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東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2019.07.22

東京2020はテレワーク本格普及のきっかけ。職場の男女平等の後押しにも

写真:アフロ

今日7月22日から「テレワーク・デイズ」という政府主導のキャンペーンが始まる。2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催を前にテレワーク実施企業を増やし、大会期間中の交通混雑の解消につなげようという狙いだ。

この取り組みは、ロンドンオリンピックの際に市内企業の約8割がテレワークや休暇取得などで混雑の緩和に協力し、テレワーク普及のきっかけにもなったという成功事例を元にしている。

日本でもこれを機にテレワークが普及するとしたら、その後の私たちの働き方にはどのような変化が期待できるだろうか?

企業のテレワーク導入が進まない現状と普及のカギ

「テレワーク・デイズ」は今年で3年目の取り組みだ。初回の2017年は、オリンピック開会式予定日の7月24日を「テレワーク・デイ」とし、午前10時30分までは通勤せずにテレワークをすることを呼びかけたところ、約950団体、6.3万人が参加。翌年は7月23日~27日に7月24日を含めて2日以上のテレワークを呼びかけ、1,682団体、30.2万人が参加した。

今年は期間を拡大し、7月22日〜9月6日に5 日間以上のテレワーク実施を促している。目標は、3,000団体、延べ60 万人以上の参加だ。

以前「平成の働き方の変化(働く場所編)~30年前から行われていたテレワーク実験、それでもなくならない通勤~」に書いた通り、日本でテレワークが始まったのは1980年代で、その歴史は長い。しかし直近での導入企業は未だに全体の13.8%勤務先の制度に基づいてテレワークをしたことのある人は9.0%と、この30年でインターネットやモバイル機器などの技術革新が大きく進んだ割に、テレワークは普及していない。

企業におけるテレワークの導入状況、雇用者におけるテレワーカーの割合。それぞれ「平成29年通信利用動向調査(企業編)」「平成29年度 テレワーク人口実態調査」のデータを元に筆者が作図

導入しない企業がその理由として挙げるのは、「テレワークに適した仕事がないから」が圧倒的に多い。

テレワークを導入しておらず、導入予定もない企業の理由「平成29年通信利用動向調査(企業編)」のデータを元に筆者が作図

「適した仕事がない」という認識は、試験的にでもテレワークをやってみれば覆る可能性が高い。組織の仕事である以上100%テレワークでできる仕事は少ないだろう。しかし、業務のプロセスを細かく分けてみると、オフィスに出勤しなくてもできる仕事は意外とあるものだ。

「テレワーク・デイズ」に参加を表明している企業や団体は7月8日時点で1731団体。また、2020年東京オリンピック期間中に関しても、すでにトヨタ、リコー、レノボ・ジャパンなどが、東京勤務の社員あるいは全社員を対象に一斉テレワークを実施することを宣言している(参考:トヨタ、五輪期間中は在宅勤務 東京地域で17日間:日本経済新聞 、『19日間通勤せず』レノボジャパン社員2000人、東京五輪時テレワーク実施で - Engadget 日本版 、リコー、東京五輪開催期間に本社約2000人が一斉リモートワーク | マイナビニュース)。

オリンピックの間だけでも混雑を避けてテレワークをしようという企業が増えれば、それを機に「テレワークでできることって意外とあるんだ!」と気づく人が増え、普及に弾みがつくだろう。

令和に残された課題「仕事における男女平等」にもテレワークが寄与

働き方に関して、平成から令和に引き継がれた重要なテーマのひとつは「仕事における男女平等の実現」だ。

1986年に男女雇用機会均等法が施行されて以降、働く女性は飛躍的に増えたものの、職場における男女平等が実現しているとは言い難い。例えば平成29年においては、男性の賃金を100とすると女性の賃金は73.4と差があり、女性管理職比率は13.2%と国際的に見ても低い割合にとどまっている(以下のグラフ参照)。

男女間所定内給与格差の推移 出典:内閣府「男女共同参画白書 平成30年版」
就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(国際比較) 出典:内閣府「男女共同参画白書 平成30年版」

男女平等が進まないのは、「会社に出勤して長時間労働をする」働き方を"標準"とする考え方から脱却できないことが大きい。男性は会社にいる時間が長すぎて家庭のことには手が回らない。結果、家庭の役割を多く担うことになる女性が仕事の上では不利な立場におかれる――という構造が強固にできあがってしまっているのだ。

炎上したカネカの「パタハラ疑惑」も、「家庭のことに時間を使う社員は戦力として認められない」という価値観ゆえに起きたことかもしれない(参考:カネカ、育休明けの転勤内示は「見せしめではない」。就活クチコミサイトでは「内定辞退決めた」の書き込みも(BUSINESS INSIDER JAPAN))。

"標準"の働き方ができなければ戦力外とみなす会社は、短時間でも成果を出せるような生産性の高い人を腐らせてしまったり、非正規社員として安く使い捨てたりする。

若い労働力があり余っている時代ならそれでもよかったのだろう。でも、高齢化がますます進む今後は家族の介護に手を取られる人も増え、"標準"の働き方ができる人はどんどん減っていく。"標準"以外を排除していたら人手不足で立ち行かなくなってしまう。

この状況の打開策は、働き方の"標準"をアップデートすることだ。男女ともに、仕事以外の役割も果たしながら職場で力を発揮できる状況を作る必要がある。

しかし、単に長時間労働をやめたのでは、企業の生産競争力は落ちてしまう。そこで有効な手段となるのが、テレワークやフレックスタイム制だ。これにより「オフィスで朝から晩まで」という条件では得られなかった人材やパフォーマンスを手に入れられる。例えば、子どもの保育園の送り迎えがあるから9時-5時で会社にいるのは難しい、そんな社員も、夫婦交代でテレワークやフレックスタイムを組み合わせて働けば、フルタイム2人分の成果を出せるかもしれない。

ワークライフバランス実現のカギは「時間主権」

日本を含む世界の労働法制に影響を与えてきたILO(国際労働機関)が、今年100周年を迎えた。

100周年記念宣言の採択時の様子

6月に採択された「仕事の未来に向けたILO創立100周年記念宣言」では、技術革新、人口動態、気候変動、グローバリゼーションなどの影響で仕事の世界が大きく変わりつつある今、ILOとその加盟国がとるべき行動を挙げている。

その中には「男女平等の実現」のためのアクションも含まれている。仕事における男女格差は、日本に限らず世界の課題でもあるのだ。

今年3月の国際女性デーに合わせてILOが発行した調査報告書では、男女ともに仕事だけでなく「家族のケア」の責任を果たせるようにするべきで、そのためには「時間主権」の拡大が不可欠だとしている。

「時間主権」とは、働く人が自らの働く時間帯や長さをコントロールする権利のこと。仕事の内容や量、家庭の用事や自身の疲労度に応じて個々人が働く時間帯や長さを調整できるようにする。そうすれば、仕事の生産性を保ちつつ、他の役割との両立が可能になるというわけだ。

より自律的な働き方に向けて

テレワークの活用、フレックスタイム制などによる「時間主権」の拡大――これらを実現しようとする企業は、どのように社員を評価し、何に対して報酬を払うのかといったことを考え直す必要があるだろう。その結果、マネージャーの役割や組織構造の変革も迫られるかもしれない。

個人の側も、自由度が増える分、仕事だけでなく生活も含めて自らの生き方をデザインしていく力が求められる。

どちらも簡単なことではない。しかし、個人がやりがいをもって自律的に働けるようになれば、会社が決めた一律の働き方に従うよりも大きなパフォーマンスが発揮されるはずだ。うまくいけば、個人の幸せと生産性向上の両立を実現できる。働き方やマネジメントのあり方の変革を促すという意味でも、東京オリンピックをきっかけとしたテレワークの普及に期待したい。

(文・やつづかえり)


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