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東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2019.12.04

東京五輪の新種目3人制バスケ「3x3」、5人制とは異なる魅力と五輪に向けた課題とは

日本の3x3を背負ってきた落合知也(写真:FIBA.com)

新時代のスポーツ&エンターテインメントを目指す3x3

「3x3」と表記して「スリー・エックス・スリー」と読む。3x3とはFIBA(国際バスケットボール連盟)が、バスケットボールの普及と発展のために設立した3人制バスケットボールのこと。2020年東京五輪から新種目として採用された注目のスポーツだ。

3x3は1990年代に流行したストリートバスケットの3on3(スリー・オン・スリー)が発祥であり、2007年に世界統一のルールが定められたのを機に競技として本格的なスタートを切った。2012年には個人ランキングポイント制度『3x3 Planet』を導入し「スリー・バイ・スリー」の呼称が定着。2014年には次世代スポーツリーグとエンターテインメントの融合を目指した国内男子トップリーグ『3x3.EXE PREMIER』(スリー・エックス・スリー・ドット・エグゼプレミア)が設立された。現在は世界一のクラブを目指して『プロサーキット』と呼ばれる海外転戦を行うチームが増え、多くの選手がポイントを競い合っている。そして、今年度からは「スリー・エックス・スリー」との呼称新たに東京五輪を迎えることになった。

非日常の空間で試合を楽しめるのが3x3の魅力(写真:FIBA.com)

5人制とは似て非なる競技性と独自ルール

3x3は5人制と同じスキルが必要でありながらも、ルールはまったく異なる。コートの大きさは通常のバスケットコートの半分のハーフコート。そのため広さや場所を問わず、専用のコートを敷くことでどこでも会場になることが特長だ。体育館や屋外の特設ステージで試合をすることもあれば、ある時はデパートの一角、ある時は神社や海辺が会場になることもある。主催者のアイディアによって非日常の空間を楽しみながら、買い物客や観光客が足を止めて気軽に観戦できることも魅力だ。

競技ルールを5人制と比較してみよう。試合時間は10分(5人制は10分×4クォーター制)。得点は5人制でいう2点が1点、3ポイントシュートは2点として扱われ、フリースローが1点なのは5人制と同様。ボールを保持してから攻める時間のショットクロックは12秒(5人制は24秒)、得点したあとの攻守の切り替えはドリブルかパスによって、一度2ポイントラインの外まで運ばなければならない(5人制はエンドラインからスローイン)。勝敗はゲーム終了時に得点が多いほうが勝利するのは5人制と同様だが、3x3はノックアウト制を導入しており、21点先取したチームがノックアウト勝利となる。

3x3はハーフコートの10分ゲームであることから、5人制より楽かと思いきや、その運動量とスピード感には圧倒されてしまうほどのハードさだ。

3人でプレーすることから、5人制よりもおのずと攻防のスペースが広がるため、一人一人がボールをコントロールし、シュートをクリエイトする力が必要となる。またショットクロックが12秒という短い時間で目まぐるしく攻防が切り替わるため、オフェンスもディフェンスも足が止まることはない。

そして3x3プレーヤーが必ず言うのが「IQの高さ」と「強いフィジカル」が求められることだ。3x3のベンチにはコーチは不在。劣勢になっても選手たちだけで戦わなければならず、交代のタイミングや作戦タイムを取るのも選手同士で行う。そのため、阿吽の呼吸や一人一人の判断力が必要とされるのだ。また、選手たちからは「5人制以上にコンタクトプレーが多い」との声もあるほどで、コンタクトが激しい攻防も見どころである。

戦術面では得点が倍になる2ポイントをいかに絡めるかが、サイズのない日本にとってはカギとなるだろう。速いテンポの中で行う駆け引きの応酬は5人制とは違った見どころを生み出している。まさに、新時代のスポーツとして東京五輪を迎えるのが3x3という競技なのだ。

コンタクトが激しい3x3はフィジカルの強さと判断力が求められる(写真:FIBA.com)

男子は開催国枠で出場が決定。女子は予選を経て切符を勝ち取る

3x3の五輪出場枠は男女各8ヶ国という狭き門だ。2019年11月1日の時点で国別ランキング上位4チームに出場権が与えられ、残り4チームは3月以降、2回の予選で争うことが発表された。

実のところ、2019年3月末には、FIBA(国際バスケットボール連盟)から東京五輪の5人制と3人制バスケットボールについては開催国枠での出場が認められたのだが、3人制についてはIOC(国際オリンピック委員会)の承認付きという条件つきだった。そして、改めてFIBAとIOCが協議した結果、2019年11月1日時点でランキングが高い男子に開催国枠での出場が付与されたのだ(男子9位、女子11位)。そのため、3x3の女子は出場をかけた予選に回ることになった。

3x3のランキングは各国トップ100選手のポイントが合算される仕組みであり、多くの選手が国内外でFIBA公認試合に出場していることが有利に働く。男子はトップリーグの開催や、プロサーキット組の奮闘によりポイントを積み重ねてきたが、女子はアジアカップで3位、U23ワールドカップで優勝するなど、国際大会では実績を残しているにもかかわらず、国内での試合開催の少なさが響いてポイントを伸ばせなかったことが残念だ。

ただ、女子の候補選手たちからは「オリンピックに出場が決まった4チームより、予選に出るチームのほうが強い。予選を勝ち抜くことで力がつくので、オリンピックへのいい準備として挑みたい」という力強い抱負が語られている。

五輪に向けて核となる女子候補選手(西岡里紗が欠席)。前列左から三好南穂、山本麻衣、伊集南、篠崎澪、後列左より馬瓜ステファニー、永田萌絵、内野智香英、田中真美子(写真:小永吉陽子)

3x3五輪代表になる条件と注目選手は?

