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2020年という、日本にとって特別な1年に向けて
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ここでの出会いと発見を、
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東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2019.04.05

文字をつくる会社がオリンピックをサポート? フォントベンダーのモリサワが東京2020大会に果たす役割

オリンピック・パラリンピックを支えるスポンサーは多岐にわたるが、「フォントデザイン&開発サービス」というカテゴリで東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会オフィシャルサポーター契約を締結したのが、日本を代表するフォントベンダーである株式会社モリサワだ。
フォントとは、本や雑誌などの印刷物、スマホやゲーム機などの電子機器類のディスプレイ表示などに用いられる、「デザインに統一性がある一そろいの文字」のこと。普段あまり意識することはないかもしれないが、私たちの生活のそこかしこにフォントは存在している。
「フォント」がオリンピック・パラリンピックとどう関係あるのか? 株式会社モリサワの広報担当者に話を聞いた。

文字をつくる会社がオリンピックをサポート?

「一番大きな役割は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会専用の『東京2020公式フォント』を開発、提供させていただいたことです」

モリサワが東京2020大会に果たす役割についてたずねると、経営戦略部広報宣伝課の河野博史さんは「大会専用のフォント開発」という耳馴染みのないミッションを挙げた。

「大会専用の『東京2020公式フォント』は、情報が正しく迅速に伝わるよう支援することで、大会の成功とスポーツの発展に貢献することを目的としています。例えば、多種多様な印刷物や表示物など、さまざまな使用場面があると思います。そして、デザインにおけるフォントという役割では、東京2020大会のブランドを構築する重要な要素でもあります。実は過去の大会でも、その大会専用のフォントは制作、使用されていて、今大会が初めてということではありません。しかし、フォントベンダーがオリンピック・パラリンピックのカテゴリースポンサーになり、大会専用のフォント提供を発表するのはおそらく初めてではないでしょうか」

情報を伝達する有力な手段である文字、そして文字情報を正しくわかりやすく伝えるフォントは、たしかにオリンピックになくてはならない存在だ。

ではなぜ、モリサワはオリンピック・パラリンピックのオフィシャルサポーターに名乗りを上げたのだろう。

「スポーツとの直接的な関わりで言えば、2015年から私たちは公益財団法人日本障がい者スポーツ協会(以下、JPSA)とオフィシャルパートナー契約をしています。これは、JPSAの『スポーツの価値をだれもが享受できる社会の実現』という活動趣旨に共感したからというのが一番大きな理由です。モリサワは『文字を通じて社会に貢献する』という経営理念を掲げているのですが、こうした取り組みを通じて共生社会の実現を進めていくお手伝いができればと考えています」

モリサワの本業であるフォント開発においても、誰もが等しく十分な社会参加を果たし、相互に支え合う共生社会の実現を目指す事業活動を行っている。その代表例が、「文字のかたちがわかりやすいこと」「読みまちがえにくいこと」「文章が読みやすいこと」をコンセプトにしたUD(ユニバーサルデザイン)フォントの研究、開発だ。

ユニバーサルデザインで誰もが正しく情報を受け取れる社会を

「誰もが情報を正確に入手するためには、その情報を伝達するための文字が読みやすく、間違えにくいものである必要があります。UDフォントでは、たとえば『ブ』と『プ』のような濁音、半濁音の判別を容易にする工夫や、線がつぶれて見えてしまうような複雑な文字をできるだけシンプルに識別しやすくしたり、美しさを維持しながら読みやすさを担保する工夫が施されています」

提供:株式会社モリサワ

私たちの生活を見渡しても、雑誌や書籍、新聞、広報誌などの印刷物はもちろん、Webやメールなどのシステムや、いまや多くの人の情報ツールでもあるスマホですら文字なくしては成り立たない。フォントのユニバーサルデザイン化は、すでに当たり前のように進み、UDフォントも着実に普及しているのだという。

