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東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2019.03.04

自分たちで競技を"つくる"!?「未来の渋谷の運動会」が広げる文化とその意義

自分たちで新しく競技をつくり、実際にその競技を行う「未来の渋谷の運動会」。子供から大人まで一緒になって大いに盛り上がった(写真提供:ササハタハツ運動会実行委員会)

「運動会ハッカソン」で新しい競技を「つくる」

2月17日(日)、渋谷区立笹塚小学校体育館で「未来の渋谷の運動会」(ササハタハツ運動会)が開催された。地元コミュニティや渋谷で働く人たちなどを中心におよそ90名が参加し、子供から大人まで一緒になって汗を流した。スペシャルゲストとして地元から長谷部健渋谷区長、丸山高司渋谷区議長に加えて、鈴木大地スポーツ庁長官、国際オリンピック委員会名誉委員の猪谷千春氏が参加。鈴木長官は閉会式で、「皆さんでつくり上げた運動会を、皆が笑顔で終えられて、本当に良かった。競技者のスポーツだけでなく、身近に体を動かして楽しい、うれしい、ちょっと悔しいと思えるものもスポーツ。こういった活動は我々の目指すところでもあり、来年度以降ももっともっと広げてもらいたい」と語った。

スペシャルゲストとして参加した鈴木大地スポーツ庁長官も一緒になって汗を流した(写真提供:ササハタハツ運動会実行委員会)

同イベントの特徴は、事前に行われる「運動会ハッカソン」で新しい競技を「つくる」ことにある。新しくスポーツをつくるための道具として持ち込めるものは、紙、棒、ボールなど従来の運動会で使われるものから、スマホ、コンピューター、ドローン、ミニ四駆など何でもOK。普段行われるような運動会にはないアイデアやテクノロジーを詰め込んだ競技を参加者全員でつくり、その生まれたての競技を実際に行う、それが「未来の運動会」だ。

「未来の運動会」は2014年に発足した一般社団法人運動会協会が主催し、これまでに山口、京都、大阪でも行われた。東京での開催は、昨年6月に笹塚小学校、8月に國學院大學 渋谷キャンパスでの開催に続き、今回で3回目。そのいずれにも深く関わっているのが、みずほ銀行だ。みずほ情報総研株式会社 経営・ITコンサルティング部チーフコンサルタントであり、ササハタハツ運動会実行委員会のメンバーでもある宮地英治氏はこう話す。

「スポーツ庁ではこれまでに『する』『みる』『ささえる』の軸でスポーツ振興の推進を図ってきましたが、昨年度からは新たにスポーツを『つくる』取り組みが実験的に始まっています。みずほ銀行、みずほ情報総研では、その一つである『スポーツ人口拡大に向けた官民連携プロジェクト・新たなスポーツの開発』を受託し、一般社団法人運動会協会、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科、一般社団法人超人スポーツ協会、早稲田大学スポーツビジネス研究所と連携しています。『未来の渋谷の運動会』はその事業の一環として行っています」(宮地氏)

スポーツに対する心理的なハードルを下げる

2012年に文部科学省によって策定された「スポーツ基本計画」では、「成人の週1回以上のスポーツ実施率が3人に2人(65%程度)」とすることを目標に掲げている。しかし、スポーツ庁が2017年に実施した「スポーツの実施状況等に関する世論調査」によれば、その数字は51.5%にとどまっており、「この1年間に運動・スポーツはしなかった」かつ「現在運動・スポーツはしておらず今後もするつもりがない」と答えた割合は20.7%にも上る。日本の年間医療費が40兆円を超える中、スポーツ人口の拡大を通じて健康寿命の延伸、医療費の抑制を実現することは急務となっている。

「参加者が自分たちで競技を『つくる』ことは、スポーツの概念をこれまで一般的に行われてきた競技以外にも広げることになり、スポーツに対する心理的なハードルを下げることができると考えています。人がスポーツに合わせるのではなく、スポーツが人に合わせることで、いろんな人がスポーツに参加できるようになります。実際、これまでにも"スポーツ嫌い""体育嫌い"の方たちも参加しましたが、『価値観が変わった』と。特にお子さんから、『このスポーツは楽しい』『こんなスポーツもあるんだ』と言っていただきました。スポーツをつくる文化、『スポーツ共創』が広がっていけば、"スポーツ嫌い"を減らしていくことにつながると考えています」(宮地氏)

今回開催された「未来の渋谷の運動会」では、参加者があみだくじの棒になる「人間あみだくじ」、スティックでミニ四駆を操るリレー「DASH!!ミニ四駆リレー」、NFC(近距離無線通信)タグ搭載ボールの判定に従いながらハチ公を背中で運ぶ「ハチGO」、人が走る代わりにハードルがやって来る「逆に、ハードルが来い!」といった4競技が新たにつくられた。「逆に、ハードルが来い!」にはスポーツ庁の鈴木長官も参加した。今回つくられた競技はいずれも渋谷にちなんだ"ハチ公"のぬいぐるみがゲームに取り入れられた。

スティックでミニ四駆を操るリレー「DASH!!ミニ四駆リレー」は、今回新しくつくられた競技の一つだ(写真提供:ササハタハツ運動会実行委員会)

「ハッカソンでは最初、意見を言うのを恥ずかしがって少し硬い様子もありましたが、もう次の日の運動会までには競技を完成させなければいけないこともあり、徐々にみんなが自分の意見を出し合い完成に向けて協力し合う雰囲気になっていきました。運動会では、これまでにやったことのない新しい競技になりますので、どうやったら勝てるのか、そういったチーム内での会話が活発で一体感があり、皆さん本当に笑顔で楽しんでいらっしゃったと思います」(宮地氏)

