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2020年という、日本にとって特別な1年に向けて
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東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2019.09.19

2020東京大会でのメダルラッシュも夢じゃない バドミントン日本選手の活躍に注目

2019バドミントン世界選手権男子シングルス桃田賢斗が2連覇(Photo by D.Nakashima/AFLO)

世界選手権で頭角をあらわした日本選手たち

近年、バドミントン日本代表の好成績が目立っている。8月にスイスで行われた世界選手権では、男子シングルスの桃田賢斗(NTT東日本)と、女子ダブルスの松本麻佑、永原和可那(北都銀行)がともに日本勢初となる2連覇を達成。両種目は、2020年東京五輪でも金メダルの有力候補だ。日本は、前回の2016年リオ五輪で金1個、銅1個のメダルを獲得しているが、東京五輪でより良い成績を挙げる可能性は、かなり高い。知っておくべきバドミントン日本代表の現状を伝える。

メダルを量産する強さを身につけた日本

桃田を止められる者は存在せず、女子ダブルスは日本勢同士が世界一を争う時代がやって来た。8月の世界選手権で金2個、銀3個、銅1個。3位決定戦がないとはいえ、全5種目でメダルを獲得したバドミントン日本代表は、お家芸のようにメダルを量産できる強さを身につけた。近年の飛躍ぶりは、目覚ましい。バドミントンと言えば、2012年ロンドン五輪までは、隣の中国がメダルを量産する競技だった。韓国や東南アジア勢も強く、日本は女子ダブルスだけがメダル争いに食い込むレベルだった。ところが、前回大会では女子ダブルスの高橋礼華、松友美佐紀(日本ユニシス)がついに日本勢初の金メダルを獲得。奥原希望(太陽ホールディングス)も、シングルス種目で日本勢初となる銅メダル。初めて複数のメダルを手に入れた。2020年東京五輪では、さらに大きな前進が見込める。

出場停止処分から復帰し代表に返り咲いた桃田 約9割の勝率を可能にする力とは

世界選手権の最終日、その期待感の大きさが形になって表れた。サッカーや野球でも民放の生中継はあまり見かけない時代に、テレビ朝日はプライムタイムに男子シングルス決勝を生中継したのだ。
桃田は、決勝戦でデンマーク選手を圧倒。2-0(21-9、21-3)の圧勝でその期待に応えてみせた。大会中、全6試合を通してゲーム取得率100パーセント、ポイント取得率でも67.7パーセント(ラリーの7割近くが桃田のポイントになったということになる)と驚異的な強さを見せつけた。
バドミントン日本代表にとって、桃田の存在は2016年リオ五輪以前との最も大きな違いと言える。桃田は前回の五輪も当時世界ランク2位の金メダル候補だったが、16年4月に違法賭博店の利用が発覚したため出場停止処分を受け、自身初の五輪出場はならなかった。自身の行いを省みる時期を経て、翌17年7月に処分から復帰するも社会的制裁を受け「どうしたら怒られないのかばかりを考えていた」とあらゆることに怯えていた。競技生活に戻ったばかりの頃は、他の日本選手にも負けるほど試合勘を失っていたが、昨年からは日本代表に返り咲き、国際大会で圧倒的な好成績を収めている。昨年は、国際大会(団体戦を含む)で82戦して74勝8敗。90%を超える勝率を記録。昨年に比べて1年の前半期の出場大会のレベルが高くなっている今年も40勝5敗(いずれも棄権は含まない)で88%以上の勝利を誇っている。

2019バドミントン世界選手権 男子シングルス決勝(Photo by D.Nakashima/AFLO)

