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東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2019.04.11

「無線LANや電源はどこ?」ピクトグラムで五輪観光客を"おもてなし"

オリンピック開催までちょうど500日となった3月12日、2020年東京オリンピック・パラリンピック組織委員会から東京2020オリンピックスポーツピクトグラムが発表された。スポーツピクトグラムは、実施される競技を分かりやすくアイコン化したものだが、「ピクトグラム」自体は、オリンピックだけでなく、私たちの生活を便利にしてくれる頼りになるツールだ。

東京2020オリンピック 500日前イベント スポーツピクトグラム発表会(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

そもそもピクトグラムって何?

ピクトグラムとは、「言葉に依存せず見るだけで場所や施設などの案内を可能にする案内用図記号」のこと。スポーツピクトグラムでは、競技を象徴するアクションなどが図示されることで「水泳」「空手」などの文字による説明がなくても競技を判別することができる。

日常生活でも、「トイレ」や「非常口」など一目見ればその施設や場所がどこにあるか分かる"おなじみ"のピクトグラムがある。「ピクトグラム」と聞くと、「一体どんなものだろう?」と身構えてしまうが、伝えたい情報を図式化して分かりやすく伝えるという手法はさまざまなシーンで用いられている。

日本でピクトグラムが使われるようになったきっかけは、1964年の前回の東京オリンピックだったといわれる。スポーツピクトグラムの他にも、東京オリンピックのデザイン専門委員会委員長だったデザイナーの勝見勝氏が中心になって「外国からやって来る人たちに向けた案内表示シンボル」がつくられた。競技に使う20種と、シャワーや食堂など案内に使う39種のピクトグラムがこのとき誕生し、トイレのピクトグラムはその後、世界中に広まったといわれている。

東京オリンピックに採用された競技ピクトグラムは世界中のアスリートが集うスポーツの祭典・オリンピックのコンセプトとも相まって以降大会ごとに作成されるようになった。

外国人観光客に分かりやすい表示を目指して改正

2020年に世界から多くの来訪者を迎えるであろう日本でピクトグラムに再び注目が集まっている。1964年のオリンピックを経て1980年代には広く使用されるようになっていたピクトグラムは、サッカーのワールドカップが開催された2002年を契機に日本工業規格(JIS)統一規格となっている。ざっとピクトグラムの概要と日本における歴史を見てきたが、ここからは東京2020オリンピック・パラリンピックに向けたピクトグラムの変化について見ていこう。

2017年7月20日、日本人だけでなく外国人観光客にもより分かりやすい案内用図記号とすることを目的に、7種類のピクトグラムの変更、15種類のピクトグラムとヘルプマークの追加という改正が行われた。

経済産業省の黒田浩司国際標準課長は、改正のポイントについてこう話す。
「2002年のワールドカップがJIS規格制定のきっかけになったように、今回の改正も多くの外国人の方がいらっしゃることを踏まえ、なるべく分かりやすく、誤解のないような案内用図記号、ピクトグラムにしていこうということを念頭に、各業界団体の要望、有識者の丁寧な議論やアンケート調査などを重ねてきました。いずれにしても大きなポイントになるのは、外国人の方がいらっしゃったときに混乱を招かないような国際的な整合性ということになります」

経済産業省発表資料 案内用図記号のJIS 改正より


言語ほどの大きな違いはなくても、国によってピクトグラムが使用されてきた経緯や歴史、図から受ける印象などに差がある。これを統一する規格として国際標準化機構(ISO)規格がある。2年前に行われた改正は、日本のJIS規格と国際的に標準とされているISO規格の整合性を取る改正でもある。

「例えば駐車場を表すピクトグラムですが、従来の『P』だけでは、Parking(パーキング)を表すPだという認識が誰にでもすぐできるというわけではありませんでした。ここに車のイメージを追加することでより分かりやすく、誤解のないような形になりました。変更に関してはおおむね分かりやすさとISO規格との整合性を意識したものになっています」

この中で議論を呼んだのが、温泉マークだ。私たち日本人にはおなじみの温泉マークだが、外国人が一目見てすぐに温泉を連想できるかという視点も重要だった。
「すでに定着しているものに関しましては、さまざまな影響を考慮する必要があります。検討も慎重に行いましたが、2年の移行期間を設けるなどの措置も加えています。ただ、誤解のないようお伝えしておきたいのは、JIS規格が改正になったからといって、これまでのピクトグラムを使用しても罰せられないということです。慣れや認知度の問題も重要ですし、社会の変化とともにそれもまた変化していくことですので、その都度しっかり議論していければと思っています」

JIS規格はあくまでも規格。当然利用者のための規格であるべきという本筋は変わらないが、不便や不都合なものがあればその都度見直していくのが本来の姿だ。ピクトグラムがどう使われるかは、これを利用する私たち生活者にも大きく関係している。

時代の変化によって新たなピクトグラムも登場

経済産業省発表資料 案内用図記号のJIS 改正より


社会の在り方が変化すれば必要とされるものが変わる。それを象徴するように、新たに加えられた15種類のピクトグラムの中に、一昔前には影も形もなかった無線LANや外出先で必要とすることはほとんどなかった充電コーナーの表示がある。

日本を訪れる外国人の多くは、時には地図代わり、時には観光ガイド、レストランガイド代わりにスマートフォンを片手に東京の街を散策するだろう。無線LANや充電コーナーはもはやライフラインの一つといっても大げさではなくなっている。こうした生活の変化、テクノロジーの発達によって必要とされるピクトグラムも変化し、ニーズに合わせて追加されていく。

2019年2月には、より分かりやすいトイレの表示を目指して、洋風便器、和風便器、温水洗浄便器の3種類のピクトグラムがJIS規格に追加された。従来の男女が並ぶピクトグラムに加えて便座の種類を表すことで、外国人にとってもより分かりやすい表示にしようというのが狙いだ。

政府は東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年の訪日外国人旅行者数に4000万人という目標を掲げている。東京だけでなく日本中に外国人が訪れる2020年、ピクトグラムは言語を介さない「おもてなし」として有効活用されるはずだ。


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