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東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2019.08.14

東京オリンピックで「24時間眠らない空港」に変貌する羽田空港

 開幕まであと1年となった東京オリンピック・パラリンピック。五輪の開催が決まることで真っ先に整備されるのが交通インフラだ。前回の1964年東京オリンピックの際には東海道新幹線の開業、首都高速道路の開通、東京モノレールの開業。1998年の長野オリンピックの際には長野新幹線(北陸新幹線)が長野駅まで開業し、上信越自動車道で東京と長野が繋がった。共に、今では欠かせない鉄道網・高速道路網となっている。五輪がもたらす影響は大きく、五輪があるからこそ交通インフラの整備が急ピッチで進むのだ。

 既に東京においては地下鉄や高速道路が網羅されており、新たに開業する路線や道路はないが、今回の2020年大会において最も整備されるのが羽田空港だ。2020年3月末に発着枠拡大に伴い国際線が大幅増便されるが、今回の整備は羽田空港の各ターミナルの機能拡張と、羽田空港における2つのホテルや温浴施設を含めた大規模商業施設の開業が柱であり、2020年の五輪開催前に間に合うスケジュールで準備が進められている。

羽田空港国際線ターミナル(筆者撮影)。発着枠拡大でさらに利用者が増えそうだ

国際線が50往復100便増加。より気軽に海外へ

 その中でも日本人・外国人双方にメリットがあるのは羽田空港の国際線発着枠拡大だ。来年春より一部時間帯における都心上空の飛行が認められる予定で、国際線の発着枠が50枠(50往復100便)拡大される(日中時間帯の年間発着回数が現在の6万回から9.9万回に増える)。2020年に政府が目指している訪日外国人旅行者(インバウンド)の年間4000万人の実現に向けても、羽田空港の発着枠拡大は成田空港の運用時間拡大(現在の23時から24時までに延長される)と共に必須事項である。

 増枠される50枠の発着枠については、既にアメリカとの間で24枠をアメリカ便に割り振ることが決定されており、日本側12枠、アメリカ側12枠の配分となる。日本側の各航空会社への枠配分は決定されていないが、アメリカ運輸省は5月16日にアメリカ航空会社の羽田発着枠の暫定配分を発表し、デルタ航空が5枠(シアトル、デトロイト、アトランタ、ポートランド、ホノルル)、ユナイテッド航空が4枠(ニューヨーク、シカゴ、ワシントン、ロサンゼルス)、アメリカン航空が2枠(ダラス、ロサンゼルス)、ハワイアン航空が1枠(ホノルル)と発表した。日本側のアメリカ便の枠を含めると、羽田発着のアメリカ便が現行の12往復から36往復体制と3倍になることで羽田空港に近い首都圏在住者は便利になるとともに、アメリカからのビジネス客・旅行客も都心に近い羽田発着便が増えることで時間を効率的に使えるようになる。

 その他の26枠(26往復52便)の配分は今年秋までには国土交通省から発表される可能性が高い。アジア・オセアニア・ヨーロッパ・中東方面などにおいて、どの路線が羽田から飛べるようになるのか注目が集まる。羽田から飛べる国際線が増えることで、日本人が旅行や出張で出かける場合の選択肢が増え、より気軽に海外へ行きやすくなるだろう。

現在も問題となっている保安検査場の混雑。便数が増えればさらなる対策が求められる(筆者撮影)

ANA国際線の一部が第2ターミナルに。ターミナル名、駅名の変更

 国際線が50往復100便増えることにより、現在の国際線ターミナルで全便を対応するのが難しいことから、2020年3月にANA国内線が発着する第2ターミナル(正式名:第2旅客ターミナルビル)の一部を国際線対応施設にすることで、ANA国際線の一部便が第2ターミナルからの発着に変更される。国際線が複数のターミナルから発着するため、現在の国際線ターミナル(正式名称:国際線旅客ターミナルビル)の名称を第3ターミナル(正式名称:第3旅客ターミナルビル)に変更する。2020年3月以降、ANAの国際線は運航便ごとに第2ターミナル、第3ターミナル(現在の国際線ターミナル)のどちらかを使用することになる。第2ターミナルからの発着便の場合は国内線からの乗り継ぎ時にターミナル移動が不要になることでスムーズな乗り継ぎが実現する。

 鉄道駅も新しいターミナル名への名称変更に伴い、東京モノレールでは、羽田空港第3ターミナル駅→(新整備場駅)→羽田空港第1ターミナル駅→羽田空港第2ターミナル駅(浜松町方向からの停車順)、京浜急行では、羽田空港第3ターミナル駅→羽田空港第1・第2ターミナル駅(品川方向からの停車順)と駅名が変更される。来年春以降は特に国際線利用時には注意が必要だ。

来年3月以降ANA国際線の一部便も第2ターミナルから発着する。現在増築工事が進んでいる(筆者撮影)

複合商業施設や温泉施設がオープン。24時間眠らない空港へ

 そして羽田空港におけるもう1つの大きな目玉がある。現在の国際線ターミナルから連絡通路で結ばれるホテルを中心とした大型複合施設が東京オリンピックまでにオープンするのだ。

 国土交通省の民間事業者選定により「住友不動産・東京国際空港プロジェクトチーム」が選定された。住友不動産が敷地面積1万3000坪という土地を活用し、2つの異なるグレードのホテルをオープンさせるが、2つのホテルを合わせた規模は1717室となる。

