ひとりひとりの2020に出会う。

2020年という、日本にとって特別な1年に向けて
スポーツを通じた絆を、
競技を支える人たちのドラマを、
世界に誇る日本の文化や芸術を、
誰もが参加できる社会貢献のあり方を、
さまざまな視点で切り取り、伝えていく。
ここでの出会いと発見を、
ひとりひとりが日本の未来を考えるきっかけに。
それが、“みんなの2020”です。

東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2019.08.28

「フィンランドを参考に、お台場にサウナを」企画のプロ・小山薫堂が2020東京大会に向けて提言

2020東京大会まで1年足らず。大会組織委員会、各自治体による準備もいよいよラストスパートという状況だが、我々個々人は自国開催のオリンピック・パラリンピックを迎える上で、残された期間、どんな準備をすれば良いのか。企画のプロフェッショナルとして「放送作家・脚本家」という肩書きに収まらない活躍をし続けている小山薫堂さんに、お話を伺った。

東京オリンピックを契機に、日本は自己責任の国になるべき

――2020東京大会まで、丸1年を切りました。もう、あっという間に開会式当日を迎えてしまいそうな気がしますが、残された期間でどんな準備をすればいいでしょうか?

小山 僕はリオのオリンピック(2016年開催)でブラジルに行ったんですよ。その時に感じたのが、とにかく、みんなが楽しそうだったということ。正直、会場周りの設備や都市のインフラも全然間に合ってなくて、それこそ電車が動いていない状態だったんです。それなのに、大会会場で誘導しているボランティアの人が、ものすごく楽しそうに踊っていたり、すれ違う人とハイタッチしている姿を見た時に、これはすごいな、ワクワクするなと。なので、企画云々というよりも、まずは個人個人が東京2020とどう向き合うかによって、大会が成功するかどうかが変わってくると思います。大会に直接的に関わっている人たちだけが一生懸命やっていてもきっとダメで、直接的に関わっていない人までもが、そのワクワク感を表現して、東京2020で来日した世界中の人たちとどう楽しく接するか、じゃないかと。

観客との写真撮影に応じるリオ五輪ボランティア(写真:ロイター/アフロ)

――まずは自分たちが楽しんで、来てくれた人たちとも楽しくコミュニケーションを取る、ということですね。確かに、それだったら、意識を変えるだけなので、これからでも十分間に合いそうです。

小山 ええ。でも、実はこれが一番大事なことで、大会の成功に大きく関わってくると思います。それから、規制緩和。本来は国や東京都がダメだと言っているものを、東京2020限定で規制緩和してOKにする。それによって、新しいコミュニティができたり、新しい企画にチャレンジする人たちが出てくるんじゃないかなと。

――今、大会開催期間中のホテルの宿泊費が高騰していて、1泊10万円を超えるのが当たり前、というような状況になっています。頼みの民泊も、ルールを厳しくしてしまったため、解決策にはなっていない。なので、東京2020開催期間中だけ規制緩和して、もう一般家庭に泊めてもOKにしちゃえばいいんじゃないかと。その代わり、トラブル等はそれぞれの自己責任で、ということで。

小山 そうそう。こういう時こそ、自己責任というものを日本人の中にもっと植えつけるチャンスな気がします。最近は、何かまずいことがあったらすぐに、「どこが責任を取るんだ」という話になるじゃないですか。でも、それだと面白いことが生まれない。日本も、もっと自己責任の国になったほうがいいと思います。先日、フィンランドのヘルシンキを訪れた時にサウナへ行ったんです。ソンパサリーという埋め立て地エリアにある「ソンパサウナ」というサウナで、埋め立て地の先端の、海のすぐそばにあるんですが、このサウナがとてもユニークで。どうやってできたかというと、最初は放置されていた小さな小屋に、2011年頃に誰かが勝手にサウナ用ストーブを持ち込んで、そこでサウナに入って汗をかいたら海に飛び込むことから始まったそうなんです。当然、電気もなければ、トイレもシャワーもないんですけれど、「面白いサウナがあるぞ」と少しずつ評判になって、人が集まりだして。利用する人は、自分で薪とサウナストーブにかける水を持ってくる。そのうち、自治組織みたいなものもでき上がってきて、運営するようになって。でも、ルール的には当然、違法なんです。ただ、今ではフィンランド政府もその存在は認めて、政府公認の観光名所になってるんです。営業時間は24時間、料金は無料、ただし、すべて自己責任。

――政府公認だけれど、自己責任、というのがすごいですね。

小山 そうなんです。このソンパサウナ、今ではサポートする企業まで出てきて、しっかりしたホームページまで作ってる。週末になると、サウナの周りにたくさん人が集まってカーニバルみたいになっていて。ちなみに、ホームページを見ると、「移転先募集中」となってる(笑)。これを行政が認めていることがポイントですよね。なので、日本でも、せっかく自国開催のオリンピック・パラリンピックなんだから、多少のことには目をつぶって、規制緩和して、自分たちも来てくれる人たちも、楽しめることをしようよと。それで大会が終わった後に、改めてそれぞれをOKかどうか判断して、良いものはその後も残して、2100年くらいに、「実はあれは2020年に始まったものなんだよ」となったら、最高だなと。

