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東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2019.01.15

ボランティア活動を経営戦略へとつなげられるか 「東京2020パートナー企業×ボラサポ交流会」を始めた背景

一般財団法人日本財団ボランティアサポートセンター(以下、ボラサポ)は、2018年7月から東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)のパートナー企業(=スポンサー企業)と連携し、東京2020大会ボランティアのサポートを通じた大会の成功と2020年以降の企業および社会におけるボランティア文化の醸成を目的に、「東京2020パートナー企業×ボラサポ交流会」を実施している。

ボラサポは2017年6月、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、東京2020大会組織委員会)と日本財団が締結したボランティアの連携・協力に関する協定に基づき、当該協力に係る事業を実施する団体として設立された。主な活動は大きく分けて二つ。一つは東京2020大会におけるボランティアの育成とサポートだ。日本財団がこれまでに培ってきたボランティア運営に関するノウハウや経験、ネットワークを集結させ、東京2020大会組織委員会と連携しながら、大会ボランティアにおける研修テキストの制作や講師育成などを行うほか、各開催都市における都市ボランティアについても同様のサポートなどを行う。もう一つはボランティア文化の醸成で、東京2020大会において11万人を超える方々がボランティアに参加することを一過性で終わらせてしまうのではなく、大会終了後にも日常的にさまざまな分野でボランティア活動に参加できるような社会を目指している。

こうした活動の一環として、2018年7月より、前出の「東京2020パートナー企業×ボラサポ交流会」が実施されている。同交流会を始めた背景を、ボラサポ事業部の村上紘一氏はこう話す。

12月に開催された第4回東京2020パートナー企業×ボラサポ交流会の様子(写真提供:一般財団法人日本財団ボランティアサポートセンター)

「近年では、企業においても社員が積極的にさまざまなボランティア活動へと参加することを推進、支援する事例が増えており、東京2020大会についてもパートナー企業が大会ボランティアを積極的にサポートしています。パートナー企業として東京2020大会を成功させることに協力するというだけではなく、いかにして自社の企業価値を向上させ本業であるビジネスの収益へとつなげていくために"ボランティア活動"を活用していくのか。こうしたテーマについてパートナー企業の皆さまと議論、検討を行うことによって、ボランティア文化の醸成につなげていきたいと考え、交流会を実施しております」

村上氏は、企業による"ボランティア活動"の活用には"CSV"(Creating Shared Value/共通価値の創造)という考え方がカギになると話す

「これまで日本の企業においては、ボランティアを含めたCSR(Corporate Social Responsibility/企業の社会的責任)活動を慈善事業、本業の周辺活動として捉えられることが多かったように思います。ですが、昨今、外資や欧米の企業ではCSVという概念が広く浸透しております。これは、世の中にある社会課題を自社の本業を通じて解決することによって、事業価値を向上させ、競争力を確立し、中長期的な収益の拡大につなげるというもので、経営戦略の一つとして位置付けられています」

誤解を恐れずにいえば、CSVは社会貢献と利益追求を両立させる考え方だということができるだろう。近年、スポーツスポンサーシップの領域においてもCSVの概念は広がりを見せている。

「東京2020大会パートナー企業の担当者の方々とお話させていただくと、いかにしてスポンサーシップを企業の経済的価値の向上につなげるのか、東京2020大会を契機に自社にどんなレガシーを残すのか、といった課題をお持ちだと感じています。そうした中で、ボランティア活動をCSVの観点からどのようにして経営戦略へとつなげていくことができるのかをテーマに、パートナー企業の皆さまと意見交換をしているのです」

村上氏は二つのキーワードを挙げる。

「一つ目は、社員の満足度(エンゲージメント)向上です。ボランティア活動に積極的な社員ほど、自社に対する満足度が高まるという傾向があります」

デロイトの調査では、ボランティア活動に頻繁に参加した社員は自社に対する満足度や誇り、帰属意識が高まり、特にその傾向はミレニアル世代において顕著に高まるというデータがある。またサウサンプトン大学の研究では、社員がボランティア活動に取り組むことで生産性が約30%向上したという報告もある。ボランティア活動を通じて社会との関わりを強く意識するようになることで、顧客目線を身に付け、ネットワークも拡大し、積極性、自発性も高まっていく。今や欧米の企業においては優秀な社員の育成・確保のために戦略的にボランティアを活用する事例が多くなっていると村上氏は話す。

11月23日に開催されたパラスポーツ体験イベント「i enjoy ! パラスポーツパーク in ParaFes 2018」でのボランティアの様子(写真提供:一般財団法人日本財団ボランティアサポートセンター)

「二つ目は、マーケティング3.0、マーケティング4.0に示される価値主導、自己実現です。昨今、商品を買ったりサービスを利用したりする際に何を重視するのか、消費者の価値観やニーズが大きく変化しています。商品やサービスの質が高い、価格が安いといった部分で競合との差別化を図るのではなく、消費者にとって自分がその商品やサービスを購入することがどのような社会貢献へとつながるのか、さらには消費者の自己実現をどう支援し促進するのか。そういった価値観をいかに消費者と共有できるかが重要になっています。企業のボランティア活動も、そうした価値主導、自己実現のマーケティングの中に組み込んでいくことができるのではないかと考えています」

また村上氏は同交流会を、パートナー企業同士が横のつながりを持って情報交換する場にしていきたいと話す。

「これまでに各社の東京2020大会担当者と話をしてきた中で、思っていた以上に各社で似通った課題を持っていると感じました。であれば、私たちボラサポが情報提供をするよりも、実際に現場でそうした課題を感じ、さまざまな取り組みを行っている企業同士で情報を共有し合う方がいいのではないかと考え、交流会ではそうした時間を設けるようにしています」

これまで日本では社会貢献活動をビジネスに活用することに抵抗感のある風潮があった。だが、社会貢献と利益追求を両立させることは、企業が持続性を持った社会貢献活動を可能にし、さらには経済的な成長戦略につなげていくことを意味する。今後、少子高齢・人口減少により日本経済が収縮していくと考えられている中で、新たな価値観を持った経営戦略としてCSV、そしてボランティア活動の推進は大きな意味を持つだろう。


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