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東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2019.10.01

男子バレー日本代表の中で最も「世界を知る」石川祐希と古賀太一郎が語る東京五輪への想い

左:古賀太一郎選手 右:石川祐希選手

 今や戦う場は日本だけではない。
 1人の選手として「個」のレベルアップ、キャリアアップを図るために、さまざまな競技で主戦場を海外に置き、戦う選手がごく当たり前に増え続けている昨今、バレーボールの世界にも誇るべきキャリアを持った選手がいる。
 バレーボール日本代表のエース、石川祐希。そして、バレーボール日本代表の守護神であるリベロ、古賀太一郎。
 バレーボールにおいて世界三大リーグのイタリア、ポーランドでプレーする2人が、海外に身を置くからこそ感じること。そして、自らが乗り越えるべき課題と、誇るべき武器とは。
 10月1日に福岡で開幕するワールドカップ、そして2020年の東京五輪へ向け、進化を遂げる男子バレー日本代表の中で今、最も"世界を知る"2人の選手に聞いた。

日本代表のエース・石川祐希が推挙する「高く評価されるべき選手」

 6人の選手が同時にコートへ立ち、それぞれの役割を果たす。何をいまさら、と言われそうだが、それがバレーボールという競技だ。
 とはいえ、やはり、目立つのは「エース」と呼ばれるポジション。昨今は「アウトサイドヒッター」という表記が最もポピュラーだ。
 アウトサイドヒッターの役割は細かく見れば無数にあるが、簡単に説明するならば、相手のサーブをレシーブし、なおかつ攻撃に入るポジション。たとえばロンドン五輪で銅メダルを獲得した際の女子で例えるならば17年3月に引退した木村沙織。現在の女子日本代表ならば石井優希や古賀紗理那、黒後愛といった面々が当てはまる。
 そのアウトサイドヒッターで、現在の男子バレー日本代表におけるエースは誰か。
 それは紛れもなく、石川祐希だ。
 愛知・星城高校在学時にはインターハイ、春高など主要タイトルを2年連続で総なめにし「六冠」を達成。中央大学に進学後もリーグ戦や全日本インカレを制し、1年時の14年に日本代表へ。アジア大会、ワールドカップなど多くの国際大会に出場を果たすとともに、大学在籍時からイタリア、セリエでもプレー。3シーズンに渡り、世界最高峰のイタリアで経験を積んだ。

男子バレー日本代表のエース・石川祐希

 それまでも、日本のチームに在籍しながら海外リーグでプレーする選手がいなかったわけではないが、大学在籍中にイタリアへ渡り、試合出場を果たしたのは石川が初めて。日本国内のみならず、現地メディアやサポーターからも多くの関心や期待を集めたが、ラティーナでデビューを果たした17年1月、石川が発したのは、意外な言葉だった。
「自分を取り上げていただけるのは、すごくありがたいです。でも、もっと日本のバレーボール界が注目すべきは古賀太一郎さん。海外に渡って、道を切り拓いている古賀さんこそ、もっともっと取り上げ、高く評価されるべき選手です」

出場機会を求め海外へ キャリアアップを果たし海外で高く評価される古賀太一郎

 学生時代から華々しい戦績を誇る石川に対し、長崎出身の古賀は佐世保南高校在学時に全国出場を果たすも、頂点に立った経験はない。国際武道大学から豊田合成(現:ウルフドックス名古屋)に進むも、試合出場の機会はなかなか訪れず、1人の選手として新たなチャンス、何より出場機会を求め、15年、古賀はフィンランドへ渡ると、古賀はそのチャンスをつかんだ。
 海外へ渡って最初のシーズンにフィンランドでMVPを受賞し、2年目はフランスリーグのパリ・バレー、3年目の17年にはポーランドのザヴィエルチェへと移籍し、年々ステップアップを遂げた。外国人選手枠が限られるポーランドリーグは、アウトサイドヒッターやオポジット、ミドルブロッカーなどチームの得点源となり得る選手の獲得を優先するクラブが多い。だがザヴィエルチェはリベロの古賀と3シーズン目の今季も契約を結び、「クラブにとって必要不可欠な選手」と高く評価され、自らの実力で古賀はキャリアアップを果たした。
 コート内で唯一、直接得点を取ることができない「リベロ」というポジションは、評価基準が難しい。「守備専門」と表されることも多く、1本でも弾けば「リベロなのに」と厳しい評価にさらされる。

2018年FIVBネーションズリーグ大阪大会での古賀選手(Photo by Naoki Nishimura/AFLO SPORT)

 だが、古賀が感じるリベロの醍醐味は、もっと別のところにある。
「リベロは得点を取れないから体を張ったり、声をかけたり、チームを調和するのも必要で、それは日本人の特性でもある、献身さや、犠牲の心、日本人に一番合ったポジションかもしれません。もちろんそこにプラスしてスキルも求められるし、世界トップのリベロは、自分がレシーブする、というだけでなく、人を動かす。だから僕もコート内でディフェンスに関しては誰にも譲らないと思っているし、ブロックの指示、レセプションの指示はプライドを持ってやっています。年齢や経験を重ねて、"試合を楽しめる"という表現はおかしいかもしれないですけど、試合の映像を見返しても『もっとこうできる』と次々アイディアが浮かぶ。昔はボールを追いかけていただけですが、今は横、縦、相手。いろんなものが見えると人も動かせるようになるし、そうなるとバレーボールは面白い。だから僕も、まだまだこれから伸びて行くと、自分で自分を信じています」