「UDフォントは、すでにさまざまな分野で実際に使用されています。印刷物に限らず電子機器の表示に使われたり、子どもたちに人気のゲーム機器の表示フォントに採用されたりもしています。子どもたちということで言えば、UDデジタル教科書体は、ICT教育の現場に効果的な学習指導要領に準拠したUDフォントです。書き方の方向や点・ハライの形状を保ちながら、太さの強弱を抑えて、ロービジョン(弱視)、ディスレクシア(読み書き障害)のある方にも配慮してデザインされています」

ロービジョンや学習障害の一つであるディスレクシアは、近年その存在が一般的に知られるようになってきたが、UDデジタル教科書体をはじめとするUDフォントは、こうした「読みづらさ」を抱えた人たちにも大きなメリットをもたらしている。フォントの設計、デザインに当たっては、第三者の外部学術機関のエビデンスを元に検証を重ね、「読みやすさ」を科学的に実現している。

誰もが読みやすい文字の開発をして、誰もが情報を正しく受け取れる共生社会を実現する。JPSAとのオフィシャルパートナー契約からはじまったモリサワの活動は、より多くの人が文字を通じた情報を受け取る機会のある東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会へとつながっていった。

提供:株式会社モリサワ

東京オリンピックとモリサワの"浅からぬ縁"

世界のスポーツの祭典であるオリンピック期間中には世界中の人たちが選手として、そして観客として東京を訪れる。すでに世界的な観光都市が多く存在する日本でも、外国語フォントの読みやすさ、わかりやすさも求められている。

「アルファベットはもちろん、中国の繁体字・簡体字、ハングル、ラテン文字やタイ文字、アラビア文字などさまざまなフォントのUD化も進んでいます」

UDフォントの多言語化については、経営戦略部広報宣伝課の澤村明子さんが説明してくれた。

「最近ではタイからの観光客が増えていることもあって、タイ文字の需要も高まっていますね。他言語のフォント制作は現地のデザイナーと協業し、読みやすさについて専門的見地からの検証やユーザーアンケートなどを実施しています」

言語、文字が違えば読まれ方も読みやすさも変わってくる。より大きな意味で「すべての人に向けた」情報伝達が求められるオリンピック・パラリンピックに向けてフォントが果たす役割は決して小さくない。

「実はモリサワと東京オリンピックには前回1964年の開催時から浅からぬ縁があるんです」

モリサワとオリンピックとの関わりについて話してくれたのは、東京2020推進室リーダーの白石歩さん。

「1964年の東京オリンピックをテレビ放送する際、画面にテロップを入れたいという要請がNHKからあったそうです。かなり急な要請で、当時の技術者は大変な思いをしたようですが(笑)なんとか、テレビ放送用のテロップ専用写真植字機『MD-T型』が開発されました」

東京オリンピックが変えたものは数多くあるが、テレビ画面に文字を載せるテロップの技術もこのときから広まり、MD-T型はテロッパーのスタンダードとして各放送局に導入されることになる。

「さらにこれは間接的なつながりですけど、モリサワのコーポレートロゴはあの有名な1964年東京オリンピックの第1号ポスターをデザインした亀倉雄策氏にデザインしていただいたものなんです」

いわば黒子として関わった1964年の東京オリンピックと、オフィシャルパートナーとして関わる2020東京オリンピック。二つのオリンピックから社会のフォントや文字に対する考え方、価値観の変化も感じられる。

「今回、フォントベンダーとして初めてオフィシャルサポーター契約をさせていただきました。これまでも大会専用のフォントやモリサワの関わったテロップのようにフォントというものがオリンピックに必要とされてきた歴史はありましたが、オフィシャルサポーターとして正式にフォントデザイン&開発サービスのカテゴリを担わせていただくことは、業界にとってもエポックメイキングな出来事ではないかと思っています」

今回話を聞いたお三方は、異口同音にフォントとオリンピック・パラリンピックムーブメントを通じた共生社会と文字の関わりについて語ってくれた。

「1964年大会との関わり、亀倉先生とのつながりなど、私たちは東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に特別な縁を感じているんです」

2020年には、こうした思いで開発されたモリサワの『東京2020公式フォント』が、オリンピック・パラリンピック会場で活躍し、私たちに正しくわかりやすい情報伝達という恩恵を与えてくれるはずだ。


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