽しんでもらいたい。

──海外のオリンピックも現地でご覧になったことがありますよね?

高橋 1996年のアトランタ大会と、2000年のシドニー大会は見に行きました。でも、どちらもサッカーの試合しか見ていないんですよ。サッカーは開催都市から離れたところで試合をするので、あんまり「オリンピックを見た」という実感がないんですよね(苦笑)。その意味で、東京大会はサッカー以外の競技を生で見られるのが楽しみです。

──どんな競技をご覧になりたいですか?

高橋 陸上の100メートルは、いったいどれぐらい速いのかを現場で味わってみたいですね。きっと、生で見たらテレビとはまったく違う驚きがあると思うんです。「世界で一番速い人間を決める」というオリンピックの象徴みたいな種目でもありますから、ぜひ見たいと思います。日本選手も、このあいだ桐生祥秀選手がついに9秒台を出したので、2020年までにますます記録が伸びるでしょう。期待しています。

──他の競技で注目している日本選手はいますか?

高橋 実は僕の仕事場には卓球台がありまして、よくスタッフとプレーしていることもあって、オリンピックでも日本の卓球選手の活躍を楽しみにしてます。張本智和選手とか、まだ中学生なのにエースの水谷隼選手に勝ったりして、本当にすごいですよね。それから、野球とソフトボールが復活するのは、やっぱりうれしいですね。東京オリンピックの間はプロ野球のペナントレースも休みになるそうなので、強い代表チームが作れるのではないでしょうか。シカゴ・カブスの上原浩治投手が「五輪で投げたい」と言ったという話も聞きました。実現するかどうかはわかりませんが、母国でのオリンピックを大事に考えてくれているようで、頼もしく感じます。あと、カヌーやアーチェリー、フェンシングのように、それまであまり一般には広く知られていなかった競技で突如として日本選手がメダリストになるのも、オリンピックの楽しみのひとつです。

──サッカーはどうでしょう。

高橋 サッカーは1968年のメキシコ大会以来、メダルを取ってません。ホームでの戦いですから、男子には何とか表彰台を目指してほしいです。なでしこも、最近はやや人気に陰りが見えていますが、U-17やU-20の代表が国際大会で良い結果を出しているので、その世代がうまく成長していけば、金メダルを狙えるんじゃないかと期待してます。なでしこは女子ワールドカップでは優勝を果たしましたが、女子サッカーの最高峰の大会はオリンピックなので、ぜひ金メダルを取ってほしいですね。

──ところで高橋先生は今度、パラリンピック競技のブラインドサッカー(競技名は5人制サッカー)を題材にした漫画をお描きになるそうですね。パラリンピックには以前から興味をお持ちだったのですか?

高橋 オリンピックの流れで、車いすバスケや車いすテニスなどに興味を持って、テレビ中継を見ていました。車いすテニスのメダリストの国枝慎吾選手と対談させていただいたこともあります。障害者であることを感じさせない、普通のトップアスリートという印象でしたね。

──ブラインドサッカーを知ったのはいつですか?

高橋 10年ほど前だと思います。日本代表の試合を見たのは、3年前に国立代々木競技場で開催された世界選手権大会が最初でした。想像していた以上に激しいし、スピードも速いので驚きましたね。普通なら、衝突するのが怖くて走れないと思うんですよ。ところが選手たちは、まったく怖がるそぶりを見せずに戦っている。それがすごいと思いました。それこそまぎれもない「アスリート」で、障害があることなど感じさせません。だから、フットサルがサッカーの一種であるのと同じ感覚で、ブラインドサッカーも単なるサッカーの一種として楽しめるんです。

──ブラインドサッカー独特の魅力はどんなところでしょう。

高橋 もちろん、まずは「見えないのにこんなことができるのか!」という驚きが大きいのですが、面白いのは、GKだけは目の見える選手がやること。障害者と健常者がひとつのチームで一緒にプレーする、数少ないパラスポーツだと思います。僕たちの社会も障害者と健常者が一緒に暮らしているわけですが、日常的に接点のある人はあまり多くありません。それがスポーツの中で実現しているのが素晴らしい。障害者と健常者の関わり方を象徴するようなスポーツだと思います。

──転がると音の鳴る特別なボールを使うんですよね?

高橋 はい。それ以外にも、監督やガイドからの声の指示など、選手にとっては音が大切なので、観客はなるべく静かに見守らなければいけません。これも健常者のサッカーとは大きく違いますよね。でも、だからこそ、見ているほうも試合中はすごく集中します。ゴールが決まったときは大声で叫んでいいので、そのギャップがより盛り上がりを感じさせてくれるんです。選手たちは、その歓声で自分のシュートが決まったことを知るそうです。

──新しい作品の中では、『キャプテン翼』に出てくるような必殺技も登場するんですか?

高橋 それは考えています。現実にはできそうもないプレーもできるのが、漫画の魅力のひとつですからね。ブラインドサッカーでは浮き球をボレーでキックするのがとても難しいのですが、そういうプレーを描くことで、ブラインドサッカーという競技の可能性を広げることができたらうれしいです。

──オリンピックと比べると、どうしてもパラリンピックは注目度が低くなりがちですが、世間の関心を高める上でも高橋先生の漫画は大きな力になると思います。

高橋 そうなるといいですね。僕が最初に『キャプテン翼』を描き始めた頃も、日本ではサッカーの注目度は低かった。当時はプロのリーグもありませんでしたし。でも僕はサッカーが好きだったので、人気がないのが不思議でした。「こんなに面白いんだから、もっとみんなに見てほしい」という思いで、あの作品を始めたんです。ブラインドサッカーを描くのも、その時と似た気持ちですね。自分が見て面白いと思ったので、もっと多くの人々にこのサッカーを見てもらいたい。また、ブラインドサッカーはパラリンピックの中でも花形競技のひとつなので、このサッカーが盛り上がれば、東京パラリンピック全体が盛り上がるでしょう。そのために、僕の作品が少しでも貢献できればうれしいですね。

(2017年10月 取材:岩本義弘 構成・文:岡田仁志 撮影:花井智子)

<プロフィール>
高橋陽一(たかはし・よういち)
1960年東京都葛飾区生まれ。漫画家。80年のデビュー作『キャプテン翼』は日本にサッカーブームを巻き起こし、現在は世界中でアニメがオンエアされる世界的コンテンツとなった。翼たちの五輪での金メダルに向けた挑戦は集英社『グランドジャンプ』の『キャプテン翼 ライジングサン』にて連載中。今年6月にシリーズ通巻100巻を達成。


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