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2020年という、日本にとって特別な1年に向けて
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ここでの出会いと発見を、
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東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2019.07.29

気になる東京五輪の暑さ 猛暑を占うのは梅雨明けのタイミング

東京の暑さは梅雨明けがカギ

東京2020オリンピック開催まで1年となりました。
東京五輪で注目される一つのポイントが暑さですね。実際暑くなるのかどうかと、その対策を見ていきましょう。

今年の東京は記録的な日照不足、梅雨寒となりましたが、夏の暑さを決める上で、欠かせないポイントは、梅雨明けのタイミングとなります。

オリンピック会場が多くある関東甲信地方は7月29日に梅雨明けしました。

平年より8日、昨年より30日遅い梅雨明けとなりました。

夏の高気圧(太平洋高気圧)が梅雨前線を押し上げ、梅雨明けとともに夏空がやってきました。

こちらは梅雨明けの模式図です。夏の高気圧はとても強いため、台風が発生しても日本列島に近づくことはできません。海も一年で最も穏やかな時です。

梅雨明け十日の猛暑(模式図)(著者作成)

そして、梅雨明け後の十日間は一年で最も暑さが厳しい時です。夏空が続くため、天気も穏やかになりがち。だからでしょうか、昔から「予報官の夏休み」ともいわれています。
連日、強い日差しが照り付けるため、暑さもだんだん厳しくなります。オリンピック期間中はちょうど「梅雨明け十日」にあたることが予想され、梅雨明けが早い、遅いでは状況が大きく変わります。つまり、東京の暑さは梅雨明けがカギを握るのです。

こちらは2000年から2018年までの関東甲信地方の梅雨明け日を見たものです。例年、7月21日頃が梅雨明けといっても、年によってさまざまです。昨年(2018年)は統計史上最も早い6月末に梅雨が明けました。気象関係者のだれもが驚くスピード梅雨明けです。一方で、2003年はグズグズと梅雨が長引き、8月になってようやく梅雨が明けました。その年は大冷夏、夏がなかったと話題になりました。

関東甲信地方の梅雨明け日(2000年~2018年)と2019年予測(著者作成)

どのくらい梅雨明けの時期と東京の暑さが関連しているのか、調べてみたグラフがこちらです。東京オリンピック期間中の東京の猛暑日(日最高気温35℃以上)を数えてみました。
史上最も早く梅雨が明けた2018年は期間中に猛暑日は6日ありました。さらに、2015年は8日連続で猛暑日となったのです。一方、梅雨明けが遅く、8月までずれ込んだ2003年は猛暑日がありませんでした。
そもそも、東京の猛暑日は平年で2日程度、2018年や2015年のように突出して猛暑になる年は梅雨明けが平年並みから早い傾向があるようです。

【東京】猛暑日(日最高気温35℃以上の日)グラフ(2000年~2018年)(著者作成)

ヒートアイランド 競技会場によって暑さが違う

東京はどこも同じように暑いと思っていませんか?
実は東京は場所によって暑さの感じ方が変わる可能性があるのです。
こちらは東京都心を中心とした夏の暑さを示した図です。1980年代前半は日最高気温が30℃以上になる合計時間が200時間を下回る地域がほとんどでした。しかし、2010年頃から暑さが一段と厳しくなり、30℃以上の合計時間は300時間以上になっています。
原因は東京の都市化によるヒートアイランド現象です。ビルなどの建物は日中、強い日差しで暖められます。そして日が暮れると逆に熱を放出するのです。また、冷房などの空調から出る熱風、車やバスから出る排熱などが合わさって、東京の気温をグーンと押し上げるのです。

出典:環境省

一方で、東京湾の風の影響もあります。
夜から朝にかけては陸から海へ、昼間は海から陸へ風が吹きます。これを海陸風と呼び、昔から夏の暑さをしのぐ風として親しまれています。
臨海部に位置する海の森クロスカントリーコース、カヌー・スラロームセンター、そして豊洲周辺の競技会場ではこの海風が期待できるでしょう。午後になると、きまって南寄りの風が吹き、暑さを和らげてくれそうです。しかし、海風が届きにくい国立競技場周辺は午後3時頃をピークに猛暑に注意しなければなりません。競技会場によって、暑さの感じ方が違うことを知っておくと暑さ対策に役立ちそうです。

緑のカーテンで東京を涼しくしよう!

実は、ヒートアイランド現象を和らげる方法は身近なところにもあります。
それは緑のカーテンです。東京・赤坂にあるTBSテレビは毎年、ゴーヤによる緑のカーテンを育てています。

緑のカーテンはゴーヤのほかにも朝顔やキュウリ、葉が大きいヘチマなどもおすすめです。見た目が涼しいといっても、どのくらい効果があるのか気になります。横浜市環境科学研究所の調査によると、緑のカーテンによって気温が10℃くらい下がったそうです。
都心に緑を増やすことで、ビルなどの建物が熱くなるのを防ぎ、見た目も涼しさを感じます。