――そういうことが実現できたら、すごくワクワクしますね。

小山 ソンパサウナをヒントに僕が勝手に妄想したのは、お台場にサウナを作ったら面白いんじゃないかと。お台場のビーチは、世界の主要都市にあるビーチの中でも例を見ないほどキレイなビーチなんです。それこそ、ニューヨークのハドソン川に入っている人なんて誰もいないわけで、これだけの大都市圏にああいったビーチがあるということは本当にすごいことで、もっと世界にアピールしていいんじゃないかと思うんです。なので、お台場のビーチのところにある島にサウナを作って、船で行くのか泳いで行くのかわからないですけれど(笑)、そのサウナに入って、汗をかいたらそのまま海に飛び込む。東京湾の水がキレイなこともアピールできるし、よりキレイに保つことにもつながるでしょう。

マイナースポーツを盛り上げるには、学校のクラス単位で応援する

――続けて、薫堂さんの注目しているスポーツについて、聞かせてください。

小山 僕が自分でやっていたのはバスケットボールなんですが、今注目しているのは女子のハンドボールです。なぜかと言うと、今年の冬に、熊本で女子ハンドボールの世界選手権大会が開催されるんです(2019年11月30日~12月15日)。僕はそのアドバイザーをやらせてもらっているのですが、女子ハンドボールって、ヨーロッパだとサッカーやラグビーに次ぐ人気スポーツなのに、日本では全然知られていないじゃないですか。

――確かに、ヨーロッパでの人気と比べると、かなり寂しい状況ですよね。

小山 女子ハンドボールは、「おりひめJAPAN」という愛称がついているんですが、それ自体もほとんど広まっていない。世界選手権についても、全国的な話題になったのが、県のPRバナーのコピー(「手クニシャン、そろってます。」「ハードプレイがお好きなあなたに。」が女性蔑視だということで炎上した案件)(苦笑)。ただ、実際に女子ハンドボールの試合を見たら、本当にハードで、激しさで言えば、ラグビーとバスケットボールの間くらい。「これで退場にならないの?」というくらいつかみ合ったりしてるんです。それと、攻守の切り替えもすごく早くて、とにかく試合のテンポが早い。少しも目が離せなくて、面白い。じゃあなぜ人気が出ないのかと言えば、やっぱりスターがいないからだと思います。

2017年日韓戦での女子ハンドボールチーム(写真:築田 純/アフロスポーツ)

――おりひめJAPANの中で、絶対的なエースはいるんですか?

小山 いないんですよ。そもそも、おりひめJAPAN自体が、それほど強くなくて。来年の東京オリンピックには44年ぶりに出場しますが、開催国枠で出られるだけなので。アジアでも、昨年行われたアジア選手権では決勝で韓国に負けています。

――それはPRしていく上で、けっこう難しいですね......。現状はどういうPR戦略を立てているんですか?

小山 今回の女子ハンドボール世界選手権は、熊本県の5会場で行われるんですが、全会場の全試合を合計すると、30万人で会場が一杯になるんですね。当然、日本や前回王者のフランスといったチームの試合は、何もしなくても完売するんですけれど、問題はそうじゃないチーム同士の試合なんです。そういう試合は集客に相当苦戦するだろうと予測されていて、正直、全国から来てもらうのは難しいだろうから、熊本県内及び九州各県を対象に、街単位で応援するチームを決めるのはどうかと。この街ではこのチームを応援する、という戦略でいけば、盛り上がりを作れる可能性があるんじゃないかと思っています。

――2002年のサッカーワールドカップでも、大分県の中津江村(現大分県日田市中津江村)が、同村でキャンプを実施したカメルーン代表を応援して話題になりました。

小山 まさにそういう感じです。それこそ、学校のクラス単位ぐらいでもありじゃないかと。「うちのクラスはこの国を応援します」というふうにして、「それじゃあ、この国のことを勉強しましょう」とか。それで、学年対抗で応援してみるとか。

――東京2020でも、マイナーな競技だったり、メジャー競技でもマイナーな選手たちには、同じような戦略がマッチするかもしれませんね。

小山 そう思います。自国開催のオリンピック・パラリンピックがいいなと思うのは、これまで全く関心のなかったスポーツにも関心を持つきっかけにはなると思うんですよ。実際、僕も熊本が関わるまで、女子ハンドボールには全く興味なかったですから。スケートボードなど、これまでは全くオリンピックと関わりがなかった競技が新競技として加わっていますし、あえてメジャーじゃない競技に注目して、そうした競技の選手のファンになるというのも面白そうですよね。自国開催の東京2020は、そういったスポーツを生で見られる貴重な機会だと思うので、そういった視点でも楽しめると思います。

(2019年6月 取材・文:岩本義弘 撮影:軍記ひろし)

<プロフィール>
小山薫堂(こやま・くんどう)

放送作家。脚本家。1964年に熊本県天草市に生まれる。大学在学中に放送作家としての活動を開始し、これまでに「カノッサの屈辱」「料理の鉄人」「東京ワンダーホテル」「ニューデザインパラダイス」など斬新な番組を数多く企画・構成。初の映画脚本となる「おくりびと」では、第60回読売文学賞戯曲・シナリオ部門賞、第32回日本アカデミー賞最優秀脚本賞、第81回米アカデミー賞外国語映画賞を受賞した。くまモンの生みの親でもある。


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