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東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2019.07.03

東京2020オリンピックが農業の持続可能性を切り拓く オリンピアンが口にする「GAP認証」食材とは?

提供:グランイート銀座

"食トレ"なる言葉があるように、アスリートにとって、食事はコンディションやパフォーマンスを維持するための重要な要素でもある。東京2020オリンピック・パラリンピックに出場する選手たちは何を食べるのか? メニューの詳細は知り得ないが、選手村で提供される食材には、ある基準が設けられている。

私たちの生活にも無関係ではない、オリンピック・パラリンピックの食材調達基準とされているGAP認証について、認定NPO法人GAP総合研究所代表理事の武田泰明氏に聞いた。

銀座でオリンピック選手と同じ"食材"を使ったメニューが食べられる?

提供:グランイート銀座

今年、3月、東京・銀座に「オリンピック・パラリンピック選手村と同じ調達基準の食材を使ったレストラン」が誕生した。選手たちが食べる「メニュー」ではなく「食材」。このレストラン、『グランイート銀座』では、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の食材調達コード、「GAP認証」を取得した食材を重量ベースで90%使用しているというのだ。

GAP認証とは一体なんだろう? グランイート銀座プロジェクト総合プロデューサーでもある前出の武田泰明氏の説明はこうだ。

「GAPとは、Good Agricultural Practice(農業生産工程管理)のことで、簡単にいえば、『良い農業のやり方』をしている農家に、それを証明する認証を与えましょうというものです」

GAP認証の指す「良い農業のやり方」とは、食品の安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理のこと。GAP認証を受けている農作物は、生産過程から環境にも配慮しているということになる。日本では知名度が低いが、世界では農作物の安全を図る基準となっていて、ロンドンオリンピックやリオデジャネイロオリンピックでも食材調達コードに採用されている。

アスリートが口にする食物は、最高のパフォーマンスを発揮するためにも、持続可能性のほかに安全、安心が問われる。東京2020オリンピック・パラリンピックで提供される食材は、農業における生産工程管理認証である「GAP認証」を取得したものに限られる。

世界中で「サステイナビリティ(持続可能性)」という言葉が盛んに使われている。大量生産、大量消費から、一人一人が持続可能性を意識する社会への転換が叫ばれているなか、オリンピック・パラリンピックでも、大会に必要な物品やサービスの調達に「持続可能性に配慮した調達コード」を定めているというわけだ。

日本では知名度が低いGAP認証

提供:グランイート銀座

「オリンピック・パラリンピックが採用するGAP認証には、日本発のASIAGAPとJGAPとドイツ発のGLOBALG.A.Pがあります。農林水産省では、この3つを合わせた取得農家数を2019年に1万3500農家にすることを目標としていますが、目標に遠く及ばないのが現状です。また同省の調査ではGAPについて「知っていた」と答えた消費者はわずかに5.4%。農家にとっても消費者にとってもまだまだ身近なものではないのが現状です」

「日本の国産農作物は安心・安全」というイメージを持っている人は多いが、実は食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の評価基準であるGAP認証取得がなかなか広がっていない現状がある。武田氏はオリンピック開催を機に、日本にGAP認証が広がる必要性を訴える。

「日本の農家の方々も一生懸命努力をされて、食の安心・安全を提供しようとされていると思うのですが、GAP認証を取得していなければ国によっては取得が輸出の条件になることもあり得ます。食の安全に関する基準においてGAP認証は、世界の共通語。日本でも多くの農家が取得することで国際競争力も高まり、細かい基準を満たすことで、日本の農業の持続可能性も広がっていくはずなんです」

グランイート銀座では、食の街・銀座で、GAP認証を取得した食材を堪能できる。メニューは季節によって変わるが、オープン時のビュッフェメニューには
・芳源マッシュルームのオイル煮 大平やさいのニンニクで風味をつけて
・農園の炊き込みご飯 岐阜県立大垣養老高校のおコメをつかって
・北海道ヴェール農場のジャガイモのロースト
・奥美濃古地鶏のから揚げ ユニオンファームのパクチーソースを添えて
・パウンドケーキ 三重県立明野高等学校の抹茶をつかって
など、安心・安全とおいしさを兼ね備えたメニューが並ぶ。

「GAP認証を取得した食材をおいしく調理してお客さんに食べていただければ、GAPの認知も高まる。オリンピック選手村と同じ食材調達基準で提供される食材という話題があるので、日本の農家の未来を消費者の方にも考えていただくきっかけになければと思っています」

農業、食の持続可能性をオリンピックのレガシーに

1964年の東京オリンピックでは、選手村で大量の食事を提供するために現在のファミリーレストランや外食チェーンで採用されている「セントラルキッチン方式」の原型が誕生したといわれている。半世紀を経て、食に対するニーズ、環境や状況は大きく変わった。

武田氏は、東京2020オリンピック・パラリンピックが、日本の農業、食への意識を変える転換点になる可能性に期待を込める。

「オリンピックはレガシーを遺すということも話題になりますよね。今回の東京2020オリンピックを後で振り返ったときに、あのときGAP認証が話題になって、そのことがきっかけで食の安心・安全、日本の農家の持続可能性にとって大きな転換期になったよねといわれるようなものになってほしいと思っています」

GAP認証について知り、認証を受けた食材を積極的に選ぶことで、私たち一人一人が、持続可能な社会に貢献することができる。興奮や感動を与えてくれる東京2020オリンピック・パラリンピックは、スポーツの素晴らしさだけでなく、"食"を見つめ直すきっかけも与えてくれる。


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