なぜ渋谷で開催されたのか

これまでに東京で開催された同イベントはいずれも渋谷区での開催となっている。その理由を、みずほ銀行 渋谷第二部であり、ササハタハツ運動会実行委員会のメンバーでもある寺敷崇弘氏はこう話す。

「みずほ銀行は2017年9月に、渋谷区と『シブヤ・ソーシャル・アクション・パートナー協定』(以下、S-SAP協定)を締結しました。地域の課題解決、新しい未来モデルの街づくりに貢献していこうということで渋谷区と一緒にさまざまな取り組みを行っており、その中の一つとしてこの『未来の運動会』を渋谷区で開催しています」(寺敷氏)
(※S-SAP協定:渋谷区が2016年より推進している公民連携制度。渋谷区内に拠点を置く企業や大学などと連携し、それぞれの企業・大学の強みを生かして地域の社会的課題を解決していくことを目的としている。現在、19企業、8大学と協定を結んでいる)

渋谷区では、「渋谷区基本構想」の健康・スポーツ分野において「思わず身体を動かしたくなる街へ。」を掲げている。渋谷区自身を"15平方キロメートルの運動場"と捉え、日常的な運動も、楽しみで行うスポーツも、全てが暮らしに溶け込むような街づくりを進めている。さらには昨年3月に策定した「渋谷区スポーツ推進計画」では、「する」「みる」「ささえる」に加え、「つながる」の観点からスポーツ政策を打ち出している。この点において、「未来の渋谷の運動会」は渋谷区が推し進めるスポーツ政策とマッチングしているといえるだろう。

「渋谷区としても笹塚、幡ヶ谷、初台エリア(ササハタハツ)を盛り上げていきたいと考えている中で、この地域に住んでいる人たちが、自分たちの地元で起こっていることに関心を持ち、少しでも街を良くしていきたいと集まり、つながっていくことが大事だと考えています。『未来の渋谷の運動会』も、地元の方たちにとって面白いと思ってもらえる取り組みの一つとして、『つながる』きっかけになれればと思います」(宮地氏)

キーワードは「生きる力を磨く」

今はまだ始まったばかりの『未来の渋谷の運動会』だが、いったいどのような未来を描いているのだろうか? みずほ銀行 渋谷第二部 部長の中川隆義氏は、前述の運動会協会が掲げる最上位概念でもある「生きる力を磨く」ことをキーワードに挙げる。

「初めて会う人たちが何十人と集まって新しい競技をつくるわけですから、やっぱり自分がああしたい、こうしたいと思っていることを言葉にして伝えないと自分の思っているようにはなりません。実際にやる際にも、初めてやる競技ですから、周りの人たちとどうやったらうまくできるんだろう、一緒にこうやってみようとコミュニケーションを取ることが大事になります。『未来の渋谷の運動会』を通じて、例えば協調性や主張性が高まるなどのコンピテンシーが向上するということになれば、それは結果的に『生きる力』が強くなったといえるでしょう。子供のうちからこうした経験をすることは、非常に大事なことではないかと考えています。実際これまで開催後にアンケートを取ってきた中で、まだまだサンプル数が少ないので確かなことは言えませんが、自分たちでは手応えを感じています」(中川氏)

渋谷にちなんでハチ公を背中で運ぶ「ハチGO」には、普段の運動会では使われないようなテクノロジーが詰め込まれている(写真提供:ササハタハツ運動会実行委員会)

さらに中川氏は、こうした社会的課題の解決を持続していくには、CSR(Corporate Social Responsibility/企業の社会的責任)ではなく、CSV(Creating Shared Value/共通価値の創造)という考え方がカギになると話す。

「社会的課題を解決するための活動はもちろん素晴らしいことではあるのですが、それだけではサステナビリティー(持続可能性)がありません。やはりそこに価値を創出し、ビジネスとしてつないでいく必要があります。渋谷区ではさらに昨年、一般社団法人 未来渋谷デザインというこれまでにない本格的な産官学民の連携組織が発足しました。あらゆる領域を超えてアイデアや才能、知識、技術を結集させた先進的な取り組みによって、社会的課題の解決を目指しながら新しい渋谷の街の未来像を具現化させていこうというもので、新しいビジネスのプラットフォームともいえる組織です。みずほ銀行ではこのビジョンに賛同して発足時より参画しています。
S-SAP協定や渋谷未来デザインでの取り組みもそうですし、これからの金融機関に求められるのは、サステナブルな社会を実現していくために、ビジネスとしてさまざまな人や組織がつながっていくネットワークをいかにつくり上げていくかということだと考えています。『未来の渋谷の運動会』も、そうしたCSVの一環でやっています。地域コミュニティの活性化、地域経済の活性化、教育、人づくりといった社会的な役割を、『未来の渋谷の運動会』を通じて担っていく。それがみずほ銀行としての新しい"社会的価値"にもなっていくと信じています」(中川氏)

CSVを端的に表現するならば、社会貢献と利益追求を両立させる考え方だということができるだろう。企業がサステナビリティーのある社会貢献活動を行い、その先にある経済的な成長戦略につなげていくことは、今後、日本経済が少子高齢化・人口減少により収縮していくと考えられている中で非常に大きな意味を持つことになる。

「未来の渋谷の運動会」がこれからどう発展していくのか、渋谷の街にどんな未来をもたらすのか、今後も注目したい。


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