代表復帰後は、プレー内容も進化した。桃田は、世界随一のシャトルコントロールを生かしたレシーブで主導権を握るプレースタイルだが、昨年の世界選手権以降は、スピードやパワーで勝負する攻撃的なプレーも強化。
世界選手権で連覇を達成した桃田は「アグレッシブに攻めていくことをテーマにしてきた。今大会では、より早く、より前に、というプレーができた分、ディフェンスでもプレッシャーを与えることができ、優勝の要因になった。要所でネット前に踏み込んで(ネット前からたたき込む)プッシュや(相手のネット前に落とす高難度ショットの)ヘアピンを打てた。合宿のフィジカル強化で追い込んだ分、緊張した場面でも果敢に行けた。自信を持って成長できた部分と言える」と手ごたえを示した。
世界選手権では2人の有力選手が負傷欠場していたが、彼らがいたとしても、桃田が金メダル候補の座から降ろされることはないだろう。東京五輪の圧倒的な優勝候補と言える存在だ。

世界ランク1〜3位を独占する女子ダブルス 五輪出場を勝ち取るペアは?

一方、桃田の男子シングルスと並んで金メダル候補となる女子ダブルスは、世界選手権を連覇したペアがいるにも関わらず、まだ、どのペアが五輪に出場するかが不明瞭だ。なぜなら、五輪には1カ国から1種目に最大2組しか出場できないのだが、世界ランク1〜3位(以下、世界ランクは、世界選手権の成績が反映された8月27日付け更新のもの)は日本が占めており、日本勢同士の順位争いが激しい。各大会には、順位ごとにランキングポイントが設定されており、対象期間となる1年間(2019年4月29日から2020年4月26日まで)に獲得したポイントの上位10大会分の合計が、東京五輪の出場権を決める来年4月30日付けの世界ランクに反映される。

世界選手権は2年連続で日本勢対決。連覇の松本、永原は五輪出場に大きく前進した(筆者撮影)

俗に五輪レースと呼ばれる出場権争いで世界選手権直後に首位に立っているのは、3年連続の準優勝だった福島由紀、廣田彩花(アメリカンベイプ)。2位が、優勝した松本、永原。2016年リオ五輪の金メダリストである高橋、松友が2位から3位に下がったが、まだ、僅差だ。いずれのペアが東京五輪に出場しても金メダルを狙えるが、特に年内までの出場権争いが激しく、目が離せない。
世界選手権を連覇した松本、永原は、ともに170センチを超える長身で高さを生かした強打が武器。守備力の向上が目覚ましく明らかに成長している。福島、廣田は、大舞台で勝負強さを発揮できない悔しさを味わっているが、最も安定感のあるペア。ベテランの域に入った高橋、松友は、経験豊富。長いレースをいかに戦い抜くかを知っているだけに、最後まで五輪レースの行方は分からない。
12月に中国で行われる、BWF(国際バドミントン連盟)ワールドツアーファイナルズという大会は、1年の成績優秀選手が出場できるもので、世界選手権に次ぐ高ポイントが設定されているが、この大会も1カ国2組までしか出場できない。世界選手権の優勝で優先出場権を得た松本、永原と、もう1組として、どちらのペアが出場するかによって、出場候補が絞られてくる可能性がある。

女子シングルスもメダル候補 強さを見せる山口と奥原

7月のダイハツヨネックスジャパンオープンで決勝を戦った山口(左)と奥原(筆者撮影)

また、上記2種目以外にもメダル候補が揃っているので、ぜひ覚えておいてほしい。これらに次いで成績が安定しているのは、女子シングルスだ。世界ランク1位の山口茜(再春館製薬所)と、世界選手権で17年に優勝、今年は準優勝と好成績を挙げている奥原は、前回のリオ五輪の準々決勝で戦ったが、ともに大きく成長している。

女子シングルスはスペイン、中国、台湾、インド、タイに強豪選手がおり、混戦の種目だが、金メダルのチャンスもある。山口は、粘り強さとトリッキーなプレーが持ち味。ダイビングレシーブでファインショットを決めることも珍しくなく、見ていてワクワクするプレーを繰り出す。今夏は平均的なスピードアップを見せており、さらに強さを増している。今年からプロに転向した奥原は東京五輪に照準を合わせている。これまで両ひざの負傷に悩まされてきたが、相手を罠にはめるような巧みな試合展開から好機をつかんで一気に勝利を引き寄せる勝負強さは抜群。驚異的なフットワークは健在で、消耗戦でねじ伏せる力も持っている。

