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東京2020オリンピック・パラリンピック開催まで

2020.03.06

女子マラソン復活の鍵は松田瑞生の「腹筋」にアリ?――アテネ金メダル野口みずきに聞く

大阪国際女子マラソンを1位でゴールする松田瑞生(写真:森田直樹 アフロスポーツ)

大阪国際女子マラソンで優勝し、東京オリンピックでの活躍が期待される松田瑞生。その「走り込みの量」と「積極性」は日本女子マラソンの復活の鍵となる――。アテネ・オリンピック金メダリストの野口みずきに、松田の走りやマラソン哲学を聞いた。

メダリストが課した「月1300キロ」の走り込み

練習は、裏切らない――。
野口みずきは、17歳年下の"みずき"が見せた激走に、自らが貫いてきた「信念」が間違っていないことを、改めて確認したという。

松田は1月26日に行われた大阪国際女子マラソンで、日本歴代6位の2時間21分47秒で優勝。30キロを過ぎて抜け出し、そのまま押し切り、2時間22分22秒の東京オリンピック派遣標準記録を突破した。レース後の会見で明かした「1カ月1300キロ」という、徹底した走り込みの「量」を、野口は「やらないといけないことをやっている」と評価する。

野口みずき(写真:津高良和)

月間1300キロは、平均すれば1日40キロ以上走ったことになる。つまり松田は「マラソン」を毎日完走するほどの距離を走ったことになる。2000年シドニー・オリンピックの女子マラソン金メダルの高橋尚子は練習で月1400キロ、野口も月1370キロを走り込んだ経験があるという。

「彼女が勝てたのは、しっかりと走ってきたからなんですよ。走った距離は、裏切らない、ということを彼女は証明してくれました」

ところが、最近の女性ランナーたちは、怪我やオーバーワークを避けるため、最高でも1日30キロ程度にとどめるといわれている。一方で、機器を使ったウエイトトレーニングや体幹トレーニングを積み重ね、バランスのいい体づくりを行うのが、トレンドだ。

こうした風潮の中で「距離を積む」ことを強調すると、根性論に結びつき"古くさい"と受け取られがちになる。しかし、松田は「腹筋女王」と呼ばれるまでにウエイトトレーニングで強靱な体をつくった上で、徹底的に走り込んできたのだ。

鍛え上げられた松田瑞生の腹筋(写真:築田純/アフロスポーツ)

「『距離を走らないと、自信が持てない』。これは、高橋さんとも常々言っていたことです。それがレースに出ていますよね。大阪でも、ジョッグをしているとき、肩が上がっていて、かたくなっているかと思ったんです。でも、スタートしたら、走りがやわらかかった。それだけ、いいトレーニングができているんだなと」と、野口は話す。

ペースメーカーを追い抜く積極性

大阪での松田は、序盤からペースメーカーよりも速く行こうとするほど、積極性が目立った。野口と高橋が現役の頃には、本番のレースでペースメーカーはいなかった。レースの主導権を握り、相手の息づかいや走りを見ながら、"ここぞ"という場面で、自分から勝負をかける。アテネ・オリンピックでの野口も、レース後に嘔吐し、脱水症状で点滴を打たなければならないほど消耗した猛暑の中で、25キロ付近から集団の前に出て、後半は独走で突き抜けている。

大阪国際女子マラソン、レース中の松田瑞生(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

「2000年代の初頭は、自分からガンガンに走ったんです。走り抜いて、ペースメーカーがいなくても、結果を出す。だから、ガンガン走ってほしいんです」。アグレッシブなスタイルを、松田だけでなく、日本人の後輩ランナーたちにも見せてほしいというのが、金メダリスト・野口みずきの願いでもある。

「東京」を目指すために「世界」を見据える

東京オリンピック女子マラソンのラスト1枠を争う、最後の戦いとなる名古屋ウィメンズマラソン。東京への切符をつかむためには、松田が大阪で出した2時間21分47秒を上回らなければならない。集団の中で埋もれていては、東京へ、そして世界へ羽ばたいていくことはできないだろう。

野口みずき(写真:津高良和)

「自力で勝ち抜くような感じでいかないといけないでしょうね。私は無理だなとか思っていてはダメです。日本人1番とか、そういうのは関係なく、やっぱり『1番』。それを考えて、オリンピック、そして世界を見据える走りをしてほしいですよね」

16年前の自分のような、前向きで力強い走りを見せてくれる"次世代のヒロイン"が誕生することを、野口みずきは待ち望んでいる。

編集=ヤフー / 取材・文=喜瀬 雅則


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