「年齢や経験を重ねて"試合を楽しめる"ように」

「海外で得てきた自分しか知らない情報、経験」を代表で活かし東京五輪へ

 セッターやリベロは経験を武器として、年齢を重ねるごとに円熟味を増すポジションでもある。
 2020年、古賀が30歳で迎える東京五輪。常に「1つ1つ目の前のことをクリアするだけ」と言うが、もちろんその先には「日本代表を強くしたい」という思いが根底にあり、強い日本代表になったか否か、まずその真価が問われる大きな機会になるのが東京五輪であるのは間違いない。
 海外へ飛び出し、新たな道を切り拓くまでは考えることもなかった「五輪」への挑戦。
「東京五輪でどうなるか。自分の立場でできること、自分のやり方でアプローチしていくしかないと思うし、それが1人の選手としてもこの先にもつながる。まだ僕は代表歴も浅いですが、海外で得てきた自分しか知らない情報、経験していないこともあると思います。それを、これからの日本代表にどう活かせるかは自分次第だと思うので、今はそのための一歩一歩。とにかく、楽しみですよ」

「間違いなく勝つチャンスを取りに行ける選手」 古賀が信頼を寄せる石川祐希

 日本で常套句のように言われる「高さ」や「パワー」だけでなく、細かなテクニックや状況判断能力。世界トップレベルのアタッカーの凄さを知る古賀が賛辞を送る存在が石川だ。
「日本人では間違いなくずば抜けています。石川は世界でもこれからもっと伸びる。コートの中だけじゃなく、食事やトレーニング、バレーボールに取り組むプロフェッショナルな姿勢は日本の選手もみんな見習うべきだし、石川は去年シエナで試合に出続けたことで自信もつけた。今まではチームよりも自分の調子に目が向いていたところもありましたけど、でもチームの中心となる選手は、それぐらいとがったところがあっていい。20点以降の勝負所で、迷いなく『俺にトスを持って来い』と思える選手がいる、ということが、チームにとってはものすごく大事。石川は間違いなく、勝つチャンスを取りに行ける選手です」

「日本人では間違いなくずば抜けている」と古賀は賛辞を送る

海外でプレーするメンバーはやっぱり違うなと思わせたい

 プロとして戦う自覚と責任。昨シーズンプレーしたシエナでの経験は、石川にとってまた新たな転機となった。
「この1点が大事だ、と思う場面では、これまで以上に『絶対取ってやる』と思うようになりました。シエナで1年を通して出続けられたことや、1人の選手としてある程度結果を出せたことも、自信につながっていると思います」
 石川のみならず、シエナは各国代表の選手が揃うチームではあったが、なかなか勝てず、成績は下位に沈んだ。もちろんその結果に満足はしていないが、シーズン当初はそれでも「チームは負けたけれど、自分のパフォーマンスはよかった」と思うこともあった。
 だが、イタリアでのクラブシーズンを終え、再び代表でのシーズンを過ごす中、新たな覚悟が石川に芽生えた。
「プロである以上、大前提は、自分のプレーは常にベストパフォーマンスを発揮すること。なおかつ、エースである以上、いかにチームを勝たせることができるか。僕自身、海外でプレーしたことはプラスでしかなくて、だからこそいろいろなことを感じるようになったし、成長できていると思います。見ている方々にも、僕や古賀さん、柳田(将洋)さん、海外でプレーするメンバーはやっぱり違うな、と思わせたいし、『石川があれだけ変わったなら、俺も行きたい』と思う選手がどんどん出てくることが、海外へ行っている意味でもある。プロであり、海外でプレーしている自分たちは常に結果、コンディション、プレーで見せるしかないと思います。東京五輪で男子バレーが勝つのは難しいと思われているかもしれませんが、だからこそそこで結果を出したいし、東京五輪で表彰台に上がるためには、その前年にあるワールドカップでメダルを獲れるようでなければ厳しい。ワールドカップの先に東京五輪があると思うので、だからこそ、ワールドカップはメダルを獲りに行くし、結果にこだわりたいです」

「東京五輪で勝つのは難しいと思われているからこそ結果を出したい」

 今日から開幕するワールドカップは日本にとっては五輪前最後の大きな国際大会となるほか、世界との差を知るための試金石となる大会でもある。ここで得られる課題や収穫は、東京五輪へ続く糧となるに違いない。
 石川、古賀のみならず、主将の柳田も今季はドイツで自身三度目の海外でのシーズンを迎え、ワールドカップ後には福澤達哉もフランスへ渡る。日本はもちろん、さまざまな場所で得られる経験が融合し、どんな変化や進化をもたらすか。
 まずは、間もなく始まるワールドカップから東京五輪へ向けて――。
"世界"はもはや、見上げる場所ではない。

(文:田中夕子 撮影:平野敬久)

▼動画:石川選手と古賀選手からメッセージ


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