リオ五輪ではなかった新たな力 メダル候補に成長した男子ダブルスと混合ダブルス

そして、リオ五輪時にはなかった新たな力も見逃せない。男子ダブルスは、世界ランク4位の園田啓悟、嘉村健士(トナミ運輸)と、同5位の遠藤大由、渡辺勇大(日本ユニシス)が現状では五輪出場候補。しかし、若手の保木卓朗、小林優吾(トナミ運輸)が世界選手権で銀メダルと大躍進を見せて、猛追している。園田、嘉村には2大会連続で勝利。嘉村が「もう相手の方が強いと思って臨まないといけない」と警戒するほどの勢いを見せている。五輪レースが激化する可能性があり、切磋琢磨による底上げが期待される。

男子ダブルスで五輪レースに加わった保木(左)、小林組(筆者撮影)

今回の世界選手権で初めてメダルを獲得した混合ダブルスの渡辺勇大、東野有紗(日本ユニシス)も、メダル候補に成長してきた。これまで苦手種目としてきた分野だが、テコ入れの成果が出ている。昨年1月、前回のリオ五輪でマレーシア代表の男子ダブルスを指導して銀メダル獲得に貢献したジェレミー・ガン氏をこの種目の選任コーチとして招へい。渡辺、東野は、春に行われる最大級の大会である全英オープンで昨年に優勝、今年も準優勝を果たし、世界ランク3位をキープ。圧倒的な強さを誇る中国の2強を追う存在となった。男子ダブルスとの2種目で東京五輪出場、メダル獲得を狙う渡辺は、見る者を驚かせる技巧を誇る。世界選手権が行われたスイスの会場でも、回転しながらのバックハンドショットや、ダイビングレシーブの連発などで喝采を浴びた。女子では珍しく力強いジャンピングスマッシュを打ち込む東野と、この種目における日本の立ち位置を大きく変えている。

他国を圧倒するも安心できない2つの要素

今夏の世界選手権におけるバドミントン日本代表の躍進は、他国を圧倒するものだった。ただし、2つの視点で安心はできない。
1つは、今後の負傷の回避だ。世界選手権では男子シングルスで有力候補2名が負傷欠場。女子シングルスもリオ五輪の女王キャロリーナ・マリン(スペイン)が欠場。日本勢では、女子ダブルスで世界ランク8位から躍進を狙った米元小春、田中志穂(北都銀行)が、試合中における米元の左足アキレス腱断裂によって棄権。また、女子シングルスで優勝候補だった山口も、腰痛の影響でプレーが冴えず初戦敗退の憂き目に遭った。大会がトーナメント形式のため、勝てば勝つほど過密日程になるが、無理は禁物。五輪レースでの長期欠場は、出場権獲得に大きく関わる。1年の長い戦いは「無事是名馬」の格言どおり、最後まで戦い抜くこと自体も重要だ。
もう1つは、海外勢が日本勢を研究してきていることだ。特に女子ダブルスは、中国、韓国が新たなペアの組み合わせで追い上げている。日本代表を率いる朴柱奉ヘッドコーチは「女子ダブルスは、韓国や中国に勝ったけど、実力差はない。日本は(互いの前方の)ハーフコートで短い距離の打ち合いになると、中国や韓国に弱く、練習が必要。相手に合わせて、作戦を選べるようにしていきたい」と相手の対策にはまることなく勝ち抜ける強さを要求。チーム全体に関しても「五輪に関しては、この好成績でも安心できない。男子シングルスでは、中国勢より桃田選手の方が少し上だと思うが、向こうには3人くらい戦える選手がいる。女子シングルスや女子ダブルスも中国との実力差は、イーブン。男子ダブルスや混合ダブルスは、中国の方が上」と強国・中国の巻き返しに警戒を示している。
しかし、残り1年、成長の歩みを止めずに歩み続けられれば、東京五輪でもメダルラッシュを再現する可能性は十分にある。今、この競技を見逃すわけにはいかない。

(文・平野貴也)


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