では、五輪に向けた代表4名の選考はどうなっているのだろうか。男子は2019年11月時点で国内ランキング1位の落合知也と5位の小松昌弘(ともにTOKYO DIME)がスペシャリストとして3x3界を牽引。今年から3x3を始めながらも、所属クラブ(UTSUNOMIYA BREX.EXE)での奮闘により、急成長している小林大祐のようなBリーガー(茨城ロボッツ)もいる。

女子はWリーグ勢が中心だ。3x3のプレー歴は浅いながらも、シュート力と機動力があることから順応が早く、試合に出れば出るほど成長している。U23ワールドカップで優勝を遂げた山本麻衣、馬瓜ステファニー(ともにトヨタ自動車)、西岡里紗(三菱電機)がランキング上位を占め、篠崎澪(富士通)、伊集南(デンソー)、三好南穂(トヨタ自動車)ら得点力があるWリーグのガード陣が揃う。

五輪選手に選出されるには資格が必要だ。2020年6月22日の時点で国内ランキングトップ10から2人を選出。残る2人は国内ランキング50位以内か、男子は54,000ポイント、女子は36,000ポイントを保有していなければならない。

現在、2019年2月を皮切りに数回の強化合宿が行われているが、2019年11月には五輪に向けて核となる男子10名、女子9名の候補選手が日本バスケットボール協会から発表されている。その顔ぶれを見ると、女子は国際大会で結果を残したWリーグ勢を中心に選出されているが、男子については不明瞭な点が多い。

男子は3x3を専門職とするトップランカーが存在する中で、3x3の経験が乏しいBリーグの選手たちが選出されているのだ。代表選手の選考基準について、3x3を統括するトーステン・ロイブルディレクターコーチはこのように答える。

「男子については2019年2月の強化合宿で、多くの選手を見てみようということで3x3の専門選手を多く招集しました。その中でふるいにかけたのが現状です。Bリーガーと3x3専門選手との一番大きな差はディフェンスにあります。オフェンス力のある3x3の選手はいますが、ディフェンスになると相当弱い。Bリーガーとの1対1では簡単に抜かれてレイアップを打たれることがありました。3x3専門の中でBリーグの選手と戦える力があったのが落合と小松で、彼らの経験やIQの高さ、リーダーシップはチームにとって必要なものです」

実際に2019年2月の合宿では、3x3専門選手10人、Bリーグ12人、大学生8人の計30名が選出されている。そして、アジアカップやワールドカップで出た課題を克服するために、「高さとフィジカルの強さ、ドライブできる力がある」(ロイブルコーチ)Bリーグ選手が3名、新たに招集されたのである。その中には帰化選手として5人制の日本代表として国際大会に出たこともあるアイラ・ブラウンもいる。

しかし、新しく招集されたBリーグ勢は五輪参加資格であるポイントがないに等しい。それでもロイブルコーチは「現時点でのランキングは気にしません。国内トップ10外からは2人選べるので、五輪前の国際大会に出ることでポイントを満たせるようにしたい」と目論んでいる。また、3x3のスペシャリストである落合や小松も「Bリーガーは個人能力があるので、彼らと合宿をすることでお互いにいいものを吸収しあえる」と話す。

五輪に向けて核となる男子候補選手。左から藤高宗一郎、杉浦佑成、保岡龍斗、永吉佑也、落合知也、西野曜、アイラ・ブラウン、小林大祐、小松昌弘、橋本拓哉(写真:小永吉陽子)

最大の課題は3x3専門選手とBリーガーの融合

ただ、落合や小松の話には続きがある。彼ら2人はプロサーキットで世界を転戦していることにより、世界上位の実力を知り、日本がまだその位置には及ばないことに対して危機感を持っている。3人制と5人制の競技の特性は異なる。Bリーグ勢を加えるならば、もっと早くに代表に招集して試合経験を積ませることが必要であり、現実問題、五輪直前の国際大会に出るだけでは強化は足りないのだ。

「3人制と5人制はまるで違う競技。3x3は個の力だけでは勝てないので、決まった選手たちでチームを組み、どれだけオリンピックに出てくるような強いチームと対戦できるか。そうした経験が一番必要なので、Bリーグ勢がどれだけ3x3に時間を割けるかが課題」(落合)

「Bリーグ勢は初心者といっても個人能力があるので、国内で合宿をする分にはいいところしか出てきません。問題は世界上位のような経験値の高いチームとやらないと出てこない課題があること。その課題を克服しないとオリンピックで結果は出ません」(小松)

今後は2020年1月から毎月強化合宿をする予定で、春先からは本格的な3x3のシーズンがスタートする。女子は国際大会で結果を残しているが出場権は確保しておらず、男子はプロサーキット経験者とBリーガーたちが融合することが課題で、どちらも強化に時間を割ける時間は少ない。

個の力を見極めてBリーグとWリーグ勢が代表候補に選出されたのであれば、女子は2020年4月、男子は2020年5月まで続くシーズン中であっても、プロリーグと各チームの協力態勢は必要不可欠。日本の3x3は、世界を転戦してきた男子選手や、地道に国内大会を運営してきた女子選手など、一つでもランキングを上げ、開催国枠獲得のために貢献してきた選手たちが支えてきたことを忘れてはならない。この魅力的な競技を東京で花咲かせるためには、バスケットボール界が一丸となることがカギを握る。

(文・小永吉陽子)


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