現国際線ターミナルをバックにした全体の完成予想図(住友不動産提供画像)

 住友不動産はビジネスホテルのチェーンであるヴィラフォンテーヌを運営しており、ラグジュアリーホテル(160室)とハイグレードホテル(1557室)の2グレード構成となる。約1700室の客室が整備されることで、大きな荷物は空港に置いたまま、羽田を拠点に都心観光をする訪日旅行客が増える可能性も十分に考えられる。さらに、早朝の出発便や深夜の到着便利用時にこれらのホテルを活用することも十分に考えられるなど、名実共に「24時間眠らない空港」となる。また、バンケットルームや国際会議にも対応するイベントホール、会議室も完備されるため国際会議や学会、各種イベントなども開催されるだろう。特に海外や国内各地から参加する人にとっては移動時間が短縮されることになる。日本が強化しているMICE誘致にも大きな存在となる。

1700室を超える客室数のホテルがオープンする。客室のイメージ画像(住友不動産提供画像)

 今回、充実するのはそれだけではない。敷地内で天然の温泉を掘削した温浴施設がオープンする。ホテルの最上階から富士山や飛行機を一望できる温泉として、注目スポットになることは間違いないだろう。さらに飲食施設や物販施設など全77店舗で構成される大型商業施設もオープンする予定で、空港ターミナルの展望デッキと共に飛行機に乗らない人も沢山集まる場所になるだろう。

最上階から富士山や飛行機を一望できる露天風呂のイメージ画像(住友不動産提供画像)
飲食施設や物販施設など全77店舗で構成される大型商業施設も開業する(住友不動産提供画像)

 シンガポールのチャンギ空港では今年4月に大型複合施設「ジュエル・チャンギ・エアポート」をオープンさせた。空港エリアに大型商業施設を併設するというのは世界的な傾向にあるが、今回五輪が開催されるということで、五輪前の開業を目指して急ピッチで建設が進められている。

現国際線ターミナルから連絡通路で結ばれる2つのホテルと大型複合施設。オリンピック開業へ向けて急ピッチで工事が進む(筆者撮影)

「真の国際線24時間空港」実現には、深夜早朝バスの整備が必要

 空港アクセスについては、2020年時点では既存の東京モノレール、京浜急行、リムジンバスが中心となるのは変わらないが、国際線ターミナルに隣接する複合商業施設には巨大なバスターミナルもオープンし、1日800本が発着する予定となっている。注目は深夜早朝の交通アクセスだ。現在でも23時以降の到着や朝7時前の出発便も多くあり、東京モノレールや京浜急行でアクセスできない時間帯もある。それを補うべく、羽田空港を深夜1時台・2時台に出発する「深夜早朝時間帯 羽田空港アクセスバス」が運行されている。新宿・池袋方面は深夜1時、1時40分、2時20分、銀座・東京駅・秋葉原・浅草方面は深夜1時15分、2時にそれぞれ発車する。上記以外にも品川方面、横浜方面、川崎方面、豊洲・葛西方面など合計7ルートが運行されている。早朝については、本数は各エリアから羽田空港へ1本ずつとなるが、朝4時台に羽田空港に到着するバスが運行されている。

 2020年春以降の深夜時間帯の便数が確定していないが、諸外国と比べるとタクシー代が高いこともあり、深夜早朝のバス整備はもっと必要だと考えられる。深夜早朝の交通アクセスが充実していないことにより、空港ターミナルの椅子で朝まで過ごす利用者が増加している一つの要因になっている。

 見本となるのが香港国際空港だ。深夜に到着しても鉄道(エアポートエクスプレス)の終電後は「ナイトバス」を使って香港市内中心部へ行くことができる。便数が多いこともあり、電車がない時間でもそれほど不便はない。

 私案ではあるが、今回の発着枠拡大を機に、深夜時間帯において飛行機の発着便数に関係なく、羽田空港~新宿~池袋、羽田空港~六本木~渋谷~三軒茶屋~二子玉川、羽田空港~銀座~東京~秋葉原~上野~浅草、羽田空港~蒲田~大井町~品川、羽田空港~蒲田~川崎~横浜、羽田空港~お台場~豊洲~東陽町~葛西~東京ディズニーリゾートといった路線で深夜も30分間隔(路線によっては1時間間隔)で両方向の運行をするべきだと思う。航空会社側にとっても若干発着枠に余裕がある深夜・早朝に新たな路線を開設する可能性が十分に考えられるほか、空港に勤務するスタッフの利用も十分に考えられる。また、国際線はもちろんだが、国内線における深夜便への道も開けるだろう。24時間発着できる以上は、少なくともバスは24時間運行をするべきだと思う。海外から日本を訪れる訪日外国人に対するイメージという部分も含めて考えるべきだと思う。

2020年3月末より更に増える羽田空港発着の国際線。これまで以上に展望デッキから海外のエアラインの機体が観られそうだ(国際線展望デッキより筆者撮影)

 2020年に大きく変貌する羽田空港。東京オリンピック・パラリンピック後も、今回整備される発着枠や大型複合施設を含めて、その恩恵を受けることができる。今回の五輪によって空港がより便利になるのだ。

(文・鳥海高太朗)


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