ひとりひとりの2020に出会う。

2020年という、日本にとって特別な1年に向けて
スポーツを通じた絆を、
競技を支える人たちのドラマを、
世界に誇る日本の文化や芸術を、
誰もが参加できる社会貢献のあり方を、
さまざまな視点で切り取り、伝えていく。
ここでの出会いと発見を、
ひとりひとりが日本の未来を考えるきっかけに。
それが、“みんなの2020”です。

東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2019.03.09

「創業するなら埼玉」を合言葉に スポーツに焦点を当てたスタートアップ支援プログラムの背景

埼玉県は2018年度より、スポーツ分野でのビジネスアイデアの事業化やその事業の拡大を目指す若者を支援するため、イノベーションリーダーズ育成プログラムを実施している。国の地方創生推進交付金を活用し、デロイトトーマツグループが事業を受託、運営を行っている。

同プログラムでは、埼玉県内のプロスポーツクラブ・球団の浦和レッズ、大宮アルディージャ(以上、Jリーグ)、埼玉西武ライオンズ(プロ野球)と連携し、実際に各クラブ・球団や地域が抱える課題に対するビジネスプランを公募した。対象はおおむね30代まで。有望なプランやアイデアを有するスタートアップ企業・個人が選抜され、先輩起業家や専門家による助言や伴走支援などを受けながら、実際にビジネスプランを実行することになる。

イノベーションリーダーズ育成プログラムを始めた背景について、埼玉県産業労働部産業支援課創業支援担当の尾崎範子氏はこう話す。

「日本政府は官民戦略プロジェクトの一つとして『スポーツの成長産業化』を掲げ、2015年に5.5兆円だったスポーツ産業の市場規模を、2025年には15.2兆円へと拡大させることを目標としています。また埼玉県には、レッズ、アルディージャ、ライオンズといった『埼玉県が誇るプロスポーツチーム』があり、スポーツ少年団の登録者数は全国で1位、スポーツの年間行動者率(10歳以上人口に占める過去1年間に該当する種類の活動を行った人の割合)は全国で2位と、もともとスポーツが盛んな地域です。さらに、今年はラグビーワールドカップが、来年にはオリンピック・パラリンピックが埼玉でも開催され、スポーツ産業が大きく飛躍するチャンスでもあります。そうした背景から、スポーツ関連事業に焦点を当てたスタートアップ支援プログラムは、埼玉県に非常に向いているのではないかと考えています」

昨年8月に開催されたキックオフイベントにはJリーグの村井満チェアマンが「Jリーグをつかおう!」をテーマに基調講演を行った(写真提供:埼玉県)

また尾崎氏は、スポーツの視点とは別に、産業振興の観点からも同プログラムの意義を口にする。

「一般的に、地域経済の活性化、持続的な成長を考えていく際に、新しい産業を育成していくことが必要になります。埼玉県では『創業するなら埼玉』を合言葉に、2004年度には創業・ベンチャー支援センター埼玉を設置して起業家を支援するなど、創業を促進する施策を継続的に行っています。全国的に見て、特に若い方の起業希望者が減少している傾向にありますが、今後の日本経済を担っていくような強い産業を生み出すためには、やはり若い人が起業を志していくことが非常に重要になると考えています。埼玉県としても、創業の魅力をどう伝えていくかという課題がある中で、スポーツと掛け合わせてみるのが面白いのではないかと考えたのです」

昨年8月に大宮ソニックシティでキックオフイベントが開催され、そこで発表されたテーマをもとに応募のあった70組から、書類審査による1次選考で43組を選出。9~11月には楽天大学学長の仲山進也氏や先輩起業家らによる4度のワークショップなどを経てビジネスプランをブラッシュアップしていった。

「創業を促進するにあたって、創業者同士、もしくは先輩起業家とのコミュニティーをつくることが大切になると考えています。起業家の方は事業について相談する相手がいないこともあるなど、どうしても孤独を感じてしまうところがあります。楽天大学の仲山さんは、そうしたコミュニティーづくりに長けていることや、これまでに楽天の出店企業を大きく成長させてきたことで知られていることもあり、ワークショップの講師を務めていただきました。予定されたインプットを行う座学の講座というよりは、グループワークをメインに実践状況に応じて必要なテーマを臨機応変に行いました。そうした中から実際に参加者同士で一緒にビジネスをするといった話も出てくるなど横のつながりが生まれていったことはうれしい動きでしたね」

楽天大学の仲山進也学長によるワークショップはグループワークを中心に行われた(写真提供:埼玉県)

今年1月の最終選考会で10組がプレゼンテーションを行い、4組が伴走支援対象者として選出された。

1つ目は、codience(コーディエンス)代表の大石懐子氏による「スポーツ×STEM(Science, Technology, Engineering & Mathematics)教育」。例えば「野球の変化球はなぜこのように曲がるのか」を科学的に研究するなど、創造性、自発性、問題解決力が磨かれるといわれるSTEM教育にスポーツを掛け合わせることでさらなる相乗効果を狙い、スポーツ技術の向上にも生かしていくというプランだ。子供が新たにスポーツや科学に興味を持つきっかけとしても期待される。

2つ目は、株式会社Sportip代表取締役の高久侑也氏による「AIによるトレーニングコーチ」。例えば野球の投球フォームをスマホで撮影し、AIで解析・分析することによってフォームの修正やトレーニング方法の助言をするといったアプリの開発を行うプランだ。プロやトップアスリートのように専門のコーチを付けられないアマチュアアスリートでも、アプリを使用することによっていつでもどこでも誰でも個人最適化されたトレーニングのアドバイスを受けられるようになることで、技術の向上はもちろん身体的な負担を軽減することが期待される。

3つ目は、タイムカプセル株式会社代表取締役の相澤謙一郎氏による「スポーツメディアクリエイターの育成」。プロスポーツチーム認定の広報としてファンに活動してもらい、さらにファンを増やしていくというプランだ。現状、動画共有サービスにはファンが撮影した試合動画が投稿されていることが見受けられるが、こうした行動は実際には著作権の観点から問題となってしまうことがある。しかしそうした人たちは熱心なファンでもありチームにとって財産でもあることから、研修・トレーニングを通じて公式認定(スポーツメディアクリエイター)を付与し、さらには普段なら入ることのできないエリアでの撮影も認めるといった特典を付けていくことによってインセンティブを高めていくプランとなっている。

最後は、playground株式会社の下郷勝啓氏による「ファンと地域をつなげるコネクテッドスタジアムの実現」。「MOALA」というWebプラットフォームを導入するもので、主力機能の電子発券サービス「Quick Ticket by MOALA」はサービス開始時から西武ライオンズに導入されている。利用者はLINEやメールなどで電子チケットを発券し、スマホ画面に表示するだけで入場できるだけでなく、試合中の情報やイベント、さらには近隣のお店のクーポンや地域の情報を受信できる。チーム、ファン、地域の継続的なコミュニケーションを図れるのがメリットとなる。

今年1月の最終選考会で4組の伴走支援対象者が選出された(写真提供:埼玉県)

「スポーツは今後産業として大きく成長していくことが期待される分野であると同時に、他の産業の価値を高めていくものでもあると思います。スポーツの持つ発信力であったり、たくさんの人の情熱をかき立てることであったり、スポーツ×ITやスポーツ×教育など、スポーツと他の産業を掛け合わせていくことでもっともっと地域経済が活性化していくという可能性があると考えています。埼玉県にはもともとスポーツをすることも、見ることも、地域の文化として根付いていましたが、そこにもう一つ、『スポーツで創業する』ことが加わればと。埼玉県が、スポーツを活用した事業を通じて自分の夢をかなえる、より楽しい、より幸せな人生を送れる場所となれるようにという気持ちで支援を続けていければと考えています」


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