写真提供 TBS CSR推進部

そして、街中にクールスポットを作る対策も進められています。ドライ型ミストは微細なノズルから水を噴射することにより、小さな水滴が蒸発する際、空気中から熱を奪うことを利用して気温を低下させる装置です。ぬれることなく、空気を冷やす優れもの。一般に気温が2℃から3℃くらい下がるそうです。都内にはこのようなドライ型ミストが設置され、待ち時間の暑さ対策に効果が期待されています。

有楽町駅前広場のドライ型ミスト 撮影:石上沙織 氏
丸の内・有楽町地区の街路樹に設置されたドライ型ミスト。気温が高くなると自動運転される 撮影:平地真菜 氏

東京の暑さはこんなに危険

では、日最高気温による暑さ指数(WBGT)を見てみましょう。
暑さ指数は1954年、アメリカで考案された指数で熱中症を予防する目的で使われます。日常生活では暑さ指数が25℃を超えたら熱中症に「警戒(黄色)」、28℃を超えたら「厳重警戒(オレンジ)」、31℃以上は「危険(赤)」です。
こちらは昨年夏(2018年)の暑さ指数を見たものです。
7月23日から8月10日までの19日間のうち、「危険(赤)」とされた日は9日、「厳重警戒(オレンジ)」は5日です。
昨年(2018年)は太平洋高気圧がもたらす暑い空気と強い日差しの影響で、例年以上に暑さ指数が高くなりました。
来年のオリンピック期間中も晴れた日は暑さ指数が高くなることが予想されます。

2018年の暑さ指数(著者作成)

環境省が示す日常生活に関する指針で暑さ指数が31℃以上の「危険(赤)」が予想された場合、熱中症の危険性が非常に高まります。オリンピックを観戦するとき、最寄りの駅やバス停から競技会場に向かうときはとくに警戒が必要です。
「警戒(黄色)」とされた日でも油断はできません。観戦のため長い間、暑さにさらされたときは涼しい場所で休み、体を冷やすことを心がけましょう。

出典:環境省

危険な暑さから身を守るには

出典:環境省「熱中症の予防方法と対処方法」より

それでは、熱中症にならないためにはどうしたらいいのでしょうか。
まずは熱が体にこもらないようにすることが大切です。涼しい服装を心がけ、日傘や帽子で強い日差しを避けましょう。そして、暑さによって、気が付かないうちに体から大量の水分が逃げていきます。水分補給には水やお茶、スポーツ飲料もいいですが、スイカなどの果物やゼリー類でも水分が取れます。いろいろ組み合わせてはいかがでしょう。

そして、次に大切なのは体調です。
風邪や寝不足など体調が悪いときは熱中症の危険が増します。楽しくオリンピック観戦をするためにも体調には気をつけたいものです。

これも重要、我慢はいけません。
めまい、頭痛、気持ち悪さなどいつもと違うと感じたら、すぐに助けを求めましょう。観戦のため列に並んでいるとき、待ち時間など集団行動をしているときは体の不調を言い出しにくいものです。自分だけでなく、体調が悪い人を見つけたら声をかけるのも熱中症を防ぐことになります。
さらに、小さなお子さんと出かけるときは地面からの熱にも注意しましょう。
天気予報で見聞きする最高気温の予想は地上から1メートル50センチの高さの気温です。
環境省の熱中症環境保健マニュアルによると、大人の背丈で32℃でも、子どもの身長(50センチ)では35℃です。さらに、アスファルトから5センチの高さでは36℃にもなるそうです。
日が高くなるにつれて、日差しが強くなり、背の低いお子さんやベビーカーに乗った幼児には直接、アスファルトからの熱が届きます。大人以上に暑さを感じていると思ってください。

出典:熱中症環境保健マニュアル 2018より

強い日差し 数時間で皮膚が赤くなる

真夏であるオリンピック期間中は紫外線も一年で最も強い時期です。とくに午前10時頃から午後2時頃は紫外線が強く、何も対策をしていないと数時間で皮膚が赤くなります。8時間を超えると水ぶくれとなり、やけどをしたようになってしまいます。日焼けに気が付いたら、水で濡らしたタオルで冷やすといいでしょう。
そうならないためにも、日陰を選んで歩く、待ち合わせる。日傘や袖のある服装で日差しを直接、浴びないようにすることが大切です。
また、幼児は大人と比べ皮膚がデリケートで、紫外線の影響を受けやすいです。出かけるときは帽子や長袖を着せる、ベビーカーの日よけをしっかりするなど大人以上に日焼けに注意してあげてください。

【気象情報を上手に利用しよう】
東京オリンピックを安全に楽しむためには気象情報をしっかり確認しましょう。毎日の天気予報はもちろんのこと、気温が非常に高くなる日は前日から高温注意情報が発表されます。暑さが厳しい時はいつからいつまでなのか、一目でわかります。オリンピック観戦に出かけるときは気象情報を上手に利用して、暑さ対策をしっかりしてください。

【参考資料】
環境省:ヒートアイランド対策ガイドライン平成24年度版
環境省:熱中症環境保健マニュアル2018
横浜市ホームページ:緑のカーテンの効果
大手町・丸の内・有楽町ドライ型ミスト実行委員会:井水浄化設備を活用した総延長 927m の「ドライ型ミスト」を設置、2019年6月10日報道発表資料


(文・片山